ブックタイトルTAGEN FOREFRONT 03
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TAGEN FOREFRONT 03
TERM INFORMATION位相コントラスト光や量子ビームで物体を透視撮影するとき、透過強度の大小によって与えられる吸収コントラストに対し、光や量子ビームの波動性に起因して生じるコントラストを総称して位相コントラストと呼ぶ。シンクロトロン放射光円形の加速器のなかで電子を光の速さに近いスピードで周回させると、電子から指向性のよい極めて明るい光(X線)が放射される。これをシンクロトロン放射光と呼ぶ。これを高度な計測に利用するための専用施設として、SPring-8などが知られている。タルボ効果格子などの周期的に並んだ構造体を波の揃った光が通り抜けると、格子から特定の位置に格子と同じ像が自然に形成される効果。1836年のHenry Fox Talbotの発見による。self-imaging効果とも呼ぶ。屈折画像被写体によってX線が屈折で曲げられた角度の分布を示す画像。屈折は位相シフトの微分に対応しているので、微分位相像と呼ぶ場合もある。散乱画像X線タルボ干渉計およびX線タルボ・ロー干渉計において、生成されるコントラストの鮮明度が被写体によって低下することがある。その様子を画像化したものを散乱画像と呼ぶ。この名称は、被写体内に含まれる微小な構造体による極小角X線散乱が原因となって鮮明度低下が起こっているとの理解に基づく。タルボ干渉計透過格子を2枚並べ、被写体による光(X線)の屈折をモアレ画像として可視化する手法。格子の配置は、一方の格子によるタルボ効果を考慮して決めることから、タルボ干渉計と呼ばれる。 どうしたらいいか? 壁にぶち当たった百生教授にブレークスルーとなるアイデアが生まれたのは、学生たちと英語の本を読んでいる時でした。「タルボ効果。この言葉を聞いてちょっと待てよ、これをX線でやったら面白いのではとピンときました。すぐに、とりあえず実験しよう、となりました」。 X線を照射すると「格子のような周期的構造」を持つ物体に光を透過させた時、構造の周期と光の波長で決まる特定の距離だけ離れた位置で、物体の構造を反映した像が形成されるというタルボ効果。19世紀に発見された現象です。 「このタルボ効果による像が被写体があると1万分の1度ズレます。数ミクロンレベルのズレで、直接観察することは難しいです。この微細なズレをどう可視化するか。そこで考え出したのが、印刷など発生するモアレ縞です。像のできる位置に同一の第2の格子を置くと、第1の格子直前に置かれた被写体を透過することで像の位相が乱されている場合、その乱れは、第2の格子との間に生じるモアレとして検出されます」。 このモアレ縞は普通のカメラでも映ります。モアレの画像を複数枚撮影し、コンピュータで演算して画像化すると見事に物体の像が浮かび上がってきました。X線格子の開発が鍵 「この干渉計の仕組みを開発する上で大きな課題になったのは格子を作ることでした。数ミクロン幅のスリットが並んだ構造が必要で、最初はアルミで作りましたが、最終的には金の格子でないとだめだという結論になりました。X線をよく遮蔽できる材料でなければならないからです。それでも、金を厚さ30ミクロンほどにする必要がありました。最初は5㎜角の格子の試作から始め、兵庫県立大学の協力を得て最終的には10cm角の格子が実現しました」。 さらに、この干渉計に、露光時間を短縮するための改良を加えました。タルボ・ロー干渉計と言い、通常のX線源からのX線のうち、タルボ効果を起こす波面を持つX線のみを選別する機能を持っています。 「光源の前にもう一つ格子を置いて、微小光源をN個作れば、強度がN倍になり、撮像時間を原理的に1/Nにすることができます。これにより通常フォーカスの実験室X線源による位相イメージングが可能となりました」。 タルボ干渉計やタルボ・ロー干渉計では、撮影画像をコンピュータで処理することにより、従来の画像に相当する吸収画像の他に、屈折画像、および、散乱画像が一挙に得られます。この装置でぶどうを撮影すると、それぞれの画像から相補的な情報が得られます。特に散乱画像では、蔕と種を結ぶ繊維構造までもが可視化されています。X線タルボ干渉計のコントラスト生成のしくみ。1枚目のX線格子の後ろに現れる回折像と2枚目のX線格子の重ね合わせで作られるモアレ模様から、従来のX線吸収像だけではなく、X線屈折画像、X線散乱画像も同時に取得できます。コントラスト生成のしくみこの装置では、吸収画像、屈折画像、および、散乱画像という三つの画像が得られます。ぶどうを撮影してみると、それぞれの画像から相補的な情報が得られます。特に散乱画像では、蔕と種を結ぶ繊維構造までもが可視化されています。三つのコントラスト画像X線Talbot干渉計で生成されるモアレ画像を、格子を並進させて複数枚計測し、簡単なコンピュータ演算により三つのコントラスト画像が生成されます。吸収像(従来相当画像)微分位相像(屈折画像)Visibility像(散乱体分布画像)TAGEN FOREFRONT 20