ブックタイトルTAGEN FOREFRONT 03
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TAGEN FOREFRONT 03
柔らかいものを映し出す新しいX線装置の開発へMY FAVORITE問題を頭の片隅に置いておくと、アイデアが突然浮かぶものです 研究者に必要なのは遊び心。研究をしているときの脳の使い方は、いわゆる勉強というより図画工作や音楽をやっているときのそれに近いのではないかと思いっています。 常にテーマや問題意識を頭の片隅に持っておいて、何かおもしろいコトがないか、ブレークスルーするようなアイデアはないかと探しています。誰かとディスカッションしている時も、歩いている最中でも、突然、横っちょにためておいたテーマとつながって、ヒントやアイデアが突然浮かでくるんですね。 家にいる時も、突然変なことを言ったり、話が飛びすぎることがあるようです。家族にも変人扱いされていますね。1万分の1度わずかに屈折するX線の特徴を活かす 身体の中を映し出すX線による透視画像。骨などが白く映し出されますが、これは骨がX線の透過を遮るからで、白いところ黒いところという「吸収コントラスト」によって像ができるわけです。1895年のレントゲン博士による発見以降、この手法によりX線は物質内を透視できる光線として医療や非破壊検査などに広く利用され続けています。 「しかし軟骨や内臓などの軟組織の場合、鮮明な吸収コントラストは容易に得ることができません。柔らかいもの映し出すことができないか?ということで研究を始めました」と話す百生敦教授。 ヒントとなったのが、X線も波であるということ。波を通る場所にある物があると、X線の位相に変化が生じ、透過したX線はわずかながら屈折されます。この1万分の1度というわずかなズレを検出してコントラストを得ることができるわけです。これは位相の変化から得られるコントラストなので、「位相コントラスト」と呼びます。「位相コントラストを用いて生体軟組織や高分子材料を撮影すると、従来の吸収を用いた撮影法に比べて理論的には約千倍感度が良くなります。従来法で難しかった軟骨やがん組織の撮影もできるようになると期待できます」。 従来軟組織の可視化に使われてきた超音波診断装置やMRIの空間分解能は1mm程度。一方、X線画像の空間分解能は0.2~0.05mmなので、より細部の撮影が可能です。より信頼性が高くなり、早期の画像診断においても威力を発揮すると期待されます。 「しかし、この微細なコントラストをしっかり像として描くための光源であったりレンズとか鏡とかを作るのが大変です。位相コントラストを形成するためには、高度なX線源から発生する位相の揃ったX線を用いる必要があり、シンクロトロン放射光源施設で実験が行わました。着想から足かけ9年でウサギのがん化した肝臓のCT画像を映し出すことができました」。1996年、その成果は医学会で権威ある雑誌で掲載され、世界を驚かせました。2度目のブレークスルー位相コントラストを活用 しかし、実際に実用化するというフェーズに入るには、クリアしなければならな難問がありました。 「シンクロトロン放射光には巨大な加速器が必要です。実用化するには、誰でも、どこでも、いつでも享受できるものでないとだめです。シンクロトロン放射光源は巨大な施設で場所や時間の制約が厳しく、そのままの形での実用化は進んでいません」。X線タルボ・ロー干渉計の構成。三枚の格子(G0,G1,G2)を用いて一般的なX線であっても位相コントラストを取得することができる。X線タルボ・ロー干渉計の構成03FOREFRONT REVIEW「1万分の1度ほどのX線の屈折を検出するX線タルボ・ロー干渉計による撮影装置を開発。TAGEN FOREFRONT 19