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概要

TAGEN FOREFRONT 03

Tapered Cell法を用いて、パターン基板上に形成したポリスチレン微粒子からなるカゴメ構造の構築に初めて成功し、光が伝搬せず、閉じ込め効果が現れたことを確認した事例。TERM INFORMATION材料特性を、シェル層にある金属ナノ粒子の性質を使って向上させることを目指した研究ということになります。 フォトクロミック物質、PFCP(ジアリールエテン誘導体)による研究例もあります。有機ナノ結晶の形状は普通サイコロ状で、球形ではありません。そこで、PFCPナノ結晶の周りをポリマーで囲い込んでカプセルをかぶせたように丸くして、並びやすい状態にして、集積体を作ります。ここで光をあてると化学反応を起してPFCPナノ結晶の屈折率が変わります。その後、別の光を集積体に入射させると、その反射光の角度が変わるわけです。「これらは研究途上の作製や機能のレベルで、まだまだ精度を上げていかないといけないのですが、何を示唆しているかというと、光スイッチング機能です。つまり、光のオンオフを光で行うという動作原理の実証を目指しているわけです」。次世代光デバイスの基盤になるフォトニクス材料を目指して もうひとつ、ポリマーの微粒子を並べてカゴメ構造という特殊な配列をつくる研究例があります。普通は、光があたると微粒子間を光が通り抜けて伝播していきますが、カゴメ構造にすると、伝播しないで光を閉じ込めてしまいます。「もしこの閉じ込める構造を任意につくってやることができれば、必要な方向に必要な強度で光伝搬させることができることになります。つ及川研究室のスタッフ。後列中央/笠井均准教授、左/小野寺恒信助教、右/横山美由紀秘書。笠井均准教授は、1991年大学院博士前期課程から多元研に配属され、超臨界再沈法、有機色素ナノ結晶、非線形光学特性解析の研究を続けてきました。近年はナノ顔料、ナノ純薬などをキーワードとして取り組んでいます。ハイブリッドナノ結晶異種物質・材料間の複合をハイブリッドと言う。また、ハイブリッドのレベルもナノメータからマイクロメータまでと実際は様々である。ここでは、共役高分子の有機ナノ結晶をコア、貴金属ナノ粒子をシェル層とするハイブリッド構造を有するナノ結晶をハイブリッドナノ結晶と言う。PDAポリジアセチレン(polydiacetylene)の略称で、PDAは典型的な一次元共役高分子である。実際には、モノマーであるジアセチレンの単結晶に紫外線照射や加熱操作によるトポケミカルな固相重合反応を誘起し、PDA単結晶として合成される。典型的な有機非線形光学材料である。PFCPフォトクロミック物質であるジアリールエテン誘導体の一つである1,2-bis(2,4-dimethyl-5-phenyl-3-thienyl)-perfluorocyclopenteneの略称。紫外光および可視光の交互照射で、PFCPはその開環体(無色)と閉環体(青色)との間での光異性化反応を繰り返し示す。フォトクロミック物質の中で、ジアリールエテン誘導体は化学的安定性、耐熱性、耐光性に優れている。非線形光学現象レーザー光のような高強度の光を物質に照射したときに発現する非線形な光学応答を言う。光電場の高次の積に比例した非線形分極が物質内に生じるのが原因である。その結果、高調波発生や光強度に依存した屈折率変化、多光子吸収など様々な非線形光学現象が知られている。有機系材料としてはPDA(前述)やDASTなどが、無機系材料としてはKDP(KH2PO4)やLiNbO3などが挙げられる。カゴメ構造竹篭(タケカゴ)の籠目(カゴメ)構造のように、正6角形と正3角形が規則的に配列した2次元(結晶)構造のことを言う。Kagomeとそのまま英訳される。磁性体のカゴメ構造では、磁性相互作用の競合(フラストレーション)が生じ、反強磁性を示す。ここでは、高分子微粒子で形成されるカゴメ構造が光伝搬閉じ込め効果を示すフォトニック結晶の一種となる。フォトニクス材料エレクトロニクス(電子)材料に対応する用語。光の性質(周波数、振幅、位相など)を制御する材料で、光通信、光集積回路などの光デバイス用素子材料となる。一方、光を情報媒体とする光メモリーなどのデバイス用素子材料をオプティクス材料と言うが、フォトニクス材料との境界は曖昧である。まり今は銅線などの細い線でつないでいる電気回路に替わる、次世代の光回路をつくるための原理ということです」。 このように及川研究室では、有機ナノ結晶分野の基礎的な研究から出発し、ナノマテリアルサイエンスを志向して、光の波長を変えたり、光の進む道を変えたり、光をあてると物質自身の屈折率が変わるような次世代フォトニクス材料を見据えたさまざまな応用展開を追求しています。 現在のコンピュータは基本的にエレクトロニクスデバイスです。高効率化への努力は続けられているものの、半導体集積回路における微細加工の問題などがあり、以前より、いずれ技術的な限界が来ると言われています。「私たちの立場は基本的にこれからは光の時代ととらえているということです。将来、いわゆる光が主体のコンピュータやネットワームシステムというものができれば、それは、これからますます発展する高度情報化社会における基盤技術や産業にもなり、人々が安心・安全に暮らせるユビキタス社会にも?がると考えています。光エネルギーの高効率利用という面でも期待されます。そういう次世代フォトニクスデバイスにおける基礎・基盤的な物造りに貢献できれば、というのが私たちのスタンスです」。TAGEN FOREFRONT 16