ブックタイトルTAGEN FOREFRONT 03
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TAGEN FOREFRONT 03
有機・無機ハイブリッドナノ結晶で次世代光材料への展開を目指すOFF TIME歴史観や学説の変化にも関心をもって、歴史書を読み解くひととき 休日の時間がある時には、歴史書を読んだりします。以前は古本屋に寄って、いろんな本を見つけたりしていました。歴史書は、その年代によって学説や史実に対する解釈の仕方が時にかなり変わってきます。それを読み取れたりすると、「こんなに変化してきたんだ。今度出る本ではまた違う解釈が出るんだろうか」などと、あれこれ考える癖があります。 特に、記録や物証がほとんど残っていない古代史を研究する歴史家はたいへんだろうな、その中で学説を組み上げるというパワーはすごい、と感心します。今のわれわれは実験を積み重ねると何かしら結果が出てきますが、洞察力に長けた歴史家は、近代科学黎明期の研究者に今も似ているじゃないか、などと。混じらない有機物質と金属をナノサイズで複合化 バルク結晶やマイクロサイズの粉体のような材料と比較して、有機ナノ結晶には、結晶サイズに依存して光吸収や発光特性が変わったり、化学反応性が高くなったり、バルク結晶とは異なる固有の物性や機能が発現することがわかってきました。今後、光・電子デバイスに関連する素子材料の分野では、良質のバルク結晶とともに、有機ナノ結晶を含むナノ材料が果たす役割は極めて大きいと言えます。 さらに有機ナノ結晶は、無機のナノ結晶とナノレベルで複合させることにより、さらに高機能化できることもわかってきました。 「たとえば0℃で凍るとか、100℃で沸騰するという水の性質は、1分子だけではそういう性質を示しません。ある集団の数にまとまって初めて水としての性質が出てくる。大きい集団のサイズからだんだん小さくしていくと、どこかでその性質を失います。そのとき、水は水としてのアイデンティティを失うわけです。物質がお互いにアイデンティティがなくなると区別がなくなって、よく混ざり、まったく新しい物質や材料ができるのではないか。金属と有機物質は本来は混ざらないのですが、ナノサイズにしてアイデンティティがなくなるような状況にしてやれば、お互いに混ざり合うのではないか、というのが有機・無機ハイブリッドナノ結晶の基本的な発想です」。特異な光・電子物性を現す有機・無機ハイブリッドナノ結晶 有機・高分子物質と無機系物質(金属・半導体など)とのハイブリッドナノ材料では、サイズ・形状、内部構造や界面構造、構成要素の組み合わせに強く依存した特異な光・電子物性や反応性、新規機能が期待されます。 及川研究室では、共役高分子PDA(ポリジアセチレン)のナノ結晶を作製していますが、PDAナノ結晶をベースに、さらにコア・シェル型ハイブリッドナノ結晶も作製しました。「ただ混ぜただけではできません。コアがPDAナノ結晶、まわりのシェル層が金属ナノ粒子というハイブリッドです。これによってPDAの性質をさらに向上させることができます」。このPDAには、たとえばある波長の強い光を入れると、非線形光学現象を起こして、3分の1の波長の光を出すという特徴があります。つまり光の波長を変えるPDAナノ結晶コアの02FOREFRONT REVIEW有機ナノ結晶のさらなる高機能化を目指すハイブリッドナノ結晶の作製。写真は、共役高分子PDAナノ結晶をコアとし、無機物の銀をシェルとしたPDA?銀ハイブリッドナノ結晶の作製に成功した事例。これには光触媒還元法が適用されました。TAGEN FOREFRONT 15