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概要

TAGEN FOREFRONT 03

TERM INFORMATION得るという原理のヒントになるのではないかということです。貴金属触媒と同じ働きをする触媒を作り出す錬金術 この研究は「触媒機能の起源を明らかにして、貴金属触媒と同じ働きをする触媒を、まったくの他の元素から開発しようというものです。いわば、触媒機能的な錬金術といえる研究です」。とくに触媒として有名な白金など高価で利用価値の高い物質を、より安価な元素の組み合わせで置き換えられないか、というところがポイントです。 触媒の銅CuとパラジウムPdの結晶構造は同一であるのに、その反応特性はまったく異なります。しかし、Cuとパラジウム・亜鉛PdZn合金とは、同等の触媒特性を示すことが報告されています。「これはPdとZnが合金化することで、その電子状態が大きく変わることに起因すると考えられます。そこで、CuとPdZnの電子状態を調べたところ、その価電子帯構造が極めて似通っていることを、私たちは突き止めました(2004年)。実際に合金PdZnは、銅に似た赤味がかった色をしています」。 この結果は重要な意味合いを持っています。それは、「触媒機能は価電子帯構造による」ということであり、「価電子帯構造が同じであれば、その触媒機能は同じ」という結果が得られたということです。この概念を拡張すると、合金化によって価電子帯構造を制御することにより、パラジウム、白金やロジウムなどの貴金属と同様な価電子帯構造をもつ金属間化合物を見出すことができれば、新たな触媒材料が創出できる可能性が出てきます。 「このことは、合金化により単に元の金属元素の触媒機能を改良するのではなく、まったく新しい触媒を作り出すことに相当します」。こうしたアプローチは、触媒機能、電子構造および表面状態との相関を結び付け、触媒設計の新たな基礎を構築することともなり、金属学と触媒化学の融合という新たな研究領域の開拓が期待されています。蔡安邦教授は、2009年フランス・ナンシー大学連合のロレーヌ工科大学より、世界的に権威のある名誉博士の称号を授与されました。受賞理由は、「準結晶合成と触媒開発に関する研究」であり、同時に長年にわたりロレーヌ工科大学研究グループとの共同研究が高く評価されたことによります。周期表周期律に基づいて元素を配列した表である。基本的に原子量の順に並べられている。縦の配列が族、横の配列が周期である。Tsai型準結晶これまでに発見されたすべての合金系準結晶は3つのタイプ(Mackay型、Bergman型、Tsai型)の何れかに分類される。Tsai型準結晶とは2000年に蔡らによって発見された、唯一の安定な2元合金準結晶カドミウム(Cd)-イッテルビウム(Yb)、カドミウム(Cd)-カルシウム(Ca)とそれらの同形準結晶を指す。触媒触媒とは、水素と酸素から水が生成する反応H2+1/2 O2→H2Oを例 として考える。 水素と酸素の混合ガスをガラス容器に入れ200℃に加熱しても何の反応も起こらない。しかし、混合ガスに少量の銅(Cu)を入れて加熱すると、水素と酸素は速やかに反応し水を生成する。反応後、加えた銅には何の変化も起こっていない。この場合の銅が触媒にあたる(触媒学会より)貴金属金属を分類するときの用語の1つである。通常は、金Au、銀Ag、および白金族元素のルテニウムRu、ロジウムRh、パラジウムPd、オスミウムOs、イリジウムIr、白金Ptあるいはそれらの合金を指している。空気中安定で酸化されにくい特性をもっている。地球埋蔵量が少なく高価である。白金貴金属の1つである。融点が高く酸化されにくいことで、工業ないし装飾品に良く用いられている。最近では、燃料電池や排ガス触媒にその効果が認められ、需要が高くなっているが、地球埋蔵量が極めて少ない。価電子帯構造結晶のバンド構造において、価電子によって満たされたエネルギー帯である。価電子のエネルギーは高い状態にあり、合金化の際に結合にも寄与する。通常、価電子帯構造は固体物質の物理、化学性質を決定すると言われている。蔡研究室には、亀岡聡准教授、藤田伸尚助教、西本一恵助教をはじめ、研究員、大学院生まで多くのスタッフが参画し、準結晶を中心とした最前線の研究を進めています。蔡教授は金属専門、亀岡准教授(左写真)は触媒化学専門、藤田助教(右上写真)は理論物理学出身。3つの異なる専門分野の力が結集していることが、蔡研究室の大きな強みになっています。「2人は、それぞれの専門分野では私の師にあたる存在です」と蔡教授は話します。TAGEN FOREFRONT 10