ブックタイトルTAGEN FOREFRONT 03
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TAGEN FOREFRONT 03
元素置き換えによる触媒を創出新たな研究領域の開拓へOFF TIME仲良しチームの目印として、オリジナルジャンパーを製作 研究室のスタッフは、いろいろな研究分野から集まってきてくれているので、チームワークを大事にして、コミュニケーションをはかるようにしています。学生が準結晶の回折パターンをモチーフにした、研究室オリジナルジャンパーを作りました。 私が学生の頃は、教授が残っていると学生も夜遅くまで実験を続けたりすることも多かったんですが、今はみんなにできるだけ早く帰ってもらって自分の時間を使ってもらいたいと思っています。だから、自分が先に早く帰るようにしています。2つの元素の合金によるTsai型準結晶も作製 蔡教授が初めて安定な準結晶を作製したのはアルミ・銅・鉄の合金からでした。なぜそのような準結晶ができたのか、物質の構造はどうなっているのかということに加えて、蔡教授がその時考えていたことは、「他の組成では作れないものなのか」ということでした。物質の電子構造が関係しているのなら、元素を周期律にしたがって配列した周期表と関係があるのではないかと推論できます。そこに着目した蔡教授は、同じような性質の元素と入れ替えてみました。鉄は第8属元素に属し、同族元素にはルテニウムやオスミウムがあります。「鉄の替わりにルテニウムで置き換えてみたところ、予想通り同じ組成で準結晶ができました」。 このように1つの推論から仮説を立て、それを検証することによって、ある原理原則を導き出すという手法によって、その後蔡教授は次々に新しい準結晶を作製することに成功しています。 2000年には、カドミウムとイッテルビウムの2つの元素から成る安定な準結晶も確認するに至りました。 「当初、アルミ・銅・鉄など3元素から成る準結晶を作製していましたが、準結晶は結晶構造が複雑なために研究自体が難しく、3つの元素から作られた合金では化学的な複雑さもありましたが、2元素系準結晶はよりシンプルですから、その後の構造解明に非常に大きな役割を果たすことになりました」。この2元素系準結晶は、「Tsai型準結晶」と名付けられています。構造解析の基礎研究から新たな触媒研究への展開 「化合物のある元素を同じような性質の別の元素と入れ替えてみる」という発想は、蔡教授の研究の方向性に、もう1つ新たな柱を加えることに結びつきました。準結晶の構造解析、新しい準結晶の作製などを基本とした基礎研究から派生した、金属学ベースの新たな触媒研究というテーマです。 たとえば、カドミウム・イッテルビウム合金のカドミウムの替わりに、原子番号が隣りのインジウムや銀で置き換えた構造が存在することも、蔡教授は確認しています。つまり、ある物質の組成の一部を、他の元素に置き換えることによって、同じような性質や効果が発現する別の物質ができ01FOREFRONT REVIEW準結晶を電子顕微鏡で観察した、さまざまな画像。結晶ではあり得ない5角形を基本とした造形が、まるで美しい花びらのように現れています。上は野菊、下は梅に喩えられています。アルミニウムとマンガンの合金による準結晶の電子顕微鏡画像。これは「かたくりの花」に喩えられる蔡教授の傑作の一例(うす紫色は着色による)。この写真は2010年「科学技術の『美』パネル展」(科学技術団体連合主催)で最優勝を受賞。TAGEN FOREFRONT 9