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概要

TAGEN FOREFRONT 02

産業・社会の課題をブレイクスルーする超臨界流体を用いた反応プロセスMY FAVORITE本物を見分けるには、本物に慣れ親しむことです テレビでも「鑑定団」というものがはやっていますが、本物の見分け方というのは、難しいものだと思います。 茶器とかだと、贋作と真作を見分けるには高台の裏の土、鳥の絵などは足を見なさいなんて言われますが、真贋を横に並べずに見極めるのは難しい。ところが以前、お茶の先生に「本物だけを必ず見てなさい」と言われました。「なるほど」と思いましたね。本物だけを見ていると、贋作を目の前にした時、身体の中で自然と「ちょっと違うな」と感じるものなのだそうです。 研究でも同じことが言えるのではないでしょうか。普段から、いい研究に出会うこと。いい大学、研究所からは、いい弟子が出てくる。そういうものではないかと思っています。阿尻研究室のKeywordsは超ハイブリッド、医療を含めたナノバイオ、そしてメタマテリアルです。多種類のナノ粒子を原子・イオンと同じように扱い、設計通りに結晶化(露出面・構造制御)させる技術を開発しています。TERM INFORMATION超臨界反応超臨界流体場での反応。ガスのように高拡散、液のように高溶解度が期待できる。また、誘電率や密度が大きく変化する場での反応は、溶媒和の影響 (溶媒効果)により、反応の平衡、速度が大きく変化する。有機・無機ハイブリッドナノ材料高分子のような有機分子と金属(酸化物)ナノ粒子との複合材料。一般に、 ナノ粒子は分散しにくく、凝集し、そのため高粘度化する。高濃度分散のための有機修飾が重要。ハイブリッドしたナノ粒子有機修飾させたナノ粒子。均一相水と有機物質は、常温付近では2相分離するが、超臨界状態では、均一相を形成する。水熱合成場金属塩水溶液を加熱して、金属(水)酸化物を合成する反応場。量子サイズ効果ナノサイズとなると、バンドギャップが広がり、発光特性等、通常のバルク 物質では得られない物性が得られる特異効果。自然に学んだプロセス海底火山の状況に似ている超臨界水 「産業・社会の問題を解決する発想のポイントにプロセスという視点があります。私たちの研究室では、超臨界状態を利用した独創的なプロセスを研究・提案しています」と語る阿尻教授。 超臨界水は、374℃以上、220気圧を超えた高密度の水蒸気状態。ちょうど海底火山の周辺の水がこの状態になります。 「地球も超臨界の状態を経て生まれてきました。この状態をうまく利用すれば、地球上にあるものはなんでも作れるはずです。マグマは地下水が超臨界になり周りの岩を溶かすことによって生まれます。だから岩の融点よりも低い状態でも溶液状態となり流動します。」 マグマが地表に上がってきて温度が下がることにより、溶けにくいものが析出してきて金、銅、鉄といった鉱脈となります。ところが一気に地表に上がってきますと、超臨界水は水蒸気になり、水の中に溶けていた岩はナノ粒子となって吹き出します。これが火山爆発です。 「関東ローム層は、このようにしてできました。富士山や浅間山の噴火によって自然がナノ粒子を作っているわけです。この自然のプロセスからナノ粒子を析出するプロセスを学んでいます。」 阿尻研では超臨界場を使ってナノ粒子を大量に合成する手法を世界に先駆け提案しましたが、現在この手法は実用化しています。「生命の誕生の場」を再現ハイブリッドしたナノ粒子を合成 この超臨界状態の中では、通常では混ざらない水と油、水とガスも混ざり合います。そして、水分子そのものが酸や塩基触媒として働き、特異な反応が生じます。 「海底火山の近くで生成した岩の中には空洞ができ有機分子と融合しているという研究報告を見つけました。有機分子と無機分子が混ざった新素材を作るということを自然は毎日のようにやっているわけです。」 阿尻教授は、この超臨界状態の自然の営みをヒントに、鉱物を作りながら有機分子や生体分子と融合させることができると考えました。そして、世界ではじめて、有機・無機・バイオ分子がハイブリッドしたナノ粒子を大量・連続合成することに成功しました。 従来は、プラスチック、ポリマーなどの有機材料と金属やセラミックなどの無機材料は合成手法、条件は大きく異なるため、複合化した材料を一回の合成で作ることは難しい状況でした。「化学の分野では、有機化学、無機化学という違う分野が別個に発達してきましたが、これは有機分子とセラミックスとが混ざらず、また、元々、作り方も全く別のものだったからです。これに対し、超臨界場では両方とも合成できます。そこがポイントです。当研究室では、複合材料を超臨界水中で合成する手法を開発しました。これからは無機と有機が融合した新しい合成の時代がくるかもしれません。」 超臨界場では有機分子が結合した無機ナノ粒子は、無機材料の性質を持ちながら、有機材料とも親和性が高いという性質を持ちえます。これによって有機無機ハイブリッド材料の開発が可能となり、またポリマー中に高質量分率で充填することで熱をよく伝える樹脂をはじめとして、これまでにない材料の開発に貢献しています。自然もできなかった材料合成へサイズと配列を制御だけで物性が変わる 「2000年のクリントン宣言で、今までの材料開発からナノテクノロジーに行うべきだという方向性が打ち出されました。それ以来、時代はナノテクノロジーに向かっています。従来は、新しい材料というと、新しい物質を作るという発想だけでしたが、サイズや構造を変えて物性を制御する方法もでてきました。」 「サイズが10ナノメーター程度になってくると通常手にするような材料とは違う物性が出てきたのです。今まで光らなかったものが光るようになったりと、新しい機能が生まれてきます。」 また、鉄のとなりに、酸化鉄(つまりサビ)というように還元状態と酸化状態の物質が分子・ナノサイズで配列されたものは自然界では見つかりません。磁性・誘電・半導体材料等の配列することにより、自然界では得られない新しい特性を発現させることができるようになります。これをメタマテリアル材料と呼びます。このような材料を大量合成する技術、そして、ナノ粒子を分子のようにあつかう技術ができあがってはじめて可能となります。当研究室ではそのための基礎研究・技術開発を進めています。超臨界水中での反応により、分子と同じように相互作用を制御できるハイブリッドナノ粒子を創製しています。多くの企業がそれを応用した材料開発を進めています。その技術開発の基盤が必要です。分子のようにふるまうナノ粒子の熱力学は新たな学術分野と考え、新しい科学と工学基盤の開拓に挑戦しています。実社会で広く活用するために、当研究室では実験室スケールの流通装置から企業と共同開発した年間tonオーダー以上での生産が可能な設備を持っています。01FOREFRONT REVIEWTAGEN FOREFRONT TAGEN FOREFRONT 7 8