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概要

TAGEN FOREFRONT 02

表面反応機構を見極めダイヤモンドデバイスづくりへ応用MY FAVORITE学生の人が賞を取ってくれるのがうれしい 学生には「この研究が好きだ」と思ってくれる人に来てほしいと思っています。成績とかそういうものより、情熱というか、熱意が研究者には必要だと思っています。 大学は研究機関ではありますが、教育機関でもあります。ですから、学生を育てることに力を入れているつもりです。学生の人が論文などで賞を取ってくれるのが何よりもうれしいですね。ホームページにも学生の人の入賞した論文とかを載せています。父兄の方もホームページを見に来られていただいているようです。 女子学生もがんばってくれていて頼もしいですね。うちの研究室は女性が30%を超えていることが自慢です。国際会議でも女子学生が活躍してくれてますね。自分の研究にもいい刺激になります。高桑研究室の研究内容は、具体的に(1)機能性材料創製、(2)表面ナノプロセス開発、(3)リアルタイム表面計測法の開発、そして、(4)表面反応機構の解明の4領域に区分されます。TERM INFORMATION「その場」観察材料を合成している最中に観察する手法のこと。一般的にものづくりの研究はまず始めに「材料の合成」を行い、その後合成された「材料の評価」が別々に行われている。しかし、材料の合成中に評価も同時に行うことにより、外部要因による変化(例えば合成試料を大気中に出すことによる酸化や、合成時と評価時に温度が異なることによる熱歪み発生など)を除外することができ、材料合成過程の本質を明らかにすることができる。複合表面解析装置「その場」観察をさらに発展させ、複数の評価手法で同時に「その場」観察を行うことができる装置。例えば固体に電子を照射すると、二次電子やオージェ電子、X線、弾性散乱電子などが発生する。X線やオージェ電子からは固体に組成が分かり、弾性散乱電子からは固体の結晶構造を知ることができる。これらを同時に計測することによって、電子照射場所の組成や構造など、複数の情報を同時に得ることができる。表面反応機構固体表面における原子の動きを追跡することによって、化学反応式だけでは理解できない現象を解明する。例えばケイ素(Si)表面に酸化膜が形成される反応は、化学反応式はSi+O2→SiO2と簡単に記述できる。しかし原子スケールで観察すると、ケイ素表面ではO2分子が2つのO原子になったり、O原子がケイ素とケイ素の結合の間に入り込んだりといった現象が生じている。これらの現象を表面反応機構といい、これを解明することが効率的な材料開発につながる。エネルギーバンドギャップ固体のバンド構造において、電子が詰まっている価電子帯と電子が詰まっていない伝導帯とのエネルギーの差。この値によって、その物質が電気を流すか流さないか、透明か不透明かなどの物性が決まる。例えば、ガラスなど光を通す透明な物質はエネルギーバンドギャップが大きく、光を通さない物質はエネルギーバンドギャップが小さい。気相合成法(CVD法)気体分子を原子までバラバラにし、その原子を使って固体を組み立てる方法。例えば気体であるメタン(CH4)に含まれる炭素原子を用いて、ダイヤモンドやグラフェンなどの固体炭素材料を作ることができる。気体分子をバラバラにするために、プラズマや触媒などが利用される。リアルタイム表面計測法から基礎科学へ、そして産業応用へ 「物質の表面で何が起きているか?どんな反応が起きているか?その表面反応機構に基づいて、機能性材料の創製と表面ナノプロセスの開発をしていくのが我々の研究室です。」 髙桑研究室の専門とする領域は、表面物理学、放射光科学、材料科学、プロセス工学。その研究全体を支えるのが、リアルタイム表面計測法です。 電子がどういう形に並んでいるか?そして反応がどう進んでいくか?を、その過程で見たい。つまり「その場観察」を信条としています。研究室が研究開発を進める上での核となるのが独自に開発したリアルタイム表面計測法。現在、このリアルタイム表面計測法をベースとして、基礎科学としては「表面反応機構の解明」、産業応用としては「機能性材料創製」「表面ナノプロセス開発」へと展開しています。ダイヤモンドの量産化に向けた表面反応機構の解明と制御 パソコンや携帯電話などの電子機器にはケイ素(Si)を基板とした集積回路が組み込まれています。今後、電子機器の性能向上や消費エネルギーの低減といった課題に対応するために、新たな材料を取り入れたデバイスの開発が必要です。そのため、髙桑研究室ではグラフェンやダイヤモンドなどの炭素材料、電子回路の漏れ電流を抑制するための高品質ケイ素酸化膜、光触媒などに用いられる二酸化チタンの形成プロセスの解明などを行っています。 「現在、ダイヤモンドやグラフェンなどのナノ炭素材料の気相合成における表面反応機構の解明と制御の研究を行い、高品質ナノ炭素材料合成の量産化ためのプロセスを開発しています。」 ダイヤモンドにはどんな特長があり、それによって産業利用に展開できるのでしょうか?  まず、①化学反応で腐食されにくい、生体になじみ易いという「化学的特性」により、電気化学反応の電極や生体材料・プラント部品などに展開できます。②最も大きな屈折率、電波や光、X線が透過し易いという「光学的特性」では、赤外線・X線窓紫外線窓として、③地球上で最も硬い、振動の伝播速度が速いという「機械的特性」により、切削工具やメカニカルシールに、④大きなエネルギーバンドギャップ、誘電率が小さい、負性電子親和力があるという「電気的特性」によっては、光、圧力センサ、青色発光素子、高効率電子源へ、そして⑤地球上で最も熱を伝えやすいという「熱的特性」により IC用ヒートシンク、IC基板に利用展開できる可能性があります。 「このようなニーズとポテンシャルにもかかわらず、ダイヤモンドの供給は追いついていない状態です。新しい効率的なダイヤモンドの大型単結晶製造技術を開発が必要で、我々研究室でもダイヤモンドデバイスへの応用へ大きな一歩を踏み出したいと考えました。」ダイヤモンド気相合成プロセスの技術革新もたらした発想の転換 「ダイヤモンド単結晶をデバイスに応用するには、不純物や格子欠陥の制御が不可欠です。従来は、ダイヤモンドの創製においてガス(水素、メタン)からダイヤモンドを作る気相合成法という手法が使われてきました。」 この気相合成法は純度の制御がしやく、大型の単結晶を作れる可能性があり、いくつかの研究機関で研究開発が行われてきたといいます。 「しかし、既存の炭素系膜のCVDプロセスでは煤堆積に装置汚染が深刻な問題となっていました。」真空槽の壁に煤が付着に頻繁なメンテナンスが必要。さらに表面で低濃度ラジカルになり、ダイヤモンドの成長速度が遅い、電力消費が莫大で効率低い、などの問題もありました。「なんとか問題を解決できないか。そこで考え出したのが、まったく発想を逆転させた光合成プロセス法です。」07FOREFRONT REVIEW 電子機器の性能向上や消費エネルギーの低減といった課題に対応するために、高桑研究室ではグラフェンやダイヤモンドなどの炭素材料、電子回路の漏れ電流を抑制するための高品質ケイ素酸化膜、光触媒などに用いられる二酸化チタンの形成プロセスの解明を行っています。薄膜形成メカニズムなどを解明するために、研究室には光電子分光装置や電子回折装置などの分析機器、高桑研で独自に開発した光電子制御プラズマCVD装置などが設置されています。世界最先端の研究を行うためには市販の装置をそのまま使うだけではだめだと言います。TAGEN FOREFRONT TAGEN FOREFRONT 43 44