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概要

TAGEN FOREFRONT 02

光でつける、光でつくる、光でみる先進的な光機能材料の創製へシングルナノからマイクロ領域の電子デバイス・光学デバイスの作製を目指す中川研究室。有機高分子と金属・無機物質の界面に関して分子レベルで精密に設計し、新たな高分子薄膜系ソフトナノ材料の創出やその微細加工法の提案しています。TERM INFORMATIONスプリットリング金や銀のような貴金属のリングを分割した構造で、「メタマテリアル」と呼ばれる自然界にはない人工的光学機能が発現すると予見されている物質の基本単位構造。数十ナノメータースケールの構造体を集積することで、原子や分子が光学顕微鏡で観察できるパーフェクトレンズが物理学に基づく理論で予言されている。光硬化性樹脂光(主に紫外線)を照射することで硬化する性質を示す組成物。一般に、光重合開始剤、重合性モノマー、添加剤などからなる。室温下、短時間で硬化できるので、光ナノインプリント方式でナノサイズの微細パターンを作製する材料として期待されている。コーティング、光造形、印刷版など幅広く用いられている。離型促進分子層光硬化性樹脂を硬化させた後にモールド(型)から剥がれやすくする(離型を促進する)ために、分子レベルの数ナノメートル程度の厚さで、モールドの表面や硬化樹脂の表面に偏在している層状物質。選択的金属化用レジスト樹脂金属イオンの還元反応(めっき)、金属の酸化反応(エッチング、侵食)、金属原子・クラスターの蒸着により、所定の部分のみに金属構造を作る(選択的金属化)プロセスで耐性(レジスト)を適切に示す高分子樹脂。自在に光で制御し描いた物性を持つ物質をつくる 「次世代のものづくり基盤技術としてナノインプリント技術を考えていますが、そこでポイントとなるのは、分子1層レベルの分子界面を理解して界面機能を制御することです。そのために研究室で取り組んでいるのが“光でつける・光でつくる・光でみる”というポイントで、自在に“光、電子、磁力をあやつる”ことを目指して様々な材料の微細パターンを作製しています。」 例えば、“光でつける”をポイントにした例。普通の材料とは違う方向に光を屈折させる、メタマテリアルと呼ばれる負の屈折率材料は、理論的には金のスプリットリングがあればできると言われているのですが 「金属薄膜を微細に加工するためには、高分子薄膜が基板上に安定に形成されている必要があります。基板表面を光反応性単分子膜によって修飾し、光架橋反応により高分子薄膜と金属薄膜を化学的に結合させる(“光でつける”!)と、精度のいい金のリング状の微細パターンをつくることができます。」  研究室では今、“光でつける”分子レベルの接着剤(密着分子層)、“光でつくる”ナノインプリント用光硬化性樹脂、離型促進分子層や選択的金属化用レジスト樹脂、“光でみる”蛍光レジスト、“光をあやつる”ハイブリッド光学材料などの光機能材料の開発、光硬化性樹脂のはく離特性を調べるための力学評価装置などの独自の研究ツールの開発を進めています。型を作る技術、型を押しつける技術型をはがすという総合的な技術開発 「微細形状での界面を接着させることも大変ですが、剥がすことも大変になります。どうすると型が剥がしやすくなるのでしょうか。ヒントはアイススケート。固まった層と層との間には液体があると抜けやすくなります。アイススケートがすいすい滑ることができるのと似ていますね。表面に溶けた水のうすい液膜ができるといいわけです。」 ナノインプリントリソグラフィにより100nm以下のパターンを作製するためには、極薄・高耐久性の離型促進分子層が必要になります。優れた離型性を示す界面を形成する分子を、界面科学の立場から探索しています。現在、垂直はく離エネルギーを低減させるために「どんな添加剤がいいか?」を探索するために、光硬化性樹脂はく離特性の力学評価装置などにより詳細に「剥がれやすさ」の追求を行っています。 「光で固めるという技術開発もしています。光硬化性樹脂は光ナノインプリントをはじめとして、微細加工の分野で幅広く用いられています。透明性が高く、成型が容易であるという高分子と、高屈折率かつ高い耐久性を有する無機ナノ粒子の特性を合わせ持ち、表面修飾が容易になる、ハイブリッドレプリカ材料の開発を行っています。」 さらに、蛍光性光硬化樹脂によって、光ナノインプリントプロセスを可視化するとともに、作製された極微細パターンを高精度で検査できる技術を開発しています。ものづくりで一番大切なところそれは産業化までプロセス 「起点を作る基礎研究と熟成させて完成度を高め産業化していく技術開発。この起点と終点を結ぶようなプロセス科学の研究も重要です。これがないとものづくりというものは空洞化してしまいます。そういう意味でうちの研究室では、ものづくり産業と徹底的に共同でやっていきたいと思っています。学術的に解明しやすいモデル材料・プロセスだけでなく、工業的に受け入れられる材料・プロセスで検証していくという部分を大学でも深慮する必要があります。」 研究室では、化学系・デバイス系・機械系など、ナノインプリント技術研究会やシングルナノパターニング研究グループを通じ、先端技術を持つ民間企業や新しい物性探索・デバイス創製を目指す学内外の研究室と共同研究を進めながら、新しいものづくりを研究開発しています。 「研究は評価されるためにやっているのではありません。やりたいことをやり通す信念と微細加工技術を基盤としたものづくりで社会貢献したいという志で研究を進めています。」06FOREFRONT REVIEWOFF TIME市場にでかけ、魚を選び、自分で料理を楽しんでいます うちの実家が飲食店で、子どもころから店の手伝いをしていました。大学生のころは築地の場内魚市場で買い出しも行っていました。魚を選ぶところから魚をさばくところまで、自然とできるようになりました。家でも魚料理は私の担当ですね。ひものを自分でつくったり…。月に2回は塩釜の市場に出かけていきます。例えば、鯛なら、生で刺身やこぶじめ、焼く、あら汁と同じ素材で4回楽しめるのが、魚のいいところです。材料科学における素材も視点を変えて複数回楽しみたいですね。 昨年の研究室の忘年会では寒ブリでぶりしゃぶ料理をメンバーで楽しみました。宮城県は山もあり、食べ物がおいしいのでとても気にいってます。自在に光で制御し、描いた物性を持つ物質をつくる。 "光でつける" "光でつくる" "光でみる""光をあやつる" など先進的な光機能材料の創製に向けた総合的な学術研究を行っています。分子レベルで考える化学的なプロセス。界面機能分子制御の学術的な体系化。その視点を大切にしながら、先進的な光機能材料の創製を行っています。化学系・デバイス系・機械系など、先端技術を持つ民間企業との連携。世界レベルで活躍する民間企業と共同開発を進めながら、新しいものづくりを研究開発しています。TAGEN FOREFRONT TAGEN FOREFRONT 39 40