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概要

TAGEN FOREFRONT 02

数ナノメートルの単分子膜で何ができるかを追求中川研究室では、パターンの刻まれたモールドを樹脂等の材料に押しつけ、モールドの反転形状を形成する「ナノインプリント」技術をもとに、先進的な光機能材料の創製を行っています。「ナノインプリント」技術には、熱ナノインプリント・光ナノインプリント・室温ナノインプリントなどの種類があります。中川研究室が追求する「ナノインプリントリソグラフィ技術」。 単に微細なものをつくるということだけでなく、精度の高さを実現できるのも「ナノインプリントリソグラフィ」のポテンシャルの高さ。「シングルナノサイズの成形まで近いうちに研究室でもできるようにします。」TERM INFORMATIONナノインプリントリソグラフィデバイスモールド(型)によるレジスト樹脂の成型(ナノインプリント)と、残膜除去・機能性薄膜の微細加工(リソグラフィ)の一連のプロセスで作られる、半導体、金属、無機・有機材料の微細構造体からなり、電子・磁気・光学の機能を発現する素子。電子線リソグラフィ基板上に塗布されたレジストの薄膜に電子線を描画し、レジストのパターンに沿って下地を微細加工する技術。現在では、数nm以上のパターンが形成可能。最先端装置では、20nmサイズのパターンを10cm角の領域に24時間で描画できる電子線描画装置も登場している。残膜除去プロセスモールド(型)から樹脂レジストにパターン転写した際にできる、基板上のレジストパターンの凹部に残る薄膜(残膜)を、プラズマなどで除去するプロセス。レジストパターンをマスクとして機能性薄膜や基板自体を加工する前段階に行われる。モスアイ構造モスは蛾、アイは目を意味する。すなわち、蛾の目の最表面にある可視光の波長より小さな凹凸構造。光学素子の表面に突起を形成させることで、屈折率を徐々に変えて、光の反射を抑制する。ナノピラーシート生体外での細胞培養で使われる。微細な突起構造を表面に形成させた高分子シート。突起構造と細胞との接触面積が小さなことから、細胞の分化・誘導を正常に導くことができる。パターンドメディア次世代記録媒体の1つの候補。現在の「垂直磁気記録方式」に代わり、一インチ角あたり2テラビット以上の高密度記録を達成するために提案されている磁気記録媒体。5テラビットでは、直径6ナノメーターの磁性薄膜を11ナノメーター周期で配列させることが検討されている。歴史とともに進化してきた微細加工技術 中川教授は長い微細加工技術の進化の歴史を次のように語ります。「20年前のコンピューター素子は500ナノメーターの配線サイズだったのです。それがなんと2012年には20ナノメーターに近づいています。最新CPUの回路に入っている素子が、ウィルスの1/4ぐらいという中で日常生活を送っているわけです。」 従来、このような微細なものの加工は光学系で実現していました。二次元的に光の強度分布をつけるフォトマスクという原版を「フォトリソグラフィ」と呼ばれる技術によって転写することで、電子部品の回路パターン等を作製しています。 しかし、光学系で20ナノメーター以下まで実現しようとすると、大掛かりな光源設備等が必要となります。 「工業的なラインだと光源だけで1機50~100億円が必要になります。つくるパターンチップの単価は大きく変えられないので、パターニングのコストがあわなくなってきています。このアンバランスがエレクトロニクス産業での新デバイス創出の足かせとなっています。」 大学では最先端フォトリソグラフィを扱えなくなり、工業的に受け入れ可能な微細加工技術による物質・デバイス開発が行えなくなってきています。 「唯一、電子線リソグラフィであれば、大学でもできるレベルです。ただしこの方法だと非常に時間がかかってしまいます。研究に使えますが、量産性には未だ難があります。」21世紀の10大発明ナノインプリントを活用 このような状況の中で、量産し、産業化するにはどうしたらいいのか?そこで注目しているのが、型を使って複製するという手法です。 「ナノインプリント技術です。まず、電子線リソグラフィ等によってパターンの刻まれたモールド(型)を作り、その型を樹脂等の材料に押しつけ、熱や光などを活用して反転形状のものをどんどん複製していくというものです。型押し技術は実は技術的にはかなり古いもので、石版を使って粘土に押し当ててものをつくるということは、紀元前からです。レコードから音楽CDに技術革新したのも、この型による複製技術です。身近にあった技術がすごいブレークスルー技術になったわけです。」 1995年にアメリカのグループによって発表された「ナノインプリント」という技術はMITが選んだ20世紀の十大発明にも選ばれています。 「従来だと1つのチップをつくるのに1日かかっていたものが、型さえ作ってしまえば、研究室でも線幅20ナノメーターのパターンの複製を1分以内にできます」 中川研究室では、産業への適用を重視し、残膜除去プロセスと基板の加工を加えた「ナノインプリントリソグラフィ」も研究しています。 単に微細なものをつくるということだけでなく、精度の高さを実現できるのも「ナノインプリントリソグラフィ」のポテンシャルの高さ。「型となるシリコンの側壁の荒れが0.6ナノメーター、転写しても樹脂の側壁の表面粗さは0.8ナノメーターぐらいの精度でできます。シングルナノサイズの成形までできる技術です。」 中川研究室では現在17ナノメーターぐらいの成形精度を実現していて、世界の中でも有数のレベルに達しています。その成果をもとに、先端技術を目指す民間企業と共同開発を進めています。様々な産業分野に展開されるナノインプリント技術 超微細加工技術であるナノインプリントリソグラフィによって様々な産業分野に新しい光が見えてきています。  「発光ダイオードにおいて発光層からの発光の一部が界面で内部反射されて素子から放射されず戻ってきてしまいます。そこで、ナノインプリントリソグラフィ技術で蛾の目のような微細な凹凸があるモスアイ構造をつくることで光の取り出し効率の改善ができます。モスアイ構造は蛾の目の表面から学んだ技術です。蛾の目の表面にはたくさんの凹凸構造があり、夜月明かり程度の微量な光線を目に取り込むことができます。現在、モスアイ構造の無反射のディスプレイなども販売されるようになりました。」 その他、医療用として樹脂の表面をけんざんのような形状に加工したナノピラーシートは、細胞を培養する際の機能性シートとして利用でき、再生医療関連で活用できると見込まれています。 ハードディスクなどに用いられる磁気記録媒体の構造のひとつで 、磁性粒子が人工的に規則正しく並べられた記録媒体「パターンドメディア」などもナノインプリントリソグラフィが活用されています。「パターンドメディアの1個のサイズ6ナノメーター。シングルナノメーターレベルで精緻に作り上げないといけない、そういう時代が目の前に来ています。」06FOREFRONT REVIEWMY FAVORITEいろんなコミュニティの人とふれあうことを大切にしています 趣味が多彩であることを大切にしなさいと学生には言っています。他の文化やいろんなコミュニティの人とふれあうことは、大学での研究とは違う意味で大切です。自分の人生の中で新しい刺激を得ることができるのではないでしょうか。 研究室にはいろいろな企業の方が来られて共同研究をしています。研究内容だけでなく、研究室、専攻、大学、学会、産業界の世代を越えた様々な人との交流を大切にしてもらえるといいなと思っています。(すぐ就職先が内定してしまうので困ってますが…(笑)。) スキーやバーベキューなどもやりながら、ふれあいを深めたいですね。これからの時代を創造する国際的なセンスをもつ学生をがここから育って欲しいと思っています。独自の光硬化性組成物を開発し、ナノインプリント法で作製した樹脂パターンをレジストマスクにして、金属のナノ加工パターンを作製しています。独自の装置も作り始めています。TAGEN FOREFRONT TAGEN FOREFRONT 37 38