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概要

TAGEN FOREFRONT 02

最先端の顕微物性研究からモノづくりの基盤技術の確立へ研究室では電子顕微鏡に関わる様々なブレイクスルーを実現。さらに、電子顕微鏡そのものだけでなく、解析ソフトの開発も行っていています。TERM INFORMATIONモノクロメータ物質の性質を詳細に調べる時は、速さの揃った電子を使う必要があります。しかし、通常の電子顕微鏡で使用する電子の速さの揃い方が十分でなくばらついているため、速さの揃った電子ビームを作り出すための装置です。キャリアドープ電気を流さない物質に、不純物を少し混ぜて電気を運ぶ粒子(これをキャリアと言います)を生じさせ、電気の流れる量をコントロールした物質開発が行われています。このやり方を、キャリアをドープすると言います。ユビキタス元素ユビキタスとは“ありふれた”という意味の造語です。ユビキタス元素(原子)はありふれた元素(酸素、ケイ素、アルミニウム、…)を指し、この元素を使った(原材料が入手しやすく安い)新しい材料開発研究が盛んに行われています。クラスター物質群物質は原子の集合体ですが、個々の原子が集まったというよりも、強く結合した少数の原子からなる集団(クラスター)が基本単位となっていると考えた方が物質の原子配置や性質を理解しやすい場合があります。そのような物質の総称です。熱線反射板ガラス近赤外線という光は、人の目では見えませんが、物質の温度を上げる性質があり熱線と言われます。この熱線を反射するような特殊加工したガラス板を窓に使うと、夏でも室内の温度が上がりにくく、電気の節約ができます。表面プラズモン物質を構成する原子は、+電気の原子核とー電気の電子から成り、+とーは互いに引き合います。この引力が原因となり、+とーの集団に特有な振動が発生します。これをプラズモンと呼び、物質の表面だけで生じるものを表面プラズモンと呼びます。これを利用して熱線遮蔽ガラスが作られています。独自の電子顕微鏡開発から様々に具現化した研究成果 研究室では電子顕微鏡に関わる様々なブレイクスルーを実現してきました。例えば、電子エネルギー損失分光法(EELS)によるエネルギー分解能の向上。これは、電子顕微鏡用に「モノクロメータ」を搭載することにより、電子ビームを単色化させ、分解能を高めるという方向性で実現したものです。最高で12meVのエネルギー分解能(それまでの100 倍の性能)を記録しています。 そして、実現した超高分解能EELS電子顕微鏡を用い、単結晶の電子状態や、キャリアドープに伴う電子状態変化の解明にも成功しています。 「物質が安定して存在しているかどうかは価電子(結合電子)の状態によります。この価電子の状態を解明するための電子顕微鏡用の軟X線発光分光装置の開発に世界で初めて成功しています。」現在は、ユビキタス元素からなるクラスター物質群の物性解明に取り組むとともに、より汎用性の高い装置への改良・開発を行っています。 電子顕微鏡そのものだけでなく、解析ソフトの開発も行っています。結晶構造解析用エネルギーフィルター電子顕微鏡で利用できる動力学的回折理論に基づく解析ソフトウェアの開発にも手がけています。 「この解析ソフトにより、ナノスケール領域から得た電子回折データだけからの結晶構造・電子密度分布解析を、津田准教授が世界で初めて実現しました。開発したソフトは、海外などの研究者に使用され始めています。」顕微物性技術を産業化まで広がる企業との共同研究 「フロントガラスに青い色がついた車を見たことがありませんか?これは、ガラスに小さな金属ナノ粒子をちりばめたフィルムをはっているのです。これにより、熱線が遮蔽されるわけですが、この仕組みの解明を企業との共同研究で行いました。」 主に赤外線を反射する熱線反射板フィルム。なぜ金属ナノ粒子が赤外線を散乱するのでしょうか? 「太陽光熱線遮蔽フィルターに用いられているLaB6ナノ微粒子の光学特性を明らかにするためには、これまで測定が困難だった金属ナノ粒子の一つ一つに対して近赤外領域(NIR)の測定を行う必要があります。これに対して、佐藤助教が丹念に微粒子一つ一つから電子エネルギー損失分光(EELS)測定を行ったことにより、赤外光吸収ピークが表面プラズモンに対応していることが明らかになり、熱線の遮蔽の仕組みの解明に大きな前進を遂げることができました。」 企業が考える商品の特性、それを実際にナノレベルで測定してあげることにより、その理論が解明されるわけです。そしてまた、新たな商品づくりや産業化が生まれるというスパイラルがあります。「この基盤となる解析を行うための装置が日本に1台しかないために、我が研究室と共同研究をしようという声がけがあるわけです。」見えないものを不屈の精神で見えるようにする 「あるものが見えてくると、また次のものを見たくなる。電子顕微鏡の高性能化は際限がありませんね。理論上見えるはずという想定をして設計するのですが、なぜか見えない。でもちょっとしたことを改善すると見えるようになる。これらの1個1個の現象を積み重ね、理論として確立していくのです。現在、トライ&エラーで新しい理想の電子顕微鏡を目指しています。」 学生たちとも、自分たちで試行錯誤で手づくりしていくことの大切さや楽しさを共有しています。卒業研究でも、「なぜ、これで見えないんだろう」「あと考えられるとしたらこれしかないね」というように、現場の中でひとつひとつ前進していく研究の進め方をしています。 「今も新しい顕微鏡を作りながら、次はこうしたいと思って目の前のことをやっています。常に目の前のものに不満がないと何ごとも進まないと思います。今も不満だらけですね。」05FOREFRONT REVIEW企業との共同研究も盛んに行われています。例えば、「なぜ金属ナノ粒子が赤外線を散乱するのか?」という企業が考える商品の特性を実際にナノレベルで測定してあげることにより、その理論の解明を行い、新たな商品開発に活かしていきます。あるものが見えてくると、また次のものをみたくなる。今も新しい顕微鏡を作りながら、次はこうしたいと思って目の前のことをやっているといいます。トライ&エラーで新しい理想の電子顕微鏡を設計しています。OFF TIMEプラモデルを作るのが好きで、今ガンプラにはまってます 小さいころからプラモデルを作ることが好きでした。ただ、最近は塗装とかシンナーが使えないので、ちょっと困ってました。 そんな時、「ガンプラ(ガンダムのプラモデル)」を知ってこれはいいな、と思いましたね。ガンプラだと、最初から色がついていて塗装もいらないし、接着剤を用いずに組み立てられるのでとても便利です。どんどんガンプラが増えてしまって困っていますが…。 あと気合いを入れてつくった宇宙戦艦大和や、F1の車が3台、そして、ワンピースの「ゴーイング メリー号」のプラモデル。これらもとても気に入っていて、家に完成品を飾っています。TAGEN FOREFRONT TAGEN FOREFRONT 33 34