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概要

TAGEN FOREFRONT 02

見えないものを見えるように電子顕微鏡の様々な手法を開拓電子線を照射することで得られる物質の構造・電子状態情報には『弾性散乱電子』『非弾性散乱電子』『軟X線発光』の3つがあります。この3つはそれぞれに解析する手法が異なっていて、さらにそこから得られる情報も違います。TERM INFORMATION電子顕微鏡小中学校の理科室にある光学顕微鏡と仕組みは同じだが、光の代わりに電子を使って、物を拡大して観察する顕微鏡。光速(約マッハ900,000)に近い電子を使う事で高倍率を得る事ができ、原子配列の直接観察を可能としている。電子状態解析システム原子と原子をつなげている電子の状態(結合状態)と、その電子が動けるようになった状態(反結合状態)の両方を調べるために必要な2種類の実験と、その実験結果を総合的に分析して物質の性質を明らかにする解析方法。電子回折法物質に高速の電子が入射すると、物質中の原子で電子が散乱(向きが変化)されます。この電子が散乱された方向の分布は原子の並び方により異なることを利用して、物質中の原子配置を調べる実験方法。結晶構造、価電子分布原子が周期的に配列した物質を結晶と呼び、その原子配列を結晶構造と言います。結晶は、原子と原子をつなぐ電子がいることで安定しています。この、原子と原子をつなぐ電子を価電子と呼び、その空間的分布を価電子分布と言います。電子励起、伝導帯状態密度電子励起とは、特定の場所にとどまっている電子にエネルギーを与えて自由に動けるようにすることです。この動き回れる場所(伝導帯)がどれくらいたくさんあるか(状態密度)を伝導帯状態密度と言います。sub‐Aプローブ最新の電子顕微鏡では、レンズで極細の電子ビームが作れます。1A(1オングストローム、ほぼ原子1個の大きさ、1億分の1㎝)よりも少し小さいサイズをsub-Aと呼び、このsub-Aサイズの電子ビーム(プローブ)を使った研究が行われています。電子顕微鏡を使って何ができるか?微細なもの解析する技術開発 「大学4年生の時にたまたま電子顕微鏡を使う研究室に配属となり、電子顕微鏡が好きになりました。学生時代に撮った原子配列の電子顕微鏡写真が今でもオックスフォード出版社の教科書に載っています」と熱く電子顕微鏡への想いを語る寺内教授。 電子顕微鏡とは、光学顕微鏡では見えない微細な物質の像を見えるようにする機器ですが、現在の高分解能の電子顕微鏡を用いれば、原子レベルの大きさのものを見ることができます。 直接そのものを見るというよりは、物質に電子をあて、そこから出てくる様々な信号を取り出し、そのデータを解析することにより原子だけでなく物質の性質も見えるようになります。 「微細な構造が見えてくると、原子の配列どうなっているんだろう? 電子状態はどうなっているんだろう?、とどんどん探求心はかき立てられていきます。終わりがないですね。」顕微法と一体化した微少領域での物性解析手法の確立 「我々はナノスケール構造・電子状態解析システムの構築を目指しています。半導体や新素材開発にかかわる企業研究者の間では、電子顕微鏡を用いた結晶性評価と組成分析は欠かせない解析手法となっています。現在は、いかに顕微法と一体化させた形で微少領域での物性解析手法を確立するか、がポイントになっています。」 電子線を照射することで得られる物質の構造・電子状態情報にはどのようなものがあるのでしょうか? 「色々ありますが、我々の研究グループで対象としているのは、入射電子が試料を構成する原子と衝突し進行方向を変える(散乱)とき、そのエネルギーを失わずに散乱される『弾性散乱電子』、電子や結晶格子と相互作用をしてそのエネルギーを一部失って散乱される『非弾性散乱電子』、波長が比較的長い電子が照射された領域だけから放出される『軟X線』などがあります。」 この3つはそれぞれに解析する手法が異なってきて、さらにそこから得られる情報も違います。ですから、スタッフ3人がそれぞれ担当を決め、独自に開発応用に取り組んでいます。 「弾性散乱電子」は電子回折法により、結晶構造、価電子分布の情報が得られます。「非弾性散乱電子」は電子エネルギー損失分光法により、電子励起、伝導帯状態密度の情報。「軟X線」は軟X線発光分光法により価電子帯(結合電子)のエネルギー・状態密度分布の情報が分かります。 電子エネルギー損失分光法は、電子が薄片試料を透過する際に原子との相互作用により失うエネルギーを測定することによって、物質の構成元素や電子構造を分析する手法です。軟X線発光分光法からは元素および電子軌道を選択した詳細な価電子(結合電子)のエネルギー情報を得ることができます。」見たいものを見えるようにするそのために独自の電子顕微鏡を手作りで 「今まで誰も見たいことがないものを見えるようにする。そのために今までにはなかった発想の電子顕微鏡を自分たちの手で作りだすことが必要です。」 現在、研究室では独自の手法により様々な特色ある計測機器を開発しています。○トンネル電流電子源、収差補正、subAプローブにより構造研究、吸収分光により光学特性、伝導帯研究、発光分光により価電子帯研究が行える「総合分析電子顕微鏡」○リチウム分析を実現する「発光分光電子顕微鏡」○ナノプローブで近赤外分光を実現する「高分解能EELS電子顕微鏡」○計算システムと一体で定量結晶構造解析を実現する「結晶ポテンシャル解析用分光顕微鏡」などの独自の機器を開発しています。 「今、社会は省資源・省エネルギー化に向かっています。これを実現するためには、従来よりもコンパクトで高機能なデバイスや新機能物質の開発が必要不可欠となります。 現在、新規機能材料解析用として非常にコンパクトな 『形態観察-分光電子顕微鏡』を鋭意開発中です。」電子顕微鏡とは、光学顕微鏡では見えない微細な物質の像を見えるようにする機器。直接そのものを見るというよりは、物質に電子をあて、そこから出てくる様々な信号を取り出し、そのデータを解析することによりそれまで見えなかったものを見えるようにします。今まで誰も見たいことがないものを見えるようにする。そのために今までにはなかった発想の電子顕微鏡を自分たちの手で作りだしています。汎用型高分解能EELS電子顕微鏡、世界初の価電子状態分析電子顕微鏡、などの新しい構造・物性解析装置の開発を行っています。05FOREFRONT REVIEWMY FAVORITE妻の影響で、蘭を育てています 研究室で蘭を育てています。とても優雅な気分になれていいですね。 それ以外に家を建てた時に知り合いからいただいたポトス(観葉植物)を、家には置けないくらい成長したので、研究室に持ってきて育てています。 小さい頃から草花は好きだったのかもしれません。地元の祭りの時とかに草花を買って帰った記憶があります。そして、普通に庭に水仙や他の花があった環境で育ったのですが、学生の頃はあまり意識しなかったですね。それが最近は「やっぱり花はいいな」と思うようになっています。 ポトスは、3年に1回、挿し木をして増やしています。これからも大切に育てていきたいと思っています。TAGEN FOREFRONT TAGEN FOREFRONT 31 32