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概要

TAGEN FOREFRONT 02

電位に伴う金属の酸化還元反応Fe2+→酸化→Fe3+、Fe3+→還元→Fe2+鈴木研究室では、X線回折やX線吸収などの手法を用いて物質・材料の結晶構造や局所構造を解析し、それらの情報に基づいて特性発現機構を検討しています。TERM INFORMATIONリチウムイオン電池充電可能な二次電池(蓄電池)の一つ。正極にコバルト酸リチウムなどを、負極に炭素材を使用し、両極間をリチウムイオンが行き来する電池。短時間の充電で長時間使用できる。イオン中性の原子、原子団または分子が1個または数個の電子を失うか、逆に過剰の電子を得て電荷をもつ状態になったもの。電子を失ったものは正電荷を帯びて陽イオンとなり,電子を得たものは負電荷を帯びて陰イオンとなる。酸化還元反応酸化と還元は一般にあい伴っておこり、反応系の1成分が電子を奪われて酸化されれば、他方に電子を得て還元される成分が存在する。この化学系全体の化学反応を酸化還元反応いう。磁鉄鉱最強の磁性をもつ鉱物で、最も代表的な酸化物鉱物。理想化学組成はⅣ(Fe3+)Ⅵ(Fe2+Fe3+)O4(左肩のローマ数字は酸素に対する配位数。)さび環境の作用によって金属表面に形成される固体生成物。鉄さびのように水分を含む環境による腐食生成物を意味することが多い。環境中の二酸化炭素、二酸化硫黄や塩化物イオンの影響で炭酸塩、硫酸塩、塩化物を含む場合もある。腐食金属材料などが使用環境との化学反応によって表面から金属でない状態になって失われていくこと。ふつうの大気では腐食生成物の方が金属よりも熱力学的に安定であるから、腐食反応が起こるが、反応速度が十分におそければ実際上は腐食が進まない。 形状記憶合金ある相(母相)で形成された合金が他の相にあるときに変形をうけても、母相にもどすと形状も再び元にもどる性質、つまり形状記憶効果をもつ合金。たとえば高温成形したこの合金が常温で変形しても、加熱によって元の形にもどる。 リチウムイオン電池における金属の酸化還元(Fe2+←→Fe3+) 「金属の酸化還元反応は、いろいろなところで起こっています。たとえば、パソコンなどに使われているリチウムイオン電池の正極材に酸化コバルトなどが使われており、酸化コバルトの酸化還元は電池の充電や放電において重要な役割を担っています。」と語る鈴木教授。 しかし、コバルトは資源的に乏しく高価であるため、他の元素で置き換える技術が開発されています。たとえば、資源が比較的豊富なマンガン(Mn)、鉄(Fe)を利用したリチウムイオン電池用の材料の開発が進められており、実用化も進められています。例えば、リチウムイオン電池用のリン酸鉄リチウムの構造には、リチウムイオン(Li+)が入った状態と出た状態があります。リチウムイオンが入れば鉄はFe2+ になり、出ればFe3+ になります。リチウムイオン電池は充電したり放電したり(電気を使う)したり繰り返して使いますが、これらはリチウムイオンの出入りに対応しています。これらの研究には、結晶構造や化学状態を解析する手法が用いられ、材料開発がすすめられています。磁石にくっつく酸化鉄:マグネタイトがある 鉄が酸化した状態にFe2+ やFe3+ がありますが、Fe2+ とFe3+ の両方で構成された磁鉄鉱と呼ばれる鉱物があります。英語名ではマグネタイトと呼ばれ、文字通り磁性を持っています。東北地方では釜石鉱山でとれるマグネタイトが有名ですが、マグネタイトは水溶液中でも合成することができます。マグネタイトなどのスピネル構造(結晶構造の一つ)をもつ酸化物は安価で、磁化しやすいため、ソフトフェライトという磁性材料として使われています。最近では、スピネル構造の微粒子磁性材料も注目されており、今後もさらに研究開発が進むことが期待されています。「鉄さび」は金属鉄が酸化(Fe0→Fe2+→Fe3+)してできる 「さび」とは、金属状態の金属(たとえばFe0)が環境中の酸素や水分などと酸化反応を起こして、酸化状態の金属(たとえばFe3+)からなる酸化物のこと。腐食分野では、「腐食生成物」と呼ばれます。 「大量の金属鉄を作るときには、高炉で酸化鉄(鉄鉱石の焼き固めた物)と炭素(コークス)を加熱し、鉄鉱石を金属鉄に還元させます。酸素の多い地球上では金属鉄は、安定に存在できません。金属鉄を水分の多い大気に放置しておくと、酸化して酸化鉄になります。つまり、鉄さびは、地球上で金属鉄が酸化して自然に戻ると言えます。」 このような「鉄さび」の生成反応には、水が重要な役割を演じています。地球上の大気中には水分が含まれ、それが金属鉄の表面に付着(結露)すると、水が電解質として働き金属鉄からの鉄イオンの溶解が速くなります。大気が乾燥して水分が少なくなると、溶解した鉄イオンは鉄イオンが沈殿して、鉄さび(酸化鉄やオキシ水酸化鉄)になり金属鉄表面に堆積していきます。「さびによってさびの進行を防ぐ」耐候性鋼でできた建造物 「耐候性鋼でできた橋や鉄柱などの建造物を見たことがありますか?身近なところでは、コゲ茶色した塗装を施していない街路灯があります。このような建造物では腐食が進まないように、意図的にさびを被覆した状態にして、下地の鉄鋼の腐食を防いでいます。耐候性鋼では、塗装のような手入れをほとんど必要としません。」なぜ、さびによってさびない街路灯ができるのか?理由はさびによって、金属鉄の表面上のさびはコーティングの作用があるためです。このような特徴的なさびは「保護性さび」と呼ばれることがあります。 緻密なさび皮膜ができれば、腐食進行を抑制する保護層として機能します。鉄に銅やリンなどの元素を加えて緻密なさび層をつくると、一度できたさびをはがれにくくなります。金属鉄の腐食は、下地の金属鉄とさび層との界面で起こりますので、保護性さび層により、腐食を促進する大気からの酸素や塩分などの侵入が妨げられ、腐食の進行が抑えられます。さびによる防食の原理は一般的な塗装の場合と同じで、耐候性鋼でできた建造物ではメンテナンス費用が少なくて済みます。「このようなさびの生成機構を明らかにするために、最終腐食生成物が形成されるまでにできる中間生成物であるグリーンラストに着目して研究を行っています。」MY FAVORITE幅広い分野の情報に興味をもつ 研究者は専門分野のことだけに専念しがちですが、幅広い分野に関心を持つことも大切と考えます。複数の雑誌や新聞を読んで見聞を深めており、世の中の流れについていくようにしています。マスコミ報道は一般に参考にはなりますが、注意して見ていると事実と異なることを発信していることがときどきあります。たとえば、テレビでサイコロ状「黄鉄鋼」とかいう字幕が出ていました(ワープロに頼りすぎ?)。これは、正しく「黄鉄鉱」です。このようなヘマをしないように、またあまり大袈裟な表現をせず、社会に正しい情報を発信するようにしています。各種の酸化鉄や鉄合金の粒子の中には磁性を持っているものがあり、それらの磁性を精密磁気測定により明らかにし、構造解析の結果と対応付けています。鉄の酸化状態にはFe2+とFe3+があり、リチウムイオン電池の正極材に用いられるリン酸鉄リチウム中の鉄はそれらの状態をとることができます。その状態変化は、電池の充電や放電と対応しています。 03FOREFRONT REVIEWTAGEN FOREFRONT TAGEN FOREFRONT 19 20