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概要

TAGEN FOREFRONT 02

In Cell Chemistry細胞の中での化学反応へOFF TIMEゴルフとか、テニスとか、身体を動かすことが好きです 研究室だとどうしても、机に座って、根をつめて、という感じになってしまいます。なので、オフタイムは基本、外に出て、ぱーっとリフレッシュします。 一度、椎間板ヘルニアをしてしまい、それ以来、からだをちゃんと鍛えようとジムにも通っています。 趣味はゴルフとかテニスとか。身体を動かすことが好きですね。ゴルフは実家に帰省した時、両親とコースを回っています。 テニスもします。学生時代から研究室に入ってからもずっと趣味として楽しんでます。 学生にはよく遊び、よく学ぶこと、と伝えています。実験するときには集中して、実験する、勉強するときにはしっかり勉強する、遊ぶときにはしっかり遊ぶ、ということを大切にしています。バイオロジー系の機械がない中で、ゼロから手探りで始まった永次研究室。「インテリジェント核酸をどのように、選択的に反応させるか?」という実験も、独自の実験系を自分たちで手探りで作り上げながらの研究となっています。TERM INFORMATION遺伝子の発現機構DNAに蓄えられている遺伝情報に基づきタンパク質が合成されるまでの機構を示す。従来はDNA→RNA→タンパク質という情報の流れによりタンパク質が合成されると考えられていたが、最近の研究により、ncRNAがその発現調節が働くことがわかってきており、非常に複雑となっている。In cell chemistry細胞内化学のこと。我々が目指しているin cell chemistryはDNAあるいはRNAを標的とした選択的化学反応により効率的な遺伝子発現制御を細胞内で誘起することである。細胞内環境は非常に複雑であり選択的な化学反応の実現は非常に困難であることが予想される。細胞内には多くの夾雑物が含まれており、この環境下における選択的な化学反応の実現には新しい概念が必要になると考えられる。我々は遺伝子に対する架橋反応を細胞内で行うことで得られるアウトプットから新規化学としての概念への展開をめざしている。核酸医薬核酸医薬は核酸(DNAあるいはRNA)が十数個から数十個つながった鎖状の構造を持つ核酸分子(オリゴヌクレオチド)であり市販の試薬を用いて容易に化学合成できる。そのため、病気の原因となる異常な遺伝子の塩基配列さえ分かれば、どのような病気でもその配列に合わせてオリゴヌクレオチドを用いることで、異常遺伝子の発現を抑制でき病気の治療ができると期待されている。最近、2つの核酸医薬が薬として認可され次世代の医薬として非常に期待されている。インテリジェント人工核酸高い知能を有するがごとく働く人工核酸のこと、ここでは標的遺伝子の特定の塩基に対して水素結合を形成して活性化され化学反応を起こす人工核酸のことを示している。タンパク質の発現を制御タンパク質の合成を人工的に調整することを示している。タンパク質はDNAに蓄えられた遺伝情報を元に合成される。私たちは標的遺伝子に対して非常に高い選択性をもつ架橋反応性人工核酸を組み込んだオリゴヌクレオチドを用いて、タンパク質の合成を阻害、さらには活性化させることに成功している。次世代のバイオ医薬品バイオ医薬品とは組み換えDNA技術、細胞融合法、細胞大量培養法などのバイオテクノロジーで製造された医薬品のことでタンパク質や抗体医薬がその代表的なものである。これらの医薬品は比較的副作用が少なくまたがんや心筋梗塞などの治りにくい病気も治療できるとして期待されている。近年、バイオ医薬品は医薬品売上10位の約50%を占めており今後もますます増えてくると考えられる。核酸医薬は遺伝子を標的とする新しい概念に基づいたバイオ医薬品であり今後次世代バイオ医薬品として展開する可能性を秘めている。バイオロジー系の機械がなかったゼロからはじまった研究室 多元研の中では、ユニークな化学・生物系の研究室である永次研究室。 「研究室を最初立ち上げた時は、生物系化学低分子を合成する人も少ない状態でしたし、バイオロジー系の機械がなかったのが大変でしたね。ゼロからはじめることになりました。スタッフには大変協力をいただいて進めてきました。」 常に試行錯誤の中で進めれてきた遺伝子発現制御の研究。例えば、「インテリジェント核酸をどのように、選択的に反応させるか?」という実験も、独自の実験系を自分たちで手探りで作り上げながらの研究となっています。 「標的塩基に対して水素結合により複合体を形成することでねらった遺伝子に対してのみ化学反応しタンパク質の発現を制御するという仕組み、このインテリジェント核酸の仕組みを実験するために、現在は試験管内における評価系を用いて研究を進めています。まず標的となるモデル遺伝子に対して結合できる配列を持つインテリジェント核酸を合成します。これらのインテリジェント核酸がモデル遺伝子に対して選択的に化学反応するかどうかについて調べています。」 「化学のレベルではかなり理想的に働くインテリジェント人工核酸の開発に成功しています。ただ最終的な目標は細胞の中で働くインテリジェント人工核酸を創ることですので、細胞の中で何が起こるのかを調べて化学にフィードバックしたいと考えています。」In Cell Chemistry細胞の中での化学反応 実際の「細胞の中」でインテリジェント核酸がしっかり反応するかどうか? それが決めてになります。  「試験管の中でAにBを加えるとCになるという結果が得られたとしても細胞の中でうまくいくとは限りません。細胞の中にはいろんなものがあり、すごいスピードで反応をしています。」 「モデル遺伝子に対しての化学反応を調べる系はすでに確立しており、かなり当初考えていた理想的な結果が得られています。しかし、生化学の共同研究者に頼んで合成したインテリジェント核酸の細胞内での効果を調べてもらった場合、うまくいったとしてもうまくいかなかったとしても、その結果だけしかわかりません。 このような問題をクリアするためには『細胞内での実験』もある程度は自分の研究室でやって、共同研究だけではとれない情報を調べたいと思い、研究室を立ち上げる時に細胞を使った実験を行える環境を整えました。現在、化学の部分も解決しながら、少しずつではありますが、やっと細胞でもポジティブな結果が得られるようになっています。」 永次教授が提唱しているのが「In CellChemistry」。これは、細胞の中に入った時しっかりと試験管の中と同じように反応するか?を研究し、実現を目指すのが研究テーマです。試行錯誤の中で、永次研究室の独自の研究スタイルの確立がなされています。 「バイオロジーは膨大な情報があり、新しいことに関する研究はものすごい数で集まりますが、それ以外の情報は少ないという現状があります。自分が知りたい部分の生物学的な情報を、自分の研究室で知りたいというモチベーションでやっています。」 現在、低分子医薬品・抗体医薬品に次ぐ新規医薬品として核酸医薬品に対する期待が高まっています。「核酸医薬は次世代のバイオ医薬品として注目されています。ただ、狙った細胞の中に薬を届けることが難しく、現在、薬として臨床で認められているのは2つだけです。しっかり細胞の中に入っていき、異常な遺伝子を制御する。これが私の目指すところです。」 遺伝子発現の化学的制御ツールの開発、さらには次世代核酸医薬のとしての展開をテーマに研究は続いています。100年ぐらいたった時にこんなことを考えた人がいたんだ 「今研究しているインテリジェント核酸医薬は、最終的なゴールとしては、もちろん臨床で使用されるようになるということにあります。ただし、臨床まで持っていくというのは私ひとりでできることではありません。今できることはコンセプトづくり。100年ぐらいたった時に、こんなことを考えた人がいたんだと発見してもらえることが、私の研究の成果なのかも知れません。」 永次教授は、自己満足の研究ではなく他人にも価値を伝えられる研究をしようと学生に常日頃から伝えていると言います。研究は最終的には「人類の幸福に役立つこと」を目指してやるものだと、自分の信念を届けています。「もちろん、研究によってはそのタイムスパンがかなり違い、100年後、500年後に役立つ研究もあると思います。たとえ、そのタイムスパンが違ったとしても、理想的にこの研究がうまくいったら、どんな役に立つのかということは、必ず研究として考えるべきだと思います。」細胞の中に入った時しっかりと実験室どおりに反応するか? これを研究し、実現を目指すのが、永次教授が提唱している「In Cell Chemistry」という研究手法です。自分が知りたい部分の情報を、実際の研究室で知りたいというモチベーションでやっているという永次教授。標的遺伝子に対してピンポイントの反応性で架橋反応を形成するインテリジェント人工核酸の開発に成功し、現在、さらなる高機能化、及び新規人工分子の開発について研究を進めています。02FOREFRONT REVIEWTAGEN FOREFRONT TAGEN FOREFRONT 15 16