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概要

TAGEN FOREFRONT 02

産業のニーズに寄り添い発想の演算により広がる可能性OFF TIME「普段と違う環境に身を置くこと」を意識的に行っています 音楽・絵画にすごく興味があり、研究室にも飾っています。大学の研究室って殺伐としていますよね。研究という発想の場というより、仕事場、町役場のように見えますよね。アートな空間にすることで、研究もクリエイティブになるのではないでしょうか?普段から「違う環境に身を置くこと」を意識的に行っています。そのひとつの例でもあるのですが、学生時代お茶をかじってました。実は妻とはお茶の教室で出会ったんですよ(笑)。お茶は単なるマナーやセレモニーではないのですね。もてなす側と招かれる側が、双方の思いを理解し合い、相互作用しつつ共に創り出す場なのです。そのためには、庭も花も愛で、書や絵にも親しみ、食やお酒にも通じないとだめ、まさに総合文化だと思います。違う環境に身をおくことは、創造的なアイデアを生み出す源泉のような気がしています。超臨界反応技術を駆使した、新規なエネルギー資源の開発と新材料、デバイスの開発のための基礎研究を行うと同時に、超臨界技術の産業技術基盤化のための研究を行っています。学生にもグローバルなものの考え方、新規技術を開発していく時の発想法を学んでもらいたいと考えています。阿尻研究室で大切にしているのが「発想の超臨界」を作っていくということ。計算科学、物理、半導体、高分子、生化学、医学など、いろいろな分野の人達と一緒に議論し、アイデアを融合させて、今までにない材料を創っていこうというアプローチをとっています。TERM INFORMATION電気回路と等価の光デバイスインダクターとキャパシターとで共鳴回路が形成される。電磁場においても 特定の周波数領域では同様の効果が得られ、光の共鳴、閉じ込め効果が期待される。高屈折率のナノ粒子TiO2、ジルコニアやチタン酸バリウムのような高屈折率のナノ粒子スーパーDDS薬剤を目的とする臓器、部位に送達するのがドラッグデリバリーであるが、 その機能をさらに高めたものや、薬剤放出能を制御できる機能やイメージング機能等を付与したもの。マクロファージ体内に入った外敵を攻撃する防衛機能を担う生体分子の一つ。界面活性たんぱく質たんぱく質からなる界面活性剤。ナノ粒子系の新しい熱力学分子には熱力学体系があるが、ナノ粒子に対してはその適用が制限される。 ナノ粒子が関わる現象を記述するために新たな科学が必要である。自在に分子やナノ粒子を配置今までの常識も変わってしまう 自在に分子やナノ粒子を配置できると、どのようなことが起きるでしょうか。  「例えば、光は、屈折率の違う媒体があると屈折します。ただし、負に屈折するような物質は自然界には存在しません。しかし、磁性体と誘電体を配列することでそれが実現しうることが最近の物理で予測されています。」 光学系には電気回路のようなものはありません。しかし、これも光の波長よりも十分に小さな誘電体と金属を配置することで、電気回路と等価の光デバイスを構築できることが予想されています。このようなものができれば、従来の光学系は根底から変ってしまいます。まさに光学系の革命を起こすことができます。 「このためには、ナノ粒子を自在に配置できなければなりませんね。このような技術・材料系の開発にチャレンジしています。」 ナノ粒子は光の波長よりも十分に小さいので完全に分散していれば透明になります。高屈折率のナノ粒子をプラスチックに分散できれば、プラスチックの加工性と透明性を保ちながら屈折率を大幅に上げることもできます。強度もあがり、耐熱性や導電性も持たせることもできるといったように今までにない新しい材料を作ることもできます。医療分野まで広がるナノ粒子の応用分野 ナノ粒子を自在に制御できることにより、その応用分野は医療分野まで広がっています。阿尻研究室では、痛み等の負担をともなわない医療診断・治療技術を支える新材料の開発を行っています。 「自分自身でX線CTやMRIを受けてみたのですが、造影剤がとても大変だなと思っていました。体が燃えるように熱くなります。体にいいわけがない。より高精度に、より低濃度で使えると造影剤があればいいなと思いました。」 ナノ粒子を分子のように扱い、光る造影剤や、X線やMRIで感応する物質を開発しています。 薬剤を患部に届けるDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)の開発も行いましたが、当初困ったのは、免疫細胞(マクロファージ)が反応して攻撃されてしまうということ。そこで、体内の白血球などの免疫系に見つからないステルス戦闘機のような(隠密)機能をもったナノ粒子を作ることが必要となりました。 「農学部の先生に聞いたところ、攻撃されないカビがあるので、表層分子の粒子をつけたらいいのではと教えて頂き、共同研究がスタートしています。」 マクロファージがほとんど認識しないまさにステルス機能をもったスーパーDDS用のナノ粒子が実現する可能性が出てきています。一つ一つの企業にインタビューに行った産業の共通ニーズに合わせて新しい基礎研究 阿尻研究室では、2012年に「超臨界ナノ材料技術開発コンソーシアム」を設立。超臨界ナノ材料関連技術、ナノ粒子ハンドリング・応用技術を活用したい企業を募り、産業化を推進しています。 「参加企業から産業が何を求めているかをリアルタイムに知り、産業基盤的な「共通ニーズ」(新たなサイエンスの種)を抽出し、基礎研究を行うというアプローチで、産学連携を行っています。自動車・電気・触媒・化粧品、様々な業種の企業が参加しており、一つ一つの企業にインタビューし、将来どんなものが欲しいか先にニーズを聞きます。しかし、単にそれだけやるのなら企業のお手伝いにすぎません。しかし、分野横断型の共通課題を知りそれを解決できたら、それは、おおきなイノベーションにつながります。」 「すごくいいナノ粒子だけど使い勝手が悪い。ウニみたいに有機分子分散剤があらかじめついていたらいいよね」というようなニーズが産業分野を越えてあることを知り、有機無機ハイブリッドナノ粒子合成研究がはじまり、その合成に成功しました。その製品開発も実現しています。 「解決の方法はどうするのか。我々の研究アプローチはまず自然に学ぶということ。それをもとにいろいろな角度の発想、そして装置工学・プロセスの視点も入れて解決へと導いていく。その結果は産業にフィードバックし、新しい学術を確立していく。スパイラルアップ型の産学連携の形ができあがっていると自負しています。」 「違う分野の話を聞くのが楽しい。専門じゃないので馬鹿な質問もできる」と話す阿尻教授。新しい分野に飛び込んでいくことにより、発想を融合させ課題をブレークスルーするこれも大切です。  「10年前に研究室を立ち上げた時、同じ分野の人ではなく、生化学の人、バイオの人、材料科学の人、計算科学の人に来てもらいました。うちの研究室に来たら一番のスペシャリストです。いっしょに違う分野だからこそ違うベクトルの発想を交換できたし、外に対しても広い分野にいろいろアンテナが張れたのだと思います。」ナノ粒子がどれぐらい溶けるか、どんな物性を示すかという学術体系はないと言います。「ナノ粒子系の新しい熱力学の学術基盤を作ることが直接貢献できるポイントではないか」と阿尻教授は考えています。01FOREFRONT REVIEWTAGEN FOREFRONT TAGEN FOREFRONT 9 10