ブックタイトルTAGEN FOREFRONT 01
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TAGEN FOREFRONT 01
ダイシハーベインという新規興奮性アミノ酸のグルタミン酸受容体への作用、結核菌由来ヘム分解酵素MhuDの活性中心構造と反応機構の解明といった様々な共同研究も進めています。研究のブレイクスルーにつながる「構造解析」という研究方法の確立HO の結晶化法、中間体作成法、評価法などを確立する構造解析という手法をもとに様々に展開される共同研究ドライブをよくしていました。ポルシェとBMWを2台ずつ乗り継いでいました。 アメリカで仕事をしていた頃は、平日でもゆとりのある生活をしていました。仕事の帰りにジムに行って身体を鍛えたり、テニスを楽しんだり。日本ではそこまでの余裕がないのでなかなかできないですね。 広いアメリカに住んでいると、自然と車の運転が好きになってしまいました。毎年3 回、研究費の審査でワシントンに出張をしていたのですが、ある冬大雪のため、飛行機がキャンセルになってしまったんです。それ以来、遠くても車で行く習慣が付いてしまいました。以来大のドライブ好き・車好きですね。ポルシェとBMWを2 台ずつ乗り継いでいました。ドライブはいいストレスの解消になりますね。科の佐々木誠教授からダイシハーベインという新規興奮性アミノ酸がどのような形でグルタミン酸受容体GluK1,GluK2に作用するか、という問題に対して問い合わせがあり、ならば結晶構造をX線で解析してみましょうということで共同研究を行いました。グルタミン酸受容体は脳の機能や疾患について理解するために最も重要な研究課題といわれていますが、構造解析という視点から一定の成果を挙げることもできました」。 齋藤研究室では、さらに独自の構造解析に基づいた反応解析のノウハウをもとに、結核菌由来ヘム分解酵素MhuDの活性中心構造と反応機構といった共同研究も進めています。「MhuDによるヘム分解時にはCOが生成していないことも明らかとなっています。CO放出を伴わないヘム分解の報告はなく、MhuDの特異なヘム分解機構に興味が持たれています」。 「タンパク質は実に良くできていて、私たちの生命活動の維持に重要な役割を果たしています。これができるのはタンパク質は目的にあった最適な構造を持っているからであり、そのメカニズムによって生理機能を実現しているからだと思います。私たちは、その自然が与えてくれた構造という叡智をしっかり研究により把握したいと思っています」。 様々な新しい技術開発も、その化学変化の構造の基幹となる部分を抑えることによって実現できるのでは、と齋藤教授は語ります。例えばメタンからアルコールへの変換も、化学的にはとても難しい処理が必要ですが、微生物はいとも簡単に行っています。この微生物による変換をしっかり構造分析できれば、新しい技術開発もできるようになります。 「自然界にある生物の機能はまさにアイデアの宝庫です。発想を豊かにすれば、ここから様々な基礎的な研究テーマ生まれてくるはずです」。 「すぐに役に立つかどうか分からないような基礎研究もしっかりやっていくべきです。例えばアポロの宇宙開発もコンピューターの開発や新しい断熱材の開発など、ものすごい波及効果があったわけです。今私が進めているタンパク質の構造解析と反応機構解明という基礎研究から新しい未来の科学技術が生まれることを夢見ています」。 HO反応の本質自体が研究当初なされていなかった理由は何だったのでしょうか? それは「 ヘムおよびその代謝中間体」を観測してはいるが、「 これらを取り巻くHO酵素」を見ていなかった点にあると齋藤教授は説明します。つまり、反応中のHOの構造は反応開始時の構造から類推せざるを得ず、HOの多段階反応を考える上ではあまりにも不確実であったことが挙げられます。 「そこで研究室では、HO反応の本質を詳細に至るまで徹底的に解明するために、全反応中間体のX線結晶構造解析を目標としました。HOの結晶化法、結晶状態での中間体作成法、および、その評価法などを確立することにより、現在までに同定されている10つの反応中間体のうち、 9つまでの結晶構造解析に成功しました。最後の残り1つの中間体に関しても近い将来解明できると考えています」。 これらの構造解析によりどんなことが解明されるのでしょうか? まずはHO反応自体への理解が深まること。そして、全反応中の酵素の動きを原子レベルで捉えることにより、他の酵素についても酵素が「いかにして反応を触媒するか」を考える上で貴重な見解を得ることができると齋藤教授は語ります。 「このような形で、齋藤研究室ではHOの研究を通して、独自のX線結晶構造解析・反応解析・質量分析・蛋白質工学・種々の分光学などの手法を松井敏高講師、海野昌喜助教(現茨城大准教授)、大学院生と協力して確立してきました。これにより、様々な新しい研究テーマへの展開や、共同研究などに広がりがでてきています」。 構造解析という手法を確立により生まれてくる新しい研究テーマ。齋藤研究室では、ヘムタンパク質以外にもミトコンドリア中での鉄輸送と酸化ストレスの関連についての研究など新しい研究テーマにもチャレンジしています。 「共同研究もたくさん行っています。HO研究ではアメリカ、フランス、イスラエルの研究者達との共同研究により、反応機構解明が進みました。また、生命科学研究ミクロネシア産の海綿Lendenfeldia chondrodesから単離された天然のアミノ酸で、GluK1やGluK2に非常に強固に結合してナトリウムイオンの細胞内への導入を促進します。ダイシハーベインHOは7個の電子と酸素3 分子を逐次用いてヘムを分解します。その過程で生じる反応性の非常に高い不安定な中間体の構造研究には、中間体を安定に補足しなければなりません。極低温にすることにより反応を停止させることが出来ますが、凍結状態では還元剤と混合する常法での電子付与が出来ません。そこで、凍結した水溶液に放射線を照射すると発生する水和電子を電子供与体として用いる極低温照射法がHO 反応中間体研究へ応用出来ると考え、旧知の米国の研究者と共同でHO 反応中間体の研究を始めました。初めに酸素と結合したHOを調整して-170 度程度に冷却します。そこに放射線を照射し、生成してくる反応中間体を種々の方法で評価します。昇温により反応が進行しますので、次に微少昇温により反応を進行させ,次の中間体が生成したところで再度温度を下げて安定に補足します。ヘムタンパクは鉄を含むので、鉄の電子状態を観測しながら中間体生成を確認する事が出来ます。結晶構造解析には放射光によるX 線回折を用いるので、放射光により発生する水和電子を還元剤として用いてHO反応を-100度に保った結晶内で進行させることにより反応中間体を補足して、それらの構造解析をすることが出来ました。HO 反応中間体作成法体内での酸化反応と抗酸化反応のバランスが崩れた状態。この状態になると、活性酸素種が増えてタンパク質、遺伝子、脂質に傷害が起こり、細胞機能の障害がおき、色々な疾患の原因となります。酸化ストレスグルタミン酸受容体は、グルタミン酸の結合によりタンパク質構造変化を引き起こし、イオンを細胞内へ導入し,速い興奮性の神経伝達を担うチャンネルタンパク質です。グルタミン酸受容体宿主のヘモグロビンから結核菌内に取り込こんだヘムを分解する酵素。結核菌と同様に抗生剤耐性が問題になっている黄色ブドウ球菌にもMhuDと類似のヘム分解酵素IsdGがあります。どちらもHOとは異なる新規の機構でヘムを分解します。結核菌由来ヘム分解酵素MhuD独自のX 線結晶構造解析・反応解析・質量分析・蛋白質工学・種々の分光学から、様々な新しい研究テーマへの展開や、共同研究などに広がりがうまれています。HO 反応の本質を詳細に至るまで徹底的に解明するために、HOの結晶化法、結晶状態での中間体詞製法、および、その評価法などを確立しています。自然が与えてくれたタンパク質の構造解析の考え方・手法に関する基礎研究の積み上げをもとに、様々な分野のイノベーションに寄与することを目指しています。生物はアイデアの宝庫基礎研究から様々な可能性は生まれる以前乗っていたポルシェ。自宅前庭にて撮影(ペットを抱いているのはご子息)。