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概要

TAGEN FOREFRONT 01

多彩な生理機能を持つヘムタンパク質を解明する基礎研究 「我々の体の中に鉄は3~4g存在していて、主として赤血球をつくるのに必要な栄養素となっています。体内の鉄は、その約70%が血液中の赤血球をつくっているヘモグロビンの成分になっていて、約25%は肝臓などに貯蔵されています。ヘモグロビンは、呼吸でとり込んだ酸素と結びつき、酸素を肺から体のすみずみまで運ぶという重要な働きをしています」と語る齋藤教授。 ヘモグロビンは、鉄イオンとプロトポルフィリンが結合した「ヘム」と呼ばれる鉄化合物と、「グロビン」と呼ばれるタンパク質が結合したものです。 「ヘモグロビンは赤血球が寿命(約120日)を迎えたときに体内で分解されます。ヘムとグロビンに分解され、ヘムはさらに分解されてヘム内の鉄は新しいヘムタンパク質や鉄含有タンパク質を作る材料につかわれます。プロトポルフィリンは胆汁色素(ビリルビン)となり体外に排泄され、グロビンは、分解されてアミノ酸になり、各種蛋白質の合成に利用されたり、尿素となって体外に排泄されます」。 ヘモグロビンのような「ヘムタンパク質」には、ミオグロビン、ミトコンドリアの電子伝達系(シトクロム)、薬物代謝酵素(P-450)、カタラーゼ、一酸化窒素合成酵素、ペルオキシダーゼなどがあります。 「ヘムタンパク質は、ホストになるタンパク質によって、小分子の輸送、遺伝子の伝達、酸化還元、分子センサーなど様々な機能を持ち、生体内で重要な役割を担っています。古くから現在まで、広い分野の様々な研究者の注目を集めてきました」。 「ヘムタンパク質の中でも、特にヘムを分解するヘムオキシゲナーゼ(HO)の酵素反応機構の研究を中心に行ってきました。また、生体内のヘム濃度を関知してHOの発現を制御する転写抑制因子Bach1のヘムセンシング機構の研究等を進めています」。 HOは酸素を還元的に活性化することにより、ヘム(鉄ポルフィリン錯体)を分解する酵素で、多彩な機能があります。まず、へム代謝・鉄の恒常性維持に中心的な役割を果たすなどが挙げられます。さらに近年になってビリベルジン(およびその誘ヘムタンパク質とは?どんな可能性を持っているのか?ワインへのこだわり。ワイナリーから送ってもらっています。 お酒を飲むのは好きですね。他の研究室の先生達と飲みに行ったりもよくします。おかげで住まいも国分町に移しました。どんなにお酒を飲んでも歩いて帰れますから。 その中でもワインに目がないですね。ボルドー大学の研究所を訪問した時も、シャトーでのディナーでボルドーのワインを楽しみました。 アメリカのワインは、大学の先生仲間から教えてもらって、かなり詳しくなりました。学会がある時には、わざわざワイナリーからホテルにワインを送ってもらっています。それぞれの土地の豊かな風土を感じることができるお酒ですね。3 段階で行われるヘム分解の様子。基質であるヘム自身が酸素を活性化し、自らを酸化分解するのが特徴です。最終的に鉄イオン・一酸化炭素・ビリベルジンに分解します。生体内で不要になったヘムを酸素分子と電子を用いた分解反応を触媒する酵素。本文中にあるように、HOは鉄の恒常性維持という我々にとって重要な役割を担っています。また、打撲による皮下出血によって生じた青痣が変色後に退色するのは、内出血に含まれるヘモグロビンのヘムをこの酵素が分解する過程で、実は私たちに身近でなじみ深い酵素なのです。ほ乳類の酵素は東北大学医学部医化学教室に居られた吉田先生(山形大学名誉教授)がその実体と基本的な特性を70年代に確立され、その後現医学部の柴原教授が遺伝子を同定され、更に医学部の山本教授、五十嵐教授によりこの酵素の発現機構が解明されており、東北大学に非常に縁の深い酵素です。ジフテリア菌や赤痢菌等の病原性細菌にも構造・機能が類似した酵素があり、我々の血液中から細菌の増殖などに必要な鉄を獲得する役割を担っています。独自の酸素活性化機構や反応の解明に必要となる分離観測。反応中間体の構造を解析・反応性の評価・活性種の同定などをしっかり行っていきます。導体)の抗酸化作用や、 一酸化炭素によるシグナル伝達作用についても明らかにされつつあります。 生体内での重要性にもまして、 HO反応はその特異な反応機構についても多くの研究者の注目を集めています。 「ヘム分解は3段階で行われ、鉄イオン・一酸化炭素・ビリベルジンに分解します。この分解の各段階で酸素の活性化が必要ですが、HO反応では基質であるヘム自身が酸素を活性化し、自らを酸化分解しています。HOは補酵素を持たない単純タンパク質です。つまり酸素の活性化は基質であるヘム自身が行っているわけです」。 ヘムによる酸素の活性化はP450などで古くから良く知られていますが、通常のヘム酵素は「ヘムを活性種に用いて外来基質を酸化する」のみで、「 ヘムを分解する」ことはありません。このため、 ヘムの酸化分解を行うHO独自の酸素活性化機構や、それを可能にする酵素の役割などに興味が持たれ、精力的な研究が成されてきました。 この独自の酸素活性化機構や反応の解明には、3段階の酸素添付反応をしっかりと分離観測することが必要です。そして反応中間体の構造を解析・反応性の評価・活性種の同定などを行っていくことが求めれています。 「私たちがHOの特異な反応機構の研究を始めた当時、HO反応の3種の主な中間体の存在は判っていましたし、ヘム分解に重要なアミノ酸残基も明らかになっていましたが、HO反応の本質自体は未だ不明な状態でした。その理由は、3 段階の反応機構解明に必要な構造情報が欠如しているためであることに、気づきました」。ヘム分解酵素HOHOには恒常的に発現しているHO-2と、重金属、ヘム、生体ストレスなどにより発現が誘導されるHO-1の2種類があります。Bach1はHO-1遺伝子の直近に結合してHO 発現を抑制するタンパク質で、医学部の五十嵐教授、山本教授らにより発見されました。Bach1はヘム結合タンパク質で、ヘムと結合するとタンパク質の構造が変化して標的遺伝子から解離し、HO-1 遺伝子の発現が可能となります。ヘムが存在しない時にはHO-1は不必要ですから、Bach1は不要なHO-1の発現を抑制しています。転写抑制因子Bach1環境変化に対応するために細胞内や細胞間で行われる情報伝達。感覚、興奮などに対応してホルモン、グルタミン酸や燐を含む低分子化合物等のシグナル分子が放出され、細胞表面の受容体に結合することで、環境変化情報が細胞に伝達されます。HOが生成するCOは血流調整や神経伝達のシグナルであると報告されています。シグナル伝達作用体内では、酸素濃度変化に対応して呼吸・代謝はじめ様々な活動が調節されますが、酸素濃度を感知するタンパク質、酸素センサータンパク質、があることが知られています。低酸素で細胞増殖などに係わる遺伝子の発現を調整する酸素センサータンパクが良く研究されています。ヘム分解酵素に関しては、血液中の酸素、二酸化炭素、pHなどの情報を呼吸中枢に伝達して呼吸を調整するシステムの一部である頸動脈小体に存在するヘム分解酵素の活性が酸素濃度変化に応じて変化することにより呼吸調整に関与していると考えられています。酸素センサーヘム代謝酵素の多彩な生理機能を解明HO の特異な反応機構に迫る3 段階の構造解析へ齋藤研究室が中心となって研究しているヘムオキシゲナーゼ(HO)の酵素反応機構。多彩な機能を持っており、様々な研究がなされています。酸素分子と電子を用いて様々な低分子を水酸化する酵素。解毒、薬物代謝、ホルモン生合成などに係わっています。特に薬物代謝では、約75%の現在用いられている薬物の代謝に関与しているといわれています。P450