ブックタイトルTAGEN FOREFRONT 01
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TAGEN FOREFRONT 01
ナノレベルの鋳型を使ってユニークなカーボン材料を開発 「炭素材料は日常の世界で、いろんな形で使われている黒子のような存在です。例えば、タイヤ。タイヤはなぜ黒いのでしょう?実はタイヤはゴムだけではできていないのです。タイヤゴムに炭素を混ぜて作られています。炭素が入っていなかったら強度がなくなって1日使ったらすり減ってしまいます。炭素(カーボン)は我々の生活を支える貴重な素材なのです」と語る京谷教授。 例えば、鉄鉱石から鉄を精製する時にも炭素を使います。鉄鉱石は鉄と酸素が化合したもの。ここに石炭を乾留処理した燃料「コークス」を反応させて一酸化炭素を発生させ鉄鉱石から酸素をとりだし、鉄を作り出しています。 さらに炭素(カーボン)の特徴は軽くて丈夫ということで、この特性を使い、宇宙航空分野にも活用されています。最新鋭のジェット機には軽くて強い炭素繊維複合材が使われています。 「日本はカーボンファイバーのテクノロジーの分野で一番進んでいます。その中で、我々の研究室で研究しているテーマは一般的な炭素材料ではなく超微細なナノサイズのカーボンです。ナノカーボンと他の材料と複合化させたハイブリッドナノカーボンを工業的に応用することを目指して、様々な企業の方々と共同研究を進めています」。 このような炭素を使ってユニークな形成物を作ればユニークな特性を引き出すことができます。材料の特徴から、リチウムイオン電池・キャパシターなどの環境エネルギー領域や複合材料領域など、幅広い分野への応用の可能性を秘めています。 しかし、ここで問題が生まれます。ナノレベルで構造物を「創製することはとても難しい」ということ。そこで京谷研究室が注目したのが「鋳型」を使った形成法です。 「巨大な鋳型を使えば、巨大な形成物ができます。当然、微細な鋳型を使えば微細なものができます。ナノレベルの鋳型を使えばナノレベルの形成物を精密に、そして大量に作ることができるわけです」。 つまり、ナノサイズの鋳型が上手にできるようになれば、ナノサイズの材料が調製できるようになるのです。 「例えば、アルミニウム陽極酸化皮膜は円筒状のナノ細孔を有しています。このナノ細孔を利用して、細孔内に炭素を薄くしかも均一に堆積させることで、中が空洞となった微細な管であるカーボンナノチュー様々な科学技術に使われる黒子のような炭素(カーボン)専門とは全然違う本を読む。リッラクスできます。 本を読むのが好きなんです。と言っても机の上でじっくり読むというわけではなく、夜寝床に入って、パラパラページをめくっていくうちに、知らずのうちに眠りに入ってしまうという感じの読書です。 プライベートでは化学の本や工学書などの専門書は読みませんね。専門とは違う生物、物理、数学、全く畑違いの経済、政治や歴史とか評論とか、気楽に読みながら、いつの間にかそのまま寝てしまうというのが気持ちいいですね。本当にリラックスしているんでしょうね。 文学小説なども読みますよ。でもあまりに夢中になるので最近はなるべく小説は避けています。「知らずのうちに眠りに入ってしまう」ことができなくなるので。ナノレベルの構造物を作るための手法が「ナノ鋳型」。ナノレベルの均一な鋳型を使えばナノレベルの形成物を精密に、そして大量に作ることがでます。均一な2~50 nmの細孔(メソ孔)を持つ多孔性のシリカ(SiO2)材料の総称。ゼオライトの細孔(2 nm 以下)には吸着できない大きな分子を吸着できる。メソポーラスシリカそのものは絶縁体であるが、グラフェンシート数層分の炭素で完璧に被覆することで、導電性と高い耐薬品性を持った機能的な材料に変えることができる。カーボンナノ試験管には表面親水化処理をしなくてもそのままで水に分散する性質があります。ナノ試験管とは、まさにナノサイズの試験管。薬物送達システムのキャリヤとしての活用が期待されています。ブやカーボンナノ試験管を均一サイズで作り出すことができるわけです」。ここに画期的なカーボンナノ試験管という新材料が生まれました。 作り出された「カーボンナノ試験管」は文字通り「中空」であり、その内部に多様な物質を収容することができます。まるで試験管に入った物質を眺めるかのように、「ナノ試験管」の内部に入った物質を電子顕微鏡により直接観察することができます。炭素という軽元素でできた薄い層からなるチューブですから、電子線に対して透明な(肉薄の)「試験管」と言えます。しかし、薄いとはいえ試験管の中に物質が収容されているので、電子線による物質のダメージも最小限にすることができます。 「ナノ試験管とは、まさにナノサイズの試験管。いろいろな試薬などを入れることができる新材料なのです。さらに、カーボンナノ試験管には過酸化水素水などによる表面親水化処理をしなくてもそのままで水に分散する性質があります。一般に炭素材料は水をはじく性質をもっており、カーボンナノ試験管が水に分散するのは画期的なことなのです」。 研究室ではカーボンナノ試験管のこのような性質を活用できるバイオ分野に注目し、薬物送達システムのキャリヤとしての活用を検討しています。RNAなどを壊れないように運ぶことができ、遺伝子治療に活用できると期待されています。 「アルツハイマー病は、体の中でたんぱく質の線維が形成していくことで病状が進行することが知られています。そこで、ナノ試験管が線維の形成を防ぐことができるのではないか、というアイデアで研究を進めています。実際に最近の実験では、線維化の原因となるたんぱく質がナノ試験管の内部に吸着されることで線維の発生を抑えることができるという結果が出ています」。メソポーラスシリカここではアルミニウム陽極酸化皮膜の鋳型から合成した片端の閉じた試験管状のカーボンナノチューブのことを指す。一般的なカーボンナノチューブと異なり、外表面に親水性基を多く持つため、水系の溶媒によく分散させることができる。さらに、一般のカーボンナノチューブよりも大きな口径(10 nm~)を持つことから、遺伝子やタンパク質などの比較的大きな生体分子も中に入れることができる。カーボンナノ試験管アルミニウム金属を酸性の電解液中で陽極酸化することで、無数の均一なサイズの直線状ナノ細孔が平行に空いているアルミニウム酸化皮膜を作製することができる。電解液の種類や陽極酸化の電圧、時間など条件を変えることで、細孔径(20~500 nm)や細孔の長さ(100 nm~100 μm)を自在に制御することができる。アルミニウム陽極酸化皮膜炭素原子の六角網面からなるナノサイズの円筒状の物質の総称。円筒が何層にもなった多層カーボンナノチューブもある。上述のアルミニウム陽極酸化皮膜を鋳型とすることで、結晶性は低いが、均一な口径を持ち長さの揃ったカーボンナノチューブを作ることが可能になる。カーボンナノチューブ近年、体内への薬物送達を量的・空間的・時間的に制御するためのキャリアとして、カーボンナノチューブのようなナノ物質が注目されている。カーボンナノ試験管は、内部のナノ空間内に輸送する薬剤(生理活性物質、遺伝子、ペプチドなど)を閉じ込めることができる。薬剤は生体内での輸送中、カーボンの壁によって守られるため、より効果的な輸送キャリアとなることが期待できる。薬物送達システムのキャリアナノな鋳型を使って特異な性質を持つナノ材料を遺伝子や薬を運ぶメッセンジャーとしても活用の視野に京谷研究室で開発を進めているのが超微細なナノサイズのカーボンです。ナノカーボンを工業的に応用することを目指して、様々な企業の方々と共同研究を進めています。