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概要

TAGEN FOREFRONT 01

生体試料の帯電効果の研究中、微細線維を周回する電子の動きをキャッチ。今まで研究者が誰も見たことのない電子の動きを電場の揺らぎとして鮮明に映し出しています。物質科学の基礎・応用研究に広く利用できると期待プリンターの高性能化にも貢献電磁場から産業技術も変わる電子の軌道も確認アインシュタインに見せてあげたい原子配列、電磁場、導電性を同時に総合評価できる新技術を開発日本海の荒波を見ると、気分も広大になっていきます。 実家が山形の鶴岡なんです。実家に帰ることがあると、必ず日本海の荒波を見にいきます。海の営みを見ていると、心が洗われ、なぜか広大な気分になり癒されますね。 ドライブも好きなので山に行ったり、温泉に浸かったりしてリフレッシュしています。 オフタイムはオフタイム。研究は研究という形でしっかり分けています。家庭内では内向きですけど、研究室では外向きに協力してやっていくんだと思っています。学生も含めて共通認識でチームワークよくやっていこうと話をしています。試料への電子線照射を防ぐために用いる金属製のプレート。電子線照射を受けた試料は二次電子を放出する。試料が絶縁体の場合、放出された二次電子を補う電荷の移動が乏しいため、電気的な中性を失った試料は帯電する。研究課題によっては、電子線照射による帯電を抑える必要があり、その方策の一つとして遮蔽板を試料の上部に設へ二本の微小探針を導入し、それらをピ 置することが有効となる。エゾ素子を利用して独立三次元駆動できる新しいシステムを試作しました。これらの探針は、電子顕微鏡で観察している領域の任意の場所へ移動でき、例えば界面を挟んだ二点間など自在に電気抵抗を計測できます」。 ピエゾとは圧電体に加えられた力を電圧に変換する、あるいは電圧を力に変換する受動素子で、アクチュエータ、センサとしての利用されています。このピエゾ素子を使って2 探針ピエゾ駆動ホルダー開発に成功したわけです。 「この技術が確立されれば、ナノスケールでの多元的解析ができるようになります。異なる物質を組合せて特異な性質を引き出すナノコンポジット材料や異なるスピンや電荷を利用するスピントロニクス素子などの新規物質への応用もできると思います」。 誰も見ていない場を見る。ナノレベルの電磁場を観察していると、さらに不思議な現象に出逢えると進藤教授は言います。 例えば生体試料の帯電効果。絶縁体である生体試料を電子顕微鏡で観察するため、導電物質で被覆すると帯電効果が低く抑えられることが知られていますが、その表面での複雑な電場分布の解析を通して興味深い現象が現れました。 「神経組織の微細線維の帯電効果の研究中、微細線維を周回する電子の動きをキャッチしました。今まで電子の動きを直接見た人はいません。感動的な一瞬でした」。 微細線維から放出された2次電子は、プラスに帯電した線維に引き戻され、その複雑な表面電場により周回軌道が生み出されます。 「こういったことは、実験で実際に挙動が見えて始めてわかることです。実験データを後世に発することも大切な使命だと思っています。様々な基礎研究にも寄与できるのではないでしょうか」。 場の理解から始まった電磁場の研究。場とその量子化だけで全てが説明されなくてはならないという思いがあります。少しずつ糸口は見つかり始めていると言います。 「今私が見ている電磁場や電子の軌道を、統一場理論を夢見たアインシュタインに見せたかったですね。アインシュタインが生きていたら何て言うでしょうか?」 電子線ホログラフィーは、日常で使う機器などの高性能化にも貢献しています。例えばプリンター。多くのプリンターに利用されているトナーは、その粒子の構造・形態についてかなり詳細に解析されてきていますが、摩擦帯電効果については十分解明されていませんでした。これは実用的に極めて重要なポイントです。 「プリンターメーカーとの共同研究を行い、最新の電子線ホログラフィーを用いた電場解析を行いました。当初問題となったのは、トナー粒子自体の帯電を調べたいのに、電子顕微鏡内では、電子線照射により試料表面から2 次電子が放出され、トナー粒子がプラスに帯電してしまうことでした」。 「どうしたものかと考えていた時にふと浮かんだのが雨の時さす傘です。傘で隠せばいいんだと思いついたわけです」。 帯電効果を避けるため、トナー粒子の上部に傘(遮蔽板)を挿入。入射電子の試料への照射を抑えた上で試料周りの電場を解析。 その操作後、遮蔽板を移動し、トナー粒子一個を除去。遮蔽板を元の位置にもどし、再度電場の解析を行いました。こうして得られた二つの電場分布の差を求めることにより、一個のトナー粒子の微小な帯電量を正確に求めることに成功しました。 「この電場解析技術は、電子線照射による損傷を受けやすい半導体、液晶、高分子、生態系材料など、種々の物質系の解析への幅広い適用が期待されています」。 「電子線ホログラフィーは“原子配列”と“電磁場”を見ることができます。これに物質の性質を特徴づけるもう一つの主要因子“導電性”を知ることができれば、物質を総合評価できるようになります。研究室ではこの新技術を開発しました」。 電気的な計測を行うためには、一般に二本以上の電極を試料に接触させる必要がありますが、汎用の透過電子顕微鏡と異なり、ホログラフィー電顕の対物レンズは磁気シールドが施されているため、探針を導入する十分なスペースがありません。 「この問題を解決するために、唯一対物レンズへの挿入が可能な試料ホルダー遮蔽板ある種の物質に圧力を加えると、その表面に電荷が生じる(電気分極が生じる)という効果を圧電効果、或いはピエゾ効果という。ピエゾ効果を利用して圧力と電気分極・電圧を変換させる素子をピエゾ素子と呼ぶことがあり、印加電圧に応じた素子の変形が可能である。本文で述べた透過電子顕微鏡内での探針駆動技術はピエゾ素子を活用したものである。ピエゾ機械的な摩擦が物質の帯電を促すという効果。物質中の電子を真空に引き出すためのエネルギー(仕事関数)は、物質に依存する。仕事関数の異なる物質を接触させると、その界面領域で電荷の移動が起こり、帯電を誘発する。摩擦を施すと接触面積が増すために帯電が増長される。摩擦帯電効果物質中における電子移動の容易さを表す指標。導電性が高い物質は金属、低い物質は絶縁体であり、工業的にもそれぞれの用途に利用される。一部の材料では、温度や磁場を利用することで金属から絶縁体へと(或いは絶縁体から金属へと)導電性を著しく変化させることが可能で、センサーや記録媒体等の開発を視野に活発な研究が行われている。導電性性質の異なる物質を微視的スケールで共存させた複合材料。構成物質が単独では発現できないような特性を、複合化によって達成するもの。例えば磁石の場合、保磁力の大きな結晶相と、磁気モーメントの大きな結晶相を数十nmのスケールで複合化させると、お互いの結晶相の特徴を相補的に活用して、磁石特性の目安となる最大エネルギー積という指標を向上させることができる。ナノコンポジット材料物質中の電子が持ち合わせる要素のうち、従来のエレクトロニクスで利用されてきた「電荷」だけでなく、磁性に関わる「スピン」も活用した新しい電子工学的技術。電荷とスピンの両方を活用する新規な素子をスピントロニクス素子と称することがあり、磁場による電子散乱の制御や、電圧による磁化分布の操作などユニークな動作原理に関わる研究開発が盛んに行われている。スピントロニクス素子連続的な物理量(場)の値が単位量の整数倍のとびとびの値になること。これにより、古典的な物理量が量子論的な量に置き換えられる。物理学では、古典論から量子論に移る手続きを指す。量子化実際に挙動が見えて始めてわかる電磁場の世界。実験データを後世に発することも大切な使命だと進藤研究室では考えています。電気的な計測を行うための対物レンズへの挿入が可能な試料ホルダーへ二本の微小探針を導入。界面を挟んだ二点間など自在に電気抵抗を計測できます。電磁場制御と伝導性評価のための電顕内探針操作技術の開発や、高温超伝導体、強相関電子系新物質の磁束イメージングなど、電子線ホログラフィーを活用した様々な研究が進んでいます。