ブックタイトルTAGEN FOREFRONT 01
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TAGEN FOREFRONT 01
構造物性を研究するための他にはない最新鋭機器の製作へ 物質そのものではなく、物質の「結晶構造」の視点から物質の性質を理解する。このような研究分野は「構造物性」と呼ばれています。物質の物性・機能と結晶構造が強く相関した系について、その構造情報から発現機構を解き明かす分野と言えます。 では、どうやって「構造」を調べるのでしょう? 野田幸男教授は、「構造物性」を追究するための実験機器の開発から始めています。 「私が研究を始めた頃には、原子や電子を調べることのできる機械は普通にはなかったです。ないのであれば、作るしかないということで、装置開発が私の研究の多くを占めるようになりました」。 野田教授が大阪大学にいたころに最初に開発したのが、冷凍機を使用したX線回折計やX線一次元検出器。それを千葉大学に移った後に放射光を用いた高分解能の4軸X線回折装置に拡張。姫路に近い西播磨科学都市にある世界最大規模の放射光施設SPring-8に設置されました。「SPring-8の最初の装置を作ったことになります。平成9年の供用開始以降、この機器により国内外で放射光を活用した最先端の研究開発が展開されています」。 「放射光」を用いることによって得られる構造情報は実験室系では得られない精度の情報を引き出すことができます。高輝度・高分解能の特性を引き出す回折装置を用いれば、水素のような軽元素であっても電子密度分布を議論することができるようになります。需要が広がるナノマテリアル関連の研究に広く貢献しています。 「この研究室にも、世界で最初の装置、日本で最初の装置など最先端の装置がたくさんあります。常に研究をブレイクスルーするためには新しい装置の開発をしなくてはいけません。見たいものによって開発する機器もどんどん増えていきます。実験室で開発した装置は大型施設での装置に応用されていきます」。 野田教授の次なる「見たいターゲット」となったのが「原子核」。中性子の装置も日本にないということで、中性子の構造を観る装置の開発にも関わりました。「X線は電子を見ます。中性子線は原子核を見るわけです。見る対象が違うのです」。 東海村にある原子力研究所に 中性子用の4軸回折装置を立ち上げて、この装放射光で構造を解析する4 軸X 線回折装置まさに一期一会。一晩だけ咲く月下美人に魅了されます。 花が好きです。ただこだわりがあるので、なかなか咲かない花に興味を持っています。まさに名前が示す「月下美人」。夜に花を咲かせ、一晩しか花を咲かせない事で有名な花です。ケネディの暗殺され年に阪神御影駅で買いました。10 年以上前から研究室にも月下美人を置いて育てています。名前通りに美人の花ですね。香りが強く、匂いで花が咲いてる事によく気付きます。 写真が撮れた時は感動しましたね。とても大きく育ち大輪の花を咲かせますから、大きな鉢とそれなりに広いスペースは必要です。 この研究室からまた大きな研究成果という大輪を咲かせられたらいいですね。野田研究室ではX線による精密な単結晶構造解析と中性子構造解析の両方を研究。同一の試料で行い重ね合わせることにより、結晶内での原子核一電子一電子スピン分布を包括的な知見を得ることができます。例えば水を例に取ると、ある温度や圧力範囲で液体の「水」や固体の「氷」の状態をとり、これら一定の状態を「相」とよぶ。固体相の中でも、温度を下げると原子変位などを伴って構造が変わることが有り、それぞれが別の「相」となって違う性質を持つ。このような変化を構造相転移と呼ぶ。構造相転移に伴い物質の性質が大きく変わり、相転移前後で巨大で色々役に立つ性質が現れることが多い。X 線や中性子線などを用いた回折実験で「構造物性」を見極める最新機器。実験室で開発した世界に一つしか無い装置も含めて、これらの最先端の機器を使い、電子・原子の世界の法則を明らかにしていくことを野田研究室では行っています。構造物性を極めるためには新しい装置が必要です。大学の工場で全く新しい発想の元、色々な装置を作っては研究に使用しています。置を使って他ではできないユニークな実験も可能です。全国の研究者による共同研究に利用されています。 低温装置を組み合わせた中性子用の4軸回折装置で、日本で唯一の装置です。3ケルビン(マイナス270℃)まで下げた状況を作りだすことができ、これにより超低温という極限状況での構造物性を調べることができます。 最近では、韓国原子力研究所と共同で二次元湾曲中性子検出器の開発も行っています。「特徴は、ブラグ反射を効率よく取るための装置であるということ。大面積の検出器と組み合わせていて、高い感度、広い測定範囲、高い空間分解能などの強みを持っています」。 そもそも電子と原子核を見て何がわかるのでしょうか?X線による精密な単結晶構造解析と中性子構造解析が同一の試料で行うことができれば、両者から得られる相補的情報から、結晶内での原子核一電子一電子スピン分布について包括的な知見を得ることが可能になると期待されます。 「X線で見た電子と中性子線で見た原子核、それぞれが見た構造を重ね合わせることにより、それぞれの位置のずれを認識することができます。電子が通常あるべき位置にいないことにより電気分極が起きていることが分かります。外部からの電場がないにもかかわらず自発的な電気分極を起こす『強誘電体』の仕組みも、これらの新しい装置を使うことによって初めて見えてくるわけです」。 強誘電体とは誘電体の一種で、外部に電場がなくても電気双極子が整列し、双極子の方向が電場によって変化できる物質を指します。有機物の中にも強誘電性を持っているものがありますが、その特異な構造がX線と中性子の両方使って初めて見ることができています。 このような形で電気分極を起こす強誘電体は、現在コンデンサーにも利用されています。強誘電体というのは日本のお家芸で、通信機の中にも利用されています。構造相転移結晶の方位を制御して見たい原子面をX線や中性子の入射方向に対して鏡の反射のような配置に動かし波の干渉を起こさす装置を回折計という。三次元空間では三つの角度の自由度で済むが、四つ目の角度を導入して散乱する波の方向を検出器のある水平面になるようにした回折計を4軸回折計といい、精密な回折実験に使われる。4軸回折装置温度を下げたときに固体の中にある電気分極が一斉に同じ方向を向いた状態を自発的に取ることがある。外部から電圧をかけると電気分極が反転する場合が多い。このような相を強誘電相と呼び、そのような物質を強誘電体という。電気分極の方向でその前にかけた電圧の符号を記憶できるのでメモリーに使われる。また、相転移に伴い巨大な誘電率が発生するのでコンデンサーに使われたり、巨大な電気歪み効果が現れるのでセンサーや電気作動装置に使われる。強誘電体光速近くまで加速した電子を曲げると電磁波が発生する。電磁波は可視光からX 線まで幅広く分布する。これを放射光という。イメージとしては、電子にまとわりついていた電気磁気エネルギーが、電子が曲がったのにそのまま電磁波として直進してくると考えれば良い。X 線を発生するためには大きなエネルギーになるまで電子を加速する大型施設が必要となる。放射光レントゲンは透過力の強いエネルギー流を発見して最初のノーベル賞受賞者となった。この不思議な謎のエネルギー流(X線)が電磁波であることを結晶による回折(波の干渉効果)で明らかにしてノーベル賞を獲得したのがラウエである。この結晶によるX線回折現象を定量的に説明して未知の結晶の構造解析に応用したのがブラッグ(息子のWilliam Lawrence Bragg)である。まるで鏡の反射のように回折が起こるので「反射reflection」という言葉が使われるが、実態は「回折diffraction」である。実験装置を作った父親のWilliam HenryBraggとともにノーベル賞を受賞する。ブラグ反射粒子と思われていた電子や中性子も波の性質を持つことが量子力学の発展と共に分かってきた。量子力学に大きく貢献したのがド・ブロイの物質波にたいする理論であり、ノーベル賞を受賞した。中性子が波の性質を持つのならX線構造解析と同じことが中性子でも出来ることはすぐに気がつく。中性子を利用した磁気構造解析や非弾性散乱の研究でシャルとブロックハウスはノーベル賞を受賞した。中性子構造解析さらに原子核も見たい4軸回折装置を立ち上げへ電子と原子核を見て何がわかるのか?