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概要

TAGEN FOREFRONT 01

都市鉱山から希少資源を取り出す金属資源循環システムの構築へ 「携帯電話や、薄型テレビ、ハイブリッド車、太陽電池――日本の産業の根幹を成す分野には、多様なレアメタルが用いられています。都市鉱山の中には、このレアメタルが大量に眠っています。この資源を回収できるかどうかは、これからの日本の経済において大変なポイントになります」と話す中村教授。 レアメタルとは、埋蔵量が少なかったり、経済的、技術的な理由で採掘の制約が大きい金属のことで、液晶ディスプレーに使われているインジウムや、自動車の排ガスを浄化する触媒に白金パラジウムが使われるなど、ハイテク分野から家電、自動車に至るまで、今や生活や産業に欠かすことのできない重要な資源になっています。 このレアメタルを中心にいかに金属資源を効率よくリサイクルして循環させるかが、都市鉱山の活用のポイントとなります。 「家電リサイクル法があって大型家電に関してはリサイクルされていますが、パソコン・携帯電話・タブレットに関してはリサイクルの対象になっていません。我々がターゲットとしているのはこの家電リサイクル法で取り扱っていない小型電子機器です」。 現在、小型電子機器は家電リサイクル法の対象となっておらず、回収されていないのが現状です。しかし、平成25 年4月に「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律」の施行が予定され、収集が始まることになっています。 「問題は集めてきた小型電子機器からいかに効率的に回収するかですが、既存の技術では効率性という点では問題があります。より効率の良い回収技術を確立さうるために、今回のプロジェクト『希少元素高効率抽出技術』が始まっています」。 この回収を効率よく回収するための技術を開発することが「東北発 素材技術先導プロジェクト」における「希少元素高効率抽出技術」の役割です。どのようなカタチで具現化されるのでしょうか? 「まずは、廃製品外側をはずし選別して破砕します。それぞれの部品を分別回収してできるだけ同じ部品だけを取り寄せます。そして、熱・酸などにより、レアメタルなどの有用金属を取り出して金属元素に戻します。それぞれのところに要素技術があるわけで、この要素技術を高度化・最適化した形で組み合わせていくことが必要です」。 これらの研究は以下のような項目に沿って進められます。①物理選別技術(破砕の科学・形状認識)②化学分離技術(新規イオン液体の合成・融体の構造と物性の明確化)③応用技術開発(高効率抽出剤の開発・重金属処理の開発)④構造解析技術(固体微少部解析・融体構造解析)⑤シミュレーション技術(イオン液体・溶融塩の物性評価)「都市鉱山」にはどんな資源が眠っているのか?こだわりと言えば、モノにこだわらないことでしょうか。 日頃研究室では、かなり微細な世界にこだわって研究を進めて行きますので、プライベートでは、あまり「モノにこだわらない」ようにしています。モノに執着しない生き方というんでしょうか。特にそれ自体にもこだわっているわけではありませんが… 普段から目まぐるしく時間に追われる生活をしています。なかなかプライベートな時間が取れないということもあり、ぼーっと自分だけの時間を過ごしていることが贅沢な時間の過ごし方だと思っています。 昔から冗談で「くれるものがあるなら、時間が欲しい」と言っていました。ゆったり平穏な日常を噛みしめることもいいのではないでしょうか。より効率の良い回収技術を確立さうるために誕生した「希少元素高効率抽出技術」プロジェクト。物理選別と化学分離の精度を上げる中で、高い精製・回収を実現し、採算性のある産業化に結びつけていきます。1988 年当時の東北大学選鉱製錬研究所 教授 南條道夫が提案したレアメタルを含む金属資源のサプライチェーンを考えた循環システムの重要性を提案したときの言葉。人口の集中した都市にはスクラップや廃棄物の形で多くの金属資源が眠っていることを示し、あたかも鉱山が存在するとした。パソコン・携帯電話・タブレットなど、都市鉱山の中には、現在法律によって回収が義務づけられていない小型電子機器があります。これらを回収して有用金属をリサイクルすることが求められています。 プロジェクトの中では明確な数値な数値目標は定まっていませんが、最適化された物理選別と化学分離により、より高い精製・回収を実現し、採算性のある産業化に結びつけていくことを目指しています。 「今回のプロジェクトでは、企業化できるレベルまで技術を高め、実際に東北地区で産業化していくということを目標としています。私自身としては5 年を目途に産業を生み出すことができるのではと期待しています。現在、企業が何社も入って連携して研究を進めています」。 より高い精製・回収率を目指す資源回収システム。プロセスの第一番目となる「物理選別技術」は精度をあげること最適化と大量に処理するための自動化を目指しています。 「まず、電気パルスという方法で破砕しようとしています。対象物にカミナリのような電気パルスを流し、絶縁破壊させます。するとプラスティックの部分だけが壊れるます」。 どんなところから壊れて剥離するか?どういう界面ではがれてくるか? これらの現象を科学的にしっかり理解して分別装置の開発に結びつけていこうとしています。 「さらに破砕して分離した素子を、種類ごとに分別することが必要です。ベルトコンベアーで大量に流れてくる素子を自動的に高精度に識別し、選別するソーティングシステムを開発します」。 そのために、未知試料の選別を自律的行うための画像認識、そのデータに基づいて素子を迅速に成分認識する「レーザー誘導発光分析」技術を確立します。さらに最適な風量で多段に分別する気流選別技術を開発しています。都市鉱山全体のシステムを構成する一つ一つの技術をさす。例えば、リサイクルの場合、回収してきた廃製品を解体・破砕、その後固体選別、化学選別と種々のプロセスを使って資源化されるが、それぞれのプロセスの単位技術を示す。要素技術2005 年 東北大学多元物質科学研究所(前研究所の後継の一部)教授 中村 崇、同じく東北大学環境科学研究科 白鳥寿一が都市鉱山から実際に金属資源を回収するために提唱した概念。実際の鉱山は鉱石が集まった鉱床を採掘するわけであるので、人工的に鉱床を作ってリサイクルを進めることを示す。人工鉱床経済産業省資源エネルギー調査会鉱業分科会レアメタル部会で決められた31 鉱種をさす。この場合、希土類元素はScも含め1 鉱種にみなされている。一部、W、Moなどは備蓄もされている。レアメタルは日本のハイテク製品になくてはならないものであり、産業のビタミンとも言われる。レアメタル高圧の電圧をかけると絶縁性物質において電気的な弱部にそって破壊が起る。そのときに破壊現象を絶縁破壊と呼ぶ。複雑な最終製品は種々の部品で構成されており、中には絶縁体(プラスチックなど)が使用されている。そこで高電圧パルスをかけて、絶縁体部分を破壊し、素子単体を基板から剥離、また素子の破壊を行い、金属部分との分離性を向上させる絶縁破壊物質の強度の強いレーザー光を照射するとその部分が瞬間的にプラスマ化し、発光する。その際の発光スペクトルは物質を構成する元素固有のスペクトルを示す。そのスペクトルの波長ならびに強度を分析することで対象物質の化学成分の分析か可能となる。レーザー誘導発光分析様々な要素技術を構築しトータルなシステムの産業化を目指す精度をあげることと自動化を目指す「物理選別技術」