1 はじめに

 化学実験を行ううえでガラス器具は不可欠である。それは、ガラスが化学的に安定でフッ酸以外のものにはほとんど侵されず、また容器内での化学反応を観察することができる等の利点をもっているためである。
 現在では多くの種類のガラス器具が市販されており、それらを組み合わせることによってほとんどの化学実験を行うことができる。しかし、ガラス製真空装置を使ってのNMRやESRの試料の調製、酸素と反応しやすい物質を取り扱う場合などの実験では研究者自身がガラス細工を行わなければならない。また、ガラス器具の簡単な修理や改良などを研究者自身が行える方が便利であるし、とくにガラス技術者のいない研究機関ではそれが不可欠となる。そこで、研究室でのガラス細工について、初歩的な技術を簡単に述べてみたい。ここでは、おもにホウケイ酸ガラス(Pyrex,Duran-50等)の加工をとりあげる。ホウケイ酸ガラスはソーダ石灰ガラスと比べて急激な温度変化に耐え、アルカリ溶出度が少ないなどの理由から、最近の実験用器具はほとんどその素材を使うようになっている。また、熱加工時のひずみによる破壊が少ないために、加工は比較的容易である。