平成10年6月23日
基本調査
裏面を使用してよい。
番号[ ] 氏名[ ]
1. 身近にある製品で、触媒が使われている、あるいは、含まれている、あるいは、触媒を使った結果、できたものって、何があるだろうか。3つ例をあげて、どういう触媒が使われているか、記述せよ。
2. 吸着とは何か。物理吸着と化学吸着に分けて説明せよ。
3. 平衡論と速度論の関係について述べよ
平成10年6月23日
基本調査
裏面を使用してよい。
番号[ ] 氏名[ ]
1. 身近にある製品で、触媒が使われている、あるいは、含まれている、あるいは、触媒を使った結果、できたものって、何があるだろうか。3つ例をあげて、どういう触媒が使われているか、記述せよ。
(例)
1.自動車触媒: ゼオライトやアルミナのような酸化物担体の上に、Pt白金が担持されている。児童hさ排気ガス中のNOx等を除去する。
2.ガソリンや経由など: 石油やナフサから蒸留された留分の付加価値を高めるために、接触改質している。この触媒は、別名fcc触媒と呼ばれており、石油化学の重要な触媒である。
3.メタノール合成: Cu-ZnO/アルミナ触媒であり、天然ガスから接触改質によって得た、合成ガスCO+H2からメタノールを合成する。得られたメタノールは酸化され、ホルムアルデヒドになり、これは、高分子化合物を合成する際の、もう一つの原料(共重合)である。
4.酢酸合成: 工業用酢酸は、いわゆる人絹の原料である。この酢酸は、上記の合成ガスとメタノールから、液相均一系で合成される。つまり、触媒も液体の、Rhロジウム系触媒を用いる。
5.オキシドール: 消毒用の過酸化水素の希薄溶液である。これを肌につけると盛んに酸素の泡を出すが、この酸素によって、消毒される。この酸素発生は、二酸化マンガンによる、過酸化水素水の分解反応と同様であり、肌によって分解を受けたわけであり、肌が触媒といえる。
6.生体触媒: 酒の生成の際の、麹菌の出す酵素や、酵母がある。さらには、唾液中の酵素など、ありとあらゆる酵素が小さな触媒である。
2. 吸着とは何か。物理吸着と化学吸着に分けて説明せよ。
吸着はその吸着力から物理吸着と化学吸着に分類できる。前者はvan der Waals力で、後者は化学結合力で支配される。触媒反応では後者の化学吸着がきっかけとなる。化学吸着は触媒表面との化学結合を前提とするので、その吸着熱は化学反応熱と同じ程度である。物理吸着が可逆吸着であるのとは対照的に気体分子が吸着後すみやかに化学変化を起こすことが多く、不可逆な場合がある。また、化学吸着は一種の化学反応であり、活性化エネルギーを必要とすることが多く、平衡吸着までの時間は物理吸着に比較してきわめて長い。
3. 平衡論と速度論の関係について述べよ
平衡論は、いわば、桃源郷ユートピアの世界の話である。この世界と今とのエネルギー差が、まさしく、ギブスの自由エネルギー変化なのである。平衡論は、エネルギー的に最も安定なところは、どこか、「ある条件下」で、規定しようとする学問である。
触媒は、速度論の学問である。いかなる触媒を使っても、平衡論の範疇にある。逆に言えば、平衡的に生成しないものは、どんな触媒でも得られないのである。たとえば、水と炭酸ガスから、石油を作ろうと言っても、平衡が著しく、水と炭酸ガスに寄っているから、どんな触媒を用いてもできないわけである。
触媒について補足しよう。
たとえば、オキシドールを塗布したときの、酸素の発生は次のような過程を経るものと考えられる
1)オキシドールの物理吸着
単に、オキシドールが肌にくっついた、という状態
2)オキシドールの化学吸着
オキシドールが肌にしみこんだ、という状態
3)オキシドールの肌上での分解反応
H2O2 → H2O + 1/2 O2
4)分解して生成した、H2OとO2の脱離
水と酸素が肌からの化学吸着から逃げて、泡となったという状態
これを工業触媒である、メタノール合成触媒について言及したのが、講義の内容である。ただ、メタノール合成触媒の場合は、ちょっと複雑。
1)CO, H2の物理吸着 physisorption
2)COは触媒表面の触媒活性点(活性中心ともいう)と結合を作って、OC-M(Mは活性点)のような吸着種をつくって、非解離吸着(化学吸着)する。 non-dissociative adsorption
3)H2は触媒表面の触媒活性点(活性中心ともいう)と結合を作って、H-M(Mは活性点)のような吸着種をつくって、解離吸着(化学吸着)する。つまり、水素のHがそれぞれ原子状に分解して、ヒドリドとなる。 dissociative adsorption
4)吸着したOC-Mが、ヒドリドとなった、H-MのHから攻撃を受けて、徐々に水素化され、HO-CH3-Mのようになる。
5)これが、脱離して、メタノールとなる。