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ひとりごと その5


2010年05月6日(木)
なぜ豆腐は溶けたり、固まったりするのか!
さて、弱アルカリ性温泉でも、カルシウムやマグネシウムがあると、豆腐は溶けない、逆にあると凝集あるいは凝固するという化学的な理由を考えよう。

豆腐を作るというか、固めるときにつかう、にがりの主成分は、塩化マグネシウムで少し硫酸マグネシウムなどが入っている。
マグネシウムやカルシウムは、塩水の主成分のナトリウムと違って、イオンとしては、2価の陽イオンとなって溶けている。
硫酸マグネシウムの硫酸イオンは2価の陰イオンだ。

一般に物質が凝集をおこすときに、あるトリガー(引き金)があって起こる。
これを急速凝集といい、そのトリガーになるのが電解質イオン、すなわち塩なのだ。
塩化ナトリウムとか、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどが該当する。
この急速凝集速度は、Schulze-Hardyの理論で説明できると言われている。
これは、一定時間内に凝集沈殿を起こすのに必要な1価、2価、3価の最低対イオン濃度をC1, C2, C3とすると、同じ凝集を得るための濃度は1価よりも、2価、3価の方が圧倒的に有利で、その濃度比は、1/C1:1/C2:1/C3=100:1.6:0.3となることが実験的に得られているのだ。
つまり、イオンの価数の6乗に反比例して凝集するというわけ。

ナトリウムイオンよりもマグネシウムイオンの方が同じ濃度でも6乗倍、つまり、64倍凝集させる力があるということなのだ!
人工にがりの方が天然にがりよりも、硫酸マグネシウム濃度が大きい理由は、1価の塩化物イオンClよりも2価の硫酸イオンの方がナトリウムとマグネシウムイオンの関係と同じように、64倍凝集させる力が強いということに依っている。

豆腐は豆乳のタンパク質の一部を熱等で変質させたあと、急速凝集させたものであり、プリンやゼリー、ヨーグルトとともにコロイドのひとつとなる。
その豆腐では、大豆の粉砕後、懸濁液を熱処理し、濾過して、豆乳を作るが、この段階で、タンパク質が変性して、タンパク質表面が活性になり、このとき、界面活性剤のタンパク質によって、泡が多くでる現象がある。ここに凝集剤として、にがりを加えるわけだ。

なお、塩化ナトリウムにも塩析といって、凝集させる力はあるにはある。
牛乳に多量に塩化ナトリウムを入れると凝集する。これがバター。
バターから塩化ナトリウムを抜くと、無塩バターになる。
このように、粒子=コロイドの分散、凝集という現象は、食品や温泉など生活に密接に結びついているって、わかった?

水の図は、塩化カリウム(KCl)の溶液をコーヒー牛乳に入れて、1時間置いたもの。
乳脂肪が凝集・分離して、浮上していることがわかる。
これも凝集現象。