ダイオキシンに関するひとりごと

ダイオキシンの発生についての疑問に答えて(1997/10)

> ダイオキシンの発生についての疑問

> ところで本当に食塩の混じったごみを焼却するとダイオキ

>シンが発生するものでしょうか。



このNews Groupで前に出た話題でもあります。

で、私信でこれについて尋ねてこられた方がおられましたので、私も私信で

返事しました。

そのメールを必要部分だけ転載しますので、文献をあたっていただければ

幸いです。

なお、これは私見ですが、食塩とごみだけ、というのは無理かもしれません。

何らかの触媒(Fe, Cu等)が必要なのではないでしょうか。

詳しくは下記の文献をごらんください。



−−−−−−−−ココカラ

「金属」(アグネ)1997/9号に、東北大学素材工学研究所の葛西、柴田、

早稲田による、reviewがありますので、ご参照ください。



HCl

 R. Addink, et al.

 Organohalogen Compd., 8 (1992) 205.

Cl2, NaCl

 N.H.Mahle, L.F.Whiting

 Chemosphere, 9 (1980) 693.

KCl

 R.Addink, et al.

 Chemosphere, 20 (1990) 1929.

CuCl2

 K.R.Bruce, et al.

 Waste Manage. Res. 11 (1991) 97.

CuCl

 B.K.Gullet et al.

 Waste Manage. Res. 8 (1990) 203.

FeCl3

 T.J.Nestrick et al.

 Chemosphere 16 (1987) 777.

など
TCDDの体内蓄積について答えて(1998/5)

> 医薬品の話のようですので、工業的レベルという前提になるかと

>思いますが、異性体の分離は確かに決して簡単ではないかも

>しれません。が、そもそも医薬品として使用可能なほど、TCDDの

>安全域って広いのでしょうか? 体組織中への蓄積はどうしましょう?



ダイオキシン=テトラクロロジベンゾパラジオキシンの異性

体分離はそんなに大変じゃないっす。光学異性体ならまだ

しも....

#巷でいわゆる、ダイオキシンは、TCDD以外のものも含めち

#ゃってますが、これは本来は誤りでは。

#化学屋と農学屋でちょっと違うのだ...(--#



また、人工的にしかできない、というわけではなくて、自然

発火の火事のときに、検出されたという報告もあります。

ポリ塩化ビニル由来かどうかもまだ決着していません。

#政治的には決着しているようですが... :p



最近の触媒化学の研究例では、石炭、鉄、食塩、空気だけの

存在下で、ポリ塩化ベンゾジオキシン類を合成できた、とい

うのがあって、いわゆる“ビニル”だけに気を取られていた

ら駄目ですね。実際、ビニルなんぞ燃やしたことのない、燃

焼炉で、巷のいわゆるダイオキシンが検出された、という報

告もありますので。

#文献を忘れた..fj.sci.chem で以前記事を出しましたの

#でお探し下さい。_o_



さて、

># 大量のTCDDを合成するプラントなんぞ

># およそ見たいとは思いませんが :-P



は、残念ながら、巷のいわゆるダイオキシン類なら、副生成

物として合成する現場を化学工場で見られるはずです。

#もちろん、反応器の中なので、それ自身を見ることはでき

#ないですが。 :-)



># 環境屋さん/分析化学屋さんの間では

>#「『現役』は分析するべからず」などと

># いわれていると聞きますし>TCDD



そんなもの分析したくないですね >> 化学屋

で、発生研究や除去研究は、モデル物質を使って重点的にや

って最期に本物で試すのですが、本物だとうまくいかない、

ってことが多いようです >> 難物だぞ >> ダイオキシン



関心のある向きは

触媒学会の研究発表会や、化学工学会、石油学会などの

著作物などをご参照下さい。

等価係数など(1998/5)

>===================

>・・・・・・ですから、ダイオキシン類の濃度は、

>特別な位置に四つ塩素がついた、一番毒性の

>強いダイオキシンと同じ毒性の強さになる濃度

>(TEQといいます)で表すことになっています。



この辺もいいのかどうか、まだ、議論の最中ですね。

つまり、蓄積性の毒物、毒性の現れ方の違うものを

同一の基準で見て良いのかどうか、です。

基準の見直しも考えられているようですね。



WWWをご覧になれる環境であれば、国際毒性等価係数

 (I-TEF) に関する記述

http://www.nicol.ac.jp/~honma/env/new_tef.html

参照。



なお、私が指摘するまでもなく、

厚生省の「ダイオキシンのリスクアセスメントに関

する研究班中間報告」中の「ダイオキシン類の毒性

等価係数(TEF)について 」に記述があります。

http://www.nihs.go.jp/mhw/dioxin/tef.html



>一兆分の五百グラムですから、安心とはいえない

>量になっています。



この単位は、時間(たとえば、日)で割るのでしょう

ね。すると、総摂取量を寿命で割ったのか、排泄され

る分はどう見越したのか、など、疑問が湧いてきます。

#でしょ? (^^)



>===================

>「みんなの地球」 オーム社  p83 より抜粋

>===================



最初のとっかかりにはいい本のように思いますが、き

ちんとした、discussionをするには、データが不足し

ているような気がします。



#News Groupにfj.sci.chemが入っていることにも注意 :-)



>この本によると、日本人は食物から、175pgの

>ダイオキシン類を摂取しており、



175 pg-TEQは、高山 幸司 et al., 食衛誌 32(6),

525-532 (1991)によります。原著を当たられるといい

と思います。



>WHOが定めている値は、50pgから500pgまで

>あるということです。



環境庁が設定した「健康リスク評価指針値 5 pg/kg/day」

も知っててください。(^^)



># しかし食物にダイオキシンが

># 入っているなんて驚きです。



勉強が全然足らないようですね。食物連鎖による、ダ

イオキシンの蓄積におかげで、人間にまわってくる、

とのことのようです。

環境ホルモンとしてのダイオキシン(1998/5)

まず、

“環境ホルモン”と“ダイオキシン”をごっちゃにし

て話題にしていますが、切り離して議論すべきだと私

は思います。

#どっかのスレッドでも混乱しているみたいですが。

ダイオキシンがたとえ、内分泌撹乱物質の一つだとし

ても、それ以前に、狭義のダイオキシンは、催奇形性

毒物であり、広義に解釈しても、蓄積性の毒物である

ことは間違いのないもののようです。



で、とにかくダイオキシンの話に焦点を絞りましょう。



>聞いてまいりました。

>外国に比べて日本は、大気のダイオキシンが10倍

>なそうです。で、データは、環境庁と自分の研究室の

>ものを元にしているようです。



↓下のデータは環境庁のものですが、もし研究室のが

あったら、是非ご紹介くださいとお伝え下さい。



>そこで、データは古いですがこちらをご覧ください。

><諸外国と我が国の一般環境大気中のダイオキシン類濃度>

>http://www.asahi-net.or.jp/~xj6t-tkd/env/f_guide/dxnex1.html#ex1-7 



このデータは調査方法が違うので比較するのは難しい

のですが、仮に、日本の大気中のダイオキシンが10

倍も多いとしても、呼吸によって吸収される分よりも

地面に落ちて、食物連鎖で吸収される方が経路として

はメインでしょう。



>最近の東京のものはこちらです。

><東京都内大気中のダイオキシン類の調査結果

>(97/11/26 東京都環境保全局)>

>http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/1997/11/607BQ000.HTM



この手のデータの問題点は、実際にどの化合物がどの

程度多いのか、がわからない点です。前にも述べまし

たが、の毒性等価係数というオブラートにつつんでし

まっていいのかどうか。

#まさか、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾパラジオキ

#シンがいっぱい、なんてことはないと思いますが。



さて、ダイオキシンを知る上できっかけとなるものに、

「母乳」があります。



埼玉県が実施した母乳中のダイオキシン調査(平成10年

3月発表)によると、平均15 pg/g (脂肪)で、これによ

ると、乳児は 1日 72 pg/kg ダイオキシンを摂取し

ていることになる。これは、厚生省が一生摂取しても

安全としている成人の1日の許容量 10 pg/kgの7倍に

あたるが、母乳の摂取が最長でも1年であるため、蓄

積性というだけで、高濃度摂取は問題ないとすれば、

問題ないらしいです。4/7発表の厚生省の中間報告でも

同じような数値です。

#ここでも、どの化合物でも本当にそうなのか、とい

#う疑問はつきまとうわけです。



ですが、1993年4月20日、朝日新聞朝刊第一面のトップ

で報じられた、日本の母親の母乳中に含まれるダイオ

キシン含量がヨーロッパ諸国に基準に比べて10 - 200

倍も高い というのは、最近のデータからは裏付けが

ないようです。ただ、あの報道によって、「しのびよ

る人体汚染」としてのダイオキシンの恐怖がマスコミ

によって繰り返し叫ばれ、母乳か人工乳かという問題

にすり替わった頃がありましたね。



ドイツも、1995年には、それまで続けていた、「生後

4ケ月以降は母乳から人工乳に切り替える」という指

導方針を撤廃し、母乳をすすめています。



現在は、1984年にWHOが出した勧告

「母乳中にはダイオキシン類及びPCBが含まれてい

るが、母乳栄養には乳幼児の健康と発育に関する利点

を示す明確な根拠があることから、母乳栄養を奨励し

推進すべきである。」

が生きていると私は了解しています。



参考までに。

1986-89年世界保健機関(WHO)調査

ドイツ 28 - 37 pg/g (脂肪)

カナダ 16 - 23

くわしくは、

宮田秀明, 環境化学 vol.1, 275 (1991).



また、人工乳の元である、牛乳にしても、ダイオキ

シンの濃度は母乳よりも高いという報告(

Ruth Lawrence博士の「母乳哺育ガイドブック」)

もあります。



>う〜ん、なるほど、勉強になります。



なお、

私が指摘したのは、環境ホルモンではなくと、毒物一

般の話に拡大するのは止めたほうがよくて、それを議

論するんだったら、サブジェクトを変えましょう!

と言ったんであって、環境ホルモンを議論しよう、っ

て言ったわけではないです。



仮に、環境ホルモンについて議論しようと思っても、

別記事にも指摘しましたが、内分泌撹乱物質の定義す

らしっかりしていない状況で、議論は難しいですね。

というわけで、ご期待にそえそうもありません。



思えば、1962年 Rachel Carson「Silent Spring

(沈黙の春)」には、農薬が内分泌系のバランスを狂わ

すかもしれない と書いてありましたね。

非常に先駆的な著書でした。日本は公害問題に手をつ

けたばかりの頃でした。

#私自身は、1970年頃読みました。

新潮文庫から日本語訳が出ています。

環境ホルモンについて答えて(1998/5)

> 環境ホルモンというのは、すでにいくつか具体的

>物質名があがっていると思います。  私が記憶しているのは

>ビスフェノールAとダイオキシンですが、それ以外にも

>数種類の具体的な物質名があがっています。 



内分泌撹乱化学物質(endocrine disruptors)とは、「生体

の恒常性、生殖、発生あるいは行動に関与する種々の生体

内ホルモンの合成、貯蔵、分泌、体内輸送、結合、そして

そのホルモン作用そのもの、あるいはクリアランス、など

の諸過程を阻害する性質を持つ外来性の物質の総称」です。

医学的には、「内分泌障害性化学物質」endocrine

disrupting chemicalsと言われているようです。

さて、内分泌撹乱物質として疑われている化学物質は、国や

調査している機関、あるいは学者や研究者によって異なりま

す。環境庁の「外因性内分泌撹乱物質問題に関する研究班」

の中間綾告では、疑わしい化学物質として「失われし未来」

(1996年3月米国 シーア・コルボーンら `Our Stolen Future')

に紹介された63物質(群)とその類縁物質3物質 さらに、

トリフェニルスズが加わり、67物質(群)と、重金属の、Cd

Pb, Hgがあげられています。トリフェニルスズが加わった

理由は、イボニシの雌のインポセックスの原因物質とされる

船舶塗料の原料物質だったからです。



WWWがご覧になれる環境であれば、

三浦さんちのホームページ「環境ホルモン問題について」

http://www.fsinet.or.jp/~miura/endocrin.htm

に物質名が掲載されています。あるいは、

http://www.nihs.go.jp/hse/environ/edsubs/substancesnew.html

は、詳細情報にリンクされていて有用です。



>これらに

>ホルモンの撹乱作用等、の作用があるらしい、ということは

>動物実験等からわかっています。 したがって、それを

>原因とすると思われる症状(生殖器関係の異常とか)が

>貝などに見つかったとき、それらの物質のせいではないか、

>と推測するのは十分科学的だと思いますし、またそういう

>貝や魚や鳥などの住んでいた水からやはり環境ホルモンが

>検出されています。



動物実験による検証は現在行われているところで、実際の

系で原因物質を特定するのはなかなか難しいでしょうね。

「内分泌系に作用する化学物質に関する調査研究」報告書

(平成9年6月(社)日本化学工業協会(社)日本化学物

質安全・情報センター)を見ても、特定できるのは、非常

に少ないです。

なお、環境ホルモンが検出されたという表現はちょっと変

です。(^^;

原因が特定されて初めて、環境ホルモンというありがたく

ない称号をつけることができるのですから。#本末転倒



たとえば、東京都が摘発した、スヌーピーS/N茶碗

(ポリカーボネート製)などは、食品衛生法違反なので

話はわかりやすいですが、内分泌撹乱物質で抑制しない

いけない!という話になると、ppt (pg/cm3) オーダー

での規制が必要になりますので、通常の毒物のような、

ppm, ppbオーダーの規制と比べて、方法など全く違って

くるのでしょう。

pptオーダーで問題であるとすると分析手段が限られる

かあるいは不可能な状況となります。



つまり、昨今の環境ホルモン問題は、いわゆる通常の公害

問題で、ある種の化学物質の規制という解決手段をとれば

よいのと根本的に異なり、内分泌撹乱物質を撤廃するしか

方法はない、ということになります。



とすると、物質名の特定には非常に慎重にならざるを得な

くなります。

たとえば、Cdカドミウム Pb鉛 Hg水銀が特定されたとす

ると、その影響ははかりしれない...



ですので、研究者は、どうしても慎重にならざるを得ない

のではないかと推察しています。ですから、“疑わしい”

という表現が多く使われています。

#私が“大騒ぎ”に否定的なのは、“祭りの後”に、大変

#な状況が予想されるからです。(--;



もちろん、議論したりするのは非常に有用だと思っていま

す。

塩化ビニルとの関係に答えて(1998/5)

>私はダイオキシンを減らすために塩素を使った化合物の総領規制

>ぐらいやってもいいと思います。買い物に昔は買い物袋とかつかって

>たし包装紙に新聞紙とかつかってました。

>過剰包装はやめて消費者も多少見栄えは悪くてもそれを買うように

>すべきです。みんなが昭和40年前半や昭和30年代くらいの消費水準

>(すべてとはいいませんが)にもどせば大分改善すると思います。



念のため、ポリ塩化ビニルPVCの用途は、製造150万トン/年中、

建材PVC板: 約5割、フィルム類:約2割で、家庭用品の容器

などには、5%程度です。卵パックに従来使われていましたが、

現在では、PETポリエチレンテレフタレートや、ポリスチレン

等が用いられています。

ですので、現在最も多く使われているのは、建材関係です。



で、スーパーの買い物袋は、今はポリ塩化ビニルではなくて、

ポリオレフィン系ではないか、と思います。(未確認)



なお、ポリ塩化ビニルのリサイクルも始まっています。

プラスチックというと、PET系が有名ですが...



これは余談ですが、

私は家庭には今やPVCよりも他のプラスチックが多くなってい

るにも関わらず、依然として家庭用焼却器から多くのダイオキ

シンが出る状況が変わらないとしたならば、PVCだけが犯人と

いうわけではなくて、NaClと炭素物質(プラスチック)と何ら

かの触媒により、ダイオキシン類が合成されており、むしろそ

っちがメインのルートではないか、という感じを持っているの

です。



とすれば、あまりにもポリ塩化ビニルにだけ、目がいってい

るような状態も危険かな、と思っています。つまり、PVCの

代わりに他のプラスチックを使ってもいいのか、ということ。



そういう意味では、昨今のCO2問題に対処する、買い物袋の復

活は大歓迎ですね。あと、あのパック食品もなんとかしない

といけないような気がしています。

ダイオキシン問題の考え方(1998/5)

>ダイオキシンに対する環境面での法規制が始まったのは1997年からですし

(中略)

>いるダイオキシンに対する「規制」とはなんでしょうか?



ご存知のように、除草剤「2,4,5-T」のことです。

これが、自然で分解すると、2,3,7,8-テトラクロロジベン

ゾパラジオキシンになりますので、確か、1970年代前半

に規制されました。

それで、“狭義の”と付けたわけですが、かなり曖昧な表

現でした。お詫びします。

なお、PCBはすでに、生産禁止になっており、所有も限定

されています。



>ダイオキシンのように安定した物質の場合、大気中で減少していたとしても、

(中略)

>れる現状では、大気中の濃度が減少したというのは必ずしも喜ぶべきことで

>はないかもしれませんね。



私も大気中よりも、落ちて土壌から食物連鎖で吸収される

方を重視しています。

が、母乳中のダイオキシン類の長期低下傾向を見ると、当

該除草剤の使用中止がかなり効いたのではないか、とも考

えられますが、因果関係は不明です。



なお、私は決して楽観視しているわけではないです。



ダイオキシン問題を考えるとき、

(1)総括的に論じることの愚

私は、現在使われている「広義」の「ダイオキシン類」と

いって、個々の化合物を高々一つの性質だけで、関連づけ

て、訳をわからなくしている現状が変だと思っています。

成分変化の意味するところが闇の中です。

(2)発生経路の正確な把握

言われているポリ塩化ビニルは本当に重要な発生源なんで

しょうか? もし、あの塩素が、食塩の塩素由来だったら

どうします? 早急な経路究明が必要です。

(3)焼却しないで埋めることの愚

灰色犯人のポリ塩化ビニルや他の塩素含有プラスチックを

埋めるという処理法には疑問です。それらプラスチックは、

新たなプラスチックを製造しないために、リサイクルに回

し、その間に代替品などを検討すべきだと思います。



>ダイオキシンが環境中でなかなか壊れない物質であり、また毎年環境中に追

>加放出されつつあることを考えれば、環境中のダイオキシンの総量は増加し

>つつある、つまりダイオキシンによる環境汚染は進行しつつあると私は判断

>します。



ダイオキシンが環境中でなかなか壊れないかどうかはまだ

正確には結論が出ていないと思います。



>ついでにいうと、ダイオキシンの測定は1検体数十万円もかかるものなので、

>あまりデータを見て云々にこだわると、測定にどんどん予算が食われてしま

>います。また住民運動などがこの問題について全く発言できなくなってしま

>います。これでは健全な市民社会とはいえませんね。この点でも、何らかの

>割り切りは必要です。



測定料は、どんどん安くなるはずです。

現在は測定できるところが少ないですので、高いだけ。

大学の研究室なら多くのところで可能なはずです。



#私は専門でないのでこの辺りは専門家にお任せします。



(補足)



ダイオキシン類と言っても、構造性質などが違う化合物

の総称です。その一つ一つが全て、蓄積性の毒性を示す

のでしょうか? 答えは「不明」です。

現在いろんな毒物がありますが、規制は本来その化合物

一つ一つに対してされるべきなのに、なぜ、ダイオキシ

ンでは、「類」となって、総称的なんでしょうか?

そこをお考え頂きたいのです。

胎児へダイオキシンへの影響について(1998/5)

>が、その前に妊娠中の母体から胎児へダイオキシンへの影響はどうなので

>しょうか?



これが最初の問題だったことに気が付いておられないとは

少々びっくりしました。



ご存知のように、除草剤「2,4,5-T」や、米軍が使ったと

いう枯葉剤が、自然で分解すると、2,3,7,8-テトラクロ

ロジベンゾパラジオキシンになります。

これが、催奇形性物質だったので、問題になったのです。



良い機会ですので、ちょっと振り返ってみましょう。

 1957年のことですので、すでに、40年も前です。米国

ジョージア州で鶏やその雛が数百万羽突然死する事件が発

生しました。鳥の餌に混入された油に微量含まれていたダ

イオキシンのためであることが判明しました。

また1958年にはダイオキシンの動物に対する急性毒性に関

して、ドイツの学者が初めて報告しています。

 一方、ベトナム戦争では、米軍は、ベトコンゲリラの活

動拠点となっていたジャングルを枯らすために7,200万Lの

除草剤 「エージェント・オレンジ」= 2,4-D をばらま

きましたが、その中に170kgもの量のダイオキシンが含有さ

れていました。戦後、米軍の行った「枯葉作戦」が、ベト

ナム現地人やこの作戦にかかわった米軍兵士の子孫に大き

な悪影響を与えたことが判明しました。1981年生のシャム

双生児「ベトちゃん・ドクちゃん」の分離手術を行ったベ

トナムホー・チミン市のツーズー病院院長フォン氏によれ

ばダイオキシンが散布された1960年代には死産、流産が増

え、散布中止後はそれに代わって先天異常(奇形)や泡状

奇胎、ガンの増加が続いたそうです。



●南ベトナムベンチェ省で行われた調査結果

 地域流産の発生率 2.2-2.7倍 増加

 奇形児の発生率  12.7倍 増加

●南ベトナムの胞状奇胎(ブドウ子、がんに高率で移行す

る)の発生率

 1979年には71年の約6倍に達した。

●ベトナムの枯葉剤散布地域の先天奇形発生率

 日本の2.1-3.4倍



「今、そこにある恐怖」より

http://www2.nerv.ne.jp/~union/yume/resource/dioxine/index.html

「胎児からの黙示」綿貫礼子 世界書院(1986) p56 参照

「ダイオキシン汚染列島 日本への警告」ダイオキシン問

題を考える会・Dネット かんき出版(1997)p93 参照



日本では:

 1969年、「カネミ油症」事件

カネミ精油工場が1968年2月はじめに製造した米ヌカ油に、

脱臭工程の熱媒体として使用されていた「カネクロール400」

(PCB)が混入したことが原因で引き起こされたもの。

約2,000人の認定患者:

 典型的な急性中毒症状である末梢神経症状(しびれ、脱

 力など)、ホルモン異常、肝・腎臓障害など

 黒いにきび(クロルアクネ)

原因物質の推定:ダイベンゾフラン(ダイオキシン類)



などなど、多数の例があります。

是非、web pageなどを開いて参考になさってください。



http://www.nicol.ac.jp/~honma/env/diox_book.html

http://www.eic.or.jp/eanet/dioxin/

などなど



(補足)

>ダイオキシンは脂肪に溶けやすいと聞いたような気がします。



ですので、母乳に蓄積し、高い濃度のダイオキシン類が検出され

ています。

以下、WWWでご覧になれる環境であれば、各URLをご参照下さい。



平成9年度厚生科学研究「母乳中のダイオキシン類に関する調査」

中間報告

http://www.mhw.go.jp/search/docj/houdou/1004/h0407-1.html

によれば、母乳中のダイオキシン類の濃度は、

1回目: 脂肪1g当たり17.4pg(68検体中)

2回目: 脂肪1g当たり15.2pg(43検体中)



かといって、ダイオキシン類の毒性が、蓄積性に依存する部分のみ、

ということであれば、母親とのふれあいなどを考えた場合、短期間

の母乳摂取はむしろ、すすめるべきではないか、と思っています。

WHOや厚生省の見解と同じです。



>ミルクは脱脂粉乳+魚油+植物油だけど

>やっぱり汚染されているような気がするのは私だけ?



牛乳について:

ごみ焼却場に近い牧場の牛の生乳から高濃度のダイオキシン類が

検出されていたりします...

http://www2.mainichi.co.jp/old-news/199804/03/0403m233-400.html

http://jdc.lin.go.jp/A980402.htm



北海道は、6/3、ダイオキシン、道産乳は影響なし(国の基

準の1割以下)と、発表しています。

http://www.hokkaido-np.co.jp/News/general/0031/text/980604.9249.shtml





ニュースステーションに関するコメント(1999/2)

>ニュースステーションが報じたダイオキシン汚染作物

>のうち、非常に高い濃度のダイオキシンが検出されたのは

>実は野菜ではなかった。



野菜でも大根の葉っぱや人参のについての分析なら、多く

の人はそれを食べないので、摂取することは少ないのです

が、そのことを指しているのかな、と思ったのですが。



JA所沢が発表したデータの問題点は、TEQ(毒性等価量)

算出にあたって、コプラナーPCBをカウントしていない点

です。

#その分、低く見積もられている

その点、環境総合研究所のデータはそれをカウントしてい

るだけ、まし、ですが、いかんせんサンプル数が少ないよ

うで、個人レベルでの研究には、サンプルの採取などを含

めて、必然的に限界があろうと思います。

また、ダイオキシン類のTEQ算出にあたって引用される、

TEF毒性等価係数は研究の進展によって変化しますので、

発表すべきデータは測定されたすべてのダイオキシン類の

個々の濃度を明らかにしないと後々信頼できるデータとし

て残らないと思います。



数値を平均的に見るのではなく、非常に高い数値を出す、

サンプルがあったということに、目を向けるべきでしょう。

JA所沢のデータですら、高い値がありましたね



>という報道がありましたが、単に野菜ではないと

>言っただけでそれが何だかは報じませんでした。



ほうれん草などの葉菜類でないという意味だと思ったので

すが...



>この報道を見て、私がスーパーの経営者だったら

>本日以降所沢産(埼玉産)のものは、野菜も含めて、

>全ての食物の販売を停止します。

>そういう印象をもちました。



御意。

所沢の問題は日本全体の問題なんです。

人が人として生きる基本的なこと、自分で作って自分で食

べることが、脅かされているんだ、ということをもっと、

真摯に考えたいですね。

母乳の問題の本質も、ほ乳類が自分の乳で育てるという、

本能的行動が脅かされているということ...



>テレビ朝日をさしたつもりが、所沢農家にとって

>かえってアダになるかもしれません。



JA所沢の発表で、行政が一安心とかのんきなことを言っ

ているようでは、農家は浮かばれないと思います。

レイチェルカーソン「沈黙の春」は日本のあちこちに、起

こるのでは、と思います。

つづき(1999/2)

> もともと、野菜ってのは、食物連鎖による濃縮が進んでいないから、ダイ

>オキシン濃度が低い。それが倍になったとしても、果たしてダイオキシンの

>総摂取量をどの程度高めるものなのか疑問です。



というか脂肪分の非常に少ない野菜にこれだけ多くのダ

イオキシンが存在している、というのが研究者としては

驚きです。

また、魚や牛乳、卵などに含まれるダイオキシン類とは

その中身、つまり、個々の物質の分布の違いが予想され

ますので、これからはできるだけ個々の物質そのものの

数値を出して頂きたいと思います。

TEF毒性等価係数は研究の進展に伴って変化(多くはより

深刻な方へ)していますので、たとえTEQ(毒性等価量)

で出されても、後々データとして使えない可能性もあり

ます。



> 大体、「1グラムあたり3.6ピコグラム」という数値自体、信用できな

>いと思います。

> なぜなら、ニュースステーション自体が、分析結果の詳細について、埼玉

>の農民からの公表要求をいまだに無視しているからです。



公表しないから信用できない、というのは変な理屈です。

JA所沢が信用できるのか、とか、国の報告は、とか、

信用できないところが多くなってしまいます。

問題の本質は数値にもありますが、サンプル数の少ない

ところで、安心、危険、とか判断することでしょう。

何に基づいての安心、危険なのでしょうか、ということ

をはっきりと認識して、どう対処していくべきか、を議

論していった方が、建設的だと思います。



> センセーショナルに報道して、視聴率を稼ごう、と狙った悪徳ニュース番

>組に、我々は振り回されているだけではないでしょうか?彼らも、商売です

>し。



知らなかったデータが折角我々の前に公表されたのです

から、たとえ悪徳ニュース番組でも、それなりの効果が

あったと見ています。

あちこちに書いていますので恐縮ですが、(^^;

「人が食べ物を大地で作ってそれを食べる」、

というのは基本的な生活様式であって、それが脅かされ

ていることに怒りを覚えませんか?

さらに、つづき(1999/2)

> 要は、総摂取量がどの程度になるかを考慮しなければ、”将来極めて深刻

>な被害を生む”かどうか、議論できるはずがないということです。



総摂取量の議論ではないはずです。

少なくともここのスレッドは。



次の点に目を向けていただきたいと思います。

野菜のダイオキシン量が高いというのは、焼却灰が

葉っぱについたせいですが、土壌と違って、野菜は

せいぜい数ヶ月のオーダーでしか暴露されていない

という点です。

従って、野菜が植えられていた地域の、せいぜいこ

の数ヶ月のダイオキシン量を意味しているわけで、

そこに住む人も同じように焼却灰を浴びている可能

性もあります。

魚なんかと比べて極めて低いのは脂質が著しく少な

くて蓄積性ではないからです。

蓄積性ではなくて、高い数値である、ということが

問題なのです。

住人や野菜農家の健康を考えて欲しいわけです。

で、私があちこちに書いているように、

「人が作物を育ててそれを食べる」

という当たり前のことが脅かされているわけです。

さらに、つづき(1999/2)

>タバコの葉っぱはなんでダイオキシンが多いんでしょう?



葉っぱに含まれたダイオキシンではないでしょう。



たぶんこれが最初の報告だと思いますが、R.R.Bumbらによる

報告(Science, vol.210, pp.385 - 390)では、燃焼による

ダイオキシン類の発生について、煙草で試験しています。

TCDD(テトラクロロジベンゾパラジオキシン)類は検出され

ていないものの、その他のクロロジベンゾパラジオキシン類

は検出された、と数値(0.05 ppb程度)を上げています。

このほか、報告例があるようですが、私自身はそれ以上の、

情報を持っていません。_o_



>狭山のお茶ならもっとやばい、ダイキオキシンは洗うと少しはとれるのかな?



ダイオキシン類は疎水性で、水洗いでは落ちません。ある意

味、油と一緒ですので。

さらに、つづく(1999/3)

>不思議なのは、これだけ(国会への参考人招致)まで騒がれているのに、問題

>のお茶の葉その他のデータが統計的資料として不十分だと言うような論評が聞

>こえてこないことです。



#問題のすり替えになってしまい恐縮ですが、現状をちょっと。



ダイオキシン分析の現状は、まだまだ厳しいです。

厳しいというのは、日本で指で数えるところだけしか分析できない

からです。ダイオキシン分析はすでに10年以上前に日本分析化学

会を中心に前処理方法などが確立しましたが、それはかなり大変な

作業です。

たとえば、我々がやろうとすると、1つの分析試料について、前処

理だけで数ヶ月を費やしてしまいます。もちろん、複数のサンプル

を同時に処理可能ですが、土壌、野菜、魚などで、その前処理方法

が異なり、たとえ土壌のみの試料があったとしても、非常に多くの

分かれ道があって、まあ、早く言えば、大変です。

ですので、民間の分析業者に頼むと、1サンプル数十万円〜百万円

ほど、かかってしまうのは、この前処理のためです。

サンプル数を増やす努力に対して、この分析費用が厚い壁になって

たちはだかっています。



>別記事でも書きましたが、たかがホウレン草3束や一袋のお茶の葉を二山に分

>けでその中のダイオキシン含有量を調べるような調査では、所沢市のような大

>きな地域の統計的疫学調査のデータとしては不完全です。統計的な信頼性を期

>待するためには、少なくとも数十のデータ、それも対象地域内に分散したデー

>タが必要だと思います。



というわけで、ダイオキシンを研究している人は分散型のデータを

出したいと思っていますが、まだまだ大きな組織、たとえば、国と

かが率先して行わないと、こういう分散型のデータは得られないの

が現状です。

#費用ともうひとつ、分析検体の収集の苦労...(;_;)

なお、各種データでコプラナーPCBなどが入っていない場合があるの

は、その分析にはより多くの時間と費用がかかるからだと思います。



ただ、分析精度があがって、前処理がより簡単になれば、もっとも

っと多数の試料を早く、安価に分析できるようになるかもしれませ

ん。そのためには、現在の分析法指針を改めないといけないかもし

れません。



WWWがご覧になれる環境で有れば、ダイオキシン分析機関は

日報のサイト

http://www.nippo.co.jp/nippo_i.htm

中の

http://www.nippo.co.jp/dxkikan.htm

をご覧下さい。



蛇足ながら、問題の煎茶の分析ですが、

http://www.pref.saitama.jp/A09/BZ00/siryo0218.htm

によると、

------------

測定試料:煎茶(一番茶) 

採取状況:所沢市内の製茶業者から直接提供 

    (所沢市内で栽培・製造されているもの) 

分析結果:ダイオキシン類(PCDD+ PCDF)について 

    3.6pg-TEQ/g(湿重量当たり) 

    3.8pg-TEQ/g(湿重量当たり) 

------------

とあります。

#2サンプルしかないのか....

おむつを燃やすとダイオキシン(1999/4)

>あれ?おむつに塩素化合物って使われてましたか?

>燃やせば、何でもダイオキシンがでるわけではないのですが。



ダイオキシンがダイオキシン類の総称とすれば、ダイオキシ

ンの中には燃やすだけで出るものもあります。

これらは非常に少ないですから、問題はないといえばないの

ですが。

R.R.Bumbらによる報告(Science, vol.210, pp.385 - 390)

では、燃焼によるダイオキシン類の発生について、ステーキ

や煙草で試験していて、実際に出ています。 (^^)

これが恐らく最初の報告で、あといろいろ調べればあるはず

です。_o_



なお、非常に最近の研究例ですが、食塩+土+重金属が微量+

水蒸気の条件で、300℃くらいにすると、塩化水素が出るとい

う話もありますから、必ずしも紙だから大丈夫ということで

もないかもしれません。

 

>これと、ダイオキシンとどういう関係があるのでしょうか?

>ひ弱になる以前に重病になると思いますが。



う〜む。なぜ、ひ弱になる以前に重病になるかしらん (?_?)



>野菜にダイオキシンがつくといっても影響が少ないと思いますが。

>ダイオキシンは脂肪類につきやすいですよね。葉っぱものの野菜は

>つきにくいですよね。これじゃ、所沢の風評被害と同じレベルだと

>思います。それよりダイオキシンより、農薬の方が影響が大きいと

>思いますが。



ほうれん草についたダイオキシンは焼却灰がついたものです

が、水洗い程度で落ちるものも、また落ちないものもあるよ

うです。

農薬に言及するのはかまわないですが、なんか論点がずれて

いってしまっているような気がします。

母乳中のダイオキシンに関するコメント(1999/7)

母乳のダイオキシンについて、技術的な課題を述べておきます。

(これまでfj.soc.environmentで投稿した内容と一緒)。

1)ほ乳類の一員である人間が自然の営みである、母乳を与える

行動が脅かされることが問題であり、それは1973年(昭和48)に農

薬(除草剤)245T等の使用禁止にしたことで、一定の成果は出て

いるが、今度数十年単位で蓄積されるであろう、燃焼反応等から

放出されるダイオキシン類の禁止が必要である。そのための、技

術的要件として、すでに放出され汚染された土壌の回復技術、ま

た、金属精錬などから放出されるダイオキシン類の抑止技術の早

急な実用化をはかること。

2)PCBを含めたダイオキシン類の個々の毒性に関して、十把一括

りで扱わないで、個々のchemicalの毒性について、整理し、一般

の化学品(たとえば、シアン化カリウムとかエタノールとか)と

同様の毒性基準をつくること。

3)動物油脂中に蓄積性する傾向のあるダイオキシン類のメイン

な汚染ルートの解明。魚に多くのダイオキシン類が蓄積されてい

るという報告からそのルートが重要視されているが、牛肉、豚肉

等からの汚染・蓄積は考えられないか。つまり、肉類からの汚染

ルートの方が母乳に蓄積されやすいということはないのだろうか、

を明確にすること。



なお、下記のweb site中にもありますように、焼却灰のダイオキ

シンから母乳に取り込まれる経路は考えにくいと思います。





蛇足です。



母乳のダイオキシンに関する調査報告については、私が知ってい

るのは、web上に公開されているものしかありませんが、下記の

ところをご参照下さい。



Environment[武田尚志さん]の

母乳に含まれるダイオキシン問題について

http://www.asahi-net.or.jp/~xj6t-tkd/env/BreastMilk.html



厚生省・平成9年度厚生科学研究「母乳中のダイオキシン類に関

する調査」中間報告

http://www.mhw.go.jp/houdou/1004/h0407-1.html



東京都・10年度母乳中及び食品からのダイオキシン類調査結果

http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/1998/12/608C9100.HTM



埼玉新聞・ダイオキシン県内母乳調査 99/06/17

http://www.saitama-np.co.jp/main/box/kankyo/9906/kankyo21.htm

など埼玉新聞には多数記事あり。

http://www.saitama-np.co.jp/main/box/box.htm

の「環境」から各月の見出しをたどってください。



母乳育児への誘い

http://www.osk.3web.ne.jp/~bonikuji/



母乳とは直接関係ありませんが、母親になる方に是非読んで

頂きたい本があります。レイチェルカーソン女史の「沈黙の

春」(こっちは有名ですからご存知だと思います)と、

中村悟郎「母は枯葉剤を浴びた」(新潮文庫)1983年(昭和58)

発行(ISBN 4-10-131701-1)

です。後者は、ベトナムとベトナム帰還兵の生んだ奇形児に

関する詳細なルポです。この本の巻末に、枯葉剤作戦(エー

ジェント・オレンジ)に関する書物のリストもあります。

暴露後の影響について(1999/8)

>2,3,7,8-TCDDは、DES(ジエチルスチルベスチロール:エストロゲン様の活性

>をもつ)とは異なり、むしろ、エストロゲン代謝酵素を誘導するために

>エストロゲンを減少させ、これによりホルモンバランスがくずれるわけですが、

>(以上、出典「化学別冊・環境ホルモン&ダイオキシン」化学同人、1998年)

>これが、DESのような、(胎児あるいは新生児の段階での暴露による成人後の

>生殖毒性)を持つかどうかの判断がつかないので、

>これについて何か説がありますでしょうか、識者の方、お教え願います。

>

>また、環境ホルモンの疑いがあるとして、環境庁による環境調査の対象となって

>いる物質(群)(これらの中に、ダイオキシン類も含まれます)の、

>二世代繁殖毒性試験等の結果等についての情報をお持ちで、公開可能でしたら、

>お教えいただけませんでしょうか。または、どこを調べろ、との御指示を

>頂けませんでしょうか。



○○さんが、既にご存知であったら、大変失礼とは存じます (_ _;)

が、知らない方もあるかもしれませんので、ご紹介します。



東京都立衛生研究所のweb page

http://www.tokyo-eiken.go.jp/

中に

「内分泌かく乱作用が疑われる化学物質の生体影響データ集」

http://www.tokyo-eiken.go.jp/edcs/edcs_index.html

があり、たとえば、その中のダイオキシンを調べると、

-------

F.J. Murray, F.A. Smith, K.D. Nitschke, C.G. Humiston, 

R.J. Kociba,and B.A. Schwetz,

`Three-generation reproduction study of rats given 

2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD) in the diet'

Toxicol Applied Pharmacol., vol.50, pp.241-52 (1979).

-------

というような文献にあたります。これはたとえです (^^)

ダイオキシン問題の考え方(1999/7)

母乳のダイオキシン濃度が減少している理由は、前にも述べたように、

農薬などの散布中止によるところが大きいと言われています。



また、ダイオキシン類は人間が火を使うようになって以来、一緒に暮

らしているものとも言えるでしょう。魚を焼いたり、肉を焼いても微

量でてきますから。



何度も述べてますが、ダイオキシン類を特別のものと見ることは決し

てないのです。これまでの、公害と同じ視点で見ること、これが、冷

静にデータを見るポイントだと思います。

NOx, SOxあるいは、CO, CO2などと同じ土俵で見て、猛毒だから、と

見方を変える必要はないでしょう。

脂溶性だから、というのは、他の農薬、たとえば、DDTとかいろんな

ものと同じで、全く排出されないってことはないはずです。

たとえば、母乳中のダイオキシン濃度が下がっているとか、血液中の

ダイオキシン濃度の男女のばらつきは測定誤差範囲内にあるとか、と

いうことは、溜まっていくだけと仮定したら、変です。:)



母乳には脂肪分が多いから、それに比例して、ダイオキシン類の濃度

も高いのです。母乳の脂肪分は、牛乳よりも少ないですが、それでも

2〜3 %程度ありますから。

#血液にそんなに脂肪はないですよね。:)

#母乳は乳脂肪分が水に分散したコロイドです



>まれに漏れて出て行くルートとして、皮膚代謝経路と母乳が挙げられます。

>人間だけに起こることではありません。



この辺りのデータの出処をお聞きしたいところですが...

何を読まれましたか? (^^)



>人の母乳の濃度が他の生物に比べて濃縮が進んでいる恐れがあります。

>毒物、食らうか?劇物、食らうか?の選択だと考えています。



単位脂肪当たりのダイオキシン類含有量を考えて欲しいと思います

し、草食性の牛の牛乳と雑食性の人の母乳を比較して論じても、仕

方ありません。また、草食性の動物を食する人と、肉食性の動物を

食する人にも摂取量に差がでてきます。

“人の母乳の濃度が他の生物に比べて濃縮が進んでいる恐れ”と言

うことはすでに、冷静な視点を失っているように感じます。



>私がしきりに訴えているアナウンスは現実の認識を持って欲しいと言うことなんで

(以下、略します)



勉強するのはいいのですが、昨今のダイオキシン類の騒動を見ると、

みんながみんなダイオキシン専門家となっています。

私は、専門家ではありませんが、物理化学の立場から、ダイオキシン

問題を見守っていますし、学会のそういう委員でもあります。

データを見るときには、

1)データの分析手法の他に、前処理のことなどを気にすること。

2)専門家の発言で、その専門家の専門外、たとえば、宮田さんだっ

たら、母乳とアトピーの関係は専門外のはず :) ですので、そういう

発言は鵜呑みにしないこと。

以上が、肝心です。



彼らは決して嘘をつこうとしているわけではないと思いますが、あま

りにもデータが少ない状況でどう客観的に見るか、という視点に甘い

ところがあるのでは、と思います。



諸外国に比べて10倍も母乳中のダイオキシン類量がある、という講

演もありましたが、その根拠となるデータとは何でしょう。(^^;



以前、合成界面活性剤を追放しよう! という会合でコメントしたこ

とがあり、その内容は「確かに、合成界面活性剤はよくないが、それ

を石鹸に変えたところで、抜本的な解決にはならない、むしろ、界面

活性剤が本当に必要なときにだけ使うべきだ」でした。

石鹸が全く無害ってなわけではないでしょう。(^^)



ダイオキシンの問題だって、ポリ塩化ビニルを止めて、たとえばポリ

オレフィンに変えたところで、今度は石油枯渇問題とか、CO2問題を深

刻にすることになるでしょう。

#CHClをCH2に変えたときの単位重量当たりのC含有量を考えればわか

#ります。



いずれにせよ、何度も述べますが、ダイオキシン問題を特別視するこ

とは代えって、デマや嘘が蔓延する土壌を作ってしまいます。

これまでの農薬に対する厳しい目、公害問題に対する冷静な目、でデ

ータを見、専門家の意見を聞く、という姿勢が必要に思います。



環境ホルモン問題も同じでしょう。

センセーショナルな研究は注目され、地道な研究は顧みられない傾向

があるのはやむを得ないとしても、やっぱり“扇動者”が多いように

感じるのは、気のせいでしょうか(あるいは歳のせい?)。