当研究室の研究概要

〜酸化物ナノ構造を自在に設計・合成し、新しい機能物性を創造する〜

強相関酸化物超構造を用いた新奇量子状態の観測と制御

酸化物の中には、高温超伝導や光触媒などの驚くべき機能物性を示すものがあります。いわば「天才児」達です。
当研究室では、この「天才児」の振る舞いを高輝度放射光を用いて可視化し、その知見に基づいて新たな機能性ナノ物質を開発することに取り組んでいます。
具体的には、酸化物分子線エピタキシー(MBE)という酸化物ナノ構造を原子レベルで制御しながら「つくる」技術と、 放射光を用いた先端計測(角度分解光電子分光・内殻吸収分光など)という化学・電子状態を「みる」技術とを高いレベルで融合するにより、 酸化物の類い希な物性を設計・制御しながら新しい機能性ナノ物質の開拓を推進しています。
さらには、酸化物ナノ構造を基盤として、有機物質や原子層物質などとのヘテロ構造を設計・合成することで、 次世代エレクトロニクスに向けた新機能の創成を目指しています。

酸化物の設計・制御

主な研究テーマ “Materials by design”

1)強相関酸化物量子井戸構造を用いた新奇量子化状態の創成

強相関酸化物量子井戸構造を用いた新奇量子化状態 酸化物量子井戸構造を用いて強相関電子を2次元空間に閉じ込め、その新奇な量子化状態を角度分解光電子分光により明らかにします。 さらに、量子井戸構造をデザインすることで、強相関電子の振る舞いを任意にコントロールすることを目指します。

▼ もっと詳しく
・共鳴トンネル効果を用いたモットトランジスタの原理検証に成功~次世代デバイスの実現に向けて~(外部ページ)
・表面科学Vol.38 No.12 2017「酸化物量子井戸構造に誘起される新奇な2 次元電子液体状態」
・「天才」電子を手なずける(外部ページ)
・物構研トピックス(2015.09.28)「3,2,1! で重たくなる電子」(外部ページ)



2)酸化物ヘテロ構造を用いた新機能の開発

酸化物ヘテロ構造を用いた新機能 レーザーMBE技術を駆使して、自然界には存在しない物質構造を自由自在に設計することにより、新たな機能の探索を行っています。 さらに発現した機能を利用した新たなデバイスの創成を目指します。

▼ もっと詳しく



3)酸化物ナノキャパシタ構造を用いたグリーンメモリーの開発

酸化物ナノキャパシタ構造を用いたグリーンメモリー 不動態を形成する金属と酸化物との界面酸化還元反応により自然形成されるナノキャパシタ構造を利用して、 高性能と低環境負荷が両立したレアメタルフリー不揮発性メモリの実現を目指します。

▼ もっと詳しく(外部ページ)



4)in situ放射光電子分光装置と酸化物表面・界面解析ビームラインの開発

レーザー分子線エピタキシー+その場高分解能光電子分光複合装置 当研究室の研究理念である「ハイレベルな作る技術と見る技術の融合」を達成するための実験装置として、その場光電子分光装置を建設しており、 日々改良を進めています。この装置は図1に示すような構成になっており、「作る」装置であるレーザー分子線エピタキシー(Laser MBE)と、 「見る」装置のSES2002光電子分光装置とが、試料評価槽を介して、全て超高真空下で連結されています。

▼ もっと詳しく



5) Liイオン電気化学反応を利用した酸化物電子物性の制御

Liイオン電気化学反応を利用した酸化物電子物性 Liイオン電気化学反応はLiイオン二次電池の基本となる技術です。これまでLiTi2O4を負極とした擬似的な電池セルを用いて、 可逆的な超伝導状態の制御を行ってきました。蓄電技術を応用し、新奇物性の開拓・制御を行っています。



6) 電子相転移を示す酸化チタン薄膜の開発

Liイオン電気化学反応を利用した酸化物電子物性 二酸化チタン(TiO2)は光触媒や白色顔料に使われる酸化物材料です。NbやCoをドーピングすることで透明導電体や希薄磁性半導体となります。 このような多機能な酸化チタン系材料のさらなる活用を目指し、電子相転移を示す酸化チタン薄膜の合成を行っています。 非平衡性の強いPLD法を用いることで、g-Ti3O5やTi4O7の新規超伝導体の合成に成功しています。