モールドフラックスの熱力学・構造・熱物性


研究背景と目的


高速速連鋳の安定操業および製品の品質向上のためには,鋳型/凝固シェル間の潤滑および鋼から鋳型への熱伝達を適切なレベルに制御することが重要であり,その両者に直接関与するモールドフラックスの果たす役割は大きい。しかしながら,モールドパウダーに要求される融点,粘度,融解速度,結晶化度などの特性が鋼種および連鋳機の操業条件(オッシレーション,連鋳速度)によって異なるため,未だにパウダーの設計はブラックボックスの感がある。
 当研究室では,モールドパウダーの設計に合理的な指針を与えるために,基本三元系であるCaO-SiO2-CaF2系の状態図の整備を行ってきた。また,実際のパウダーがさらにNa2OやAl2O3などの成分を含む多元系であることを考慮すると,計算状態図の援用が必要となるが,最も重要な化合物であるcuspidineの標準生成Gibbsエネルギーの値がこれまで報告されていなかった。これも当研究室で決定したので,計算状態図への貴重な入力データを提供できると同時に CaO-SiO2-CaF2系の成分活量が算出できるようになった。これにより,この凝縮相と平衡するフッ素含有ガス SiF4,HF)の分圧などを計算できるようになったため,パウダーからのフッ素エミッションによる作業環境及び連鋳機への悪影響についても検討することができるようになった。