理化学ガラス細工講習用ビデオ (H20年度奨励研究)


はじめに

切断
引き伸ばし
ゴム管止め
同径管接合
異径管接合
Y字管
T字管
口作り
底作り
封じ込み
枝管取付
平面研削
炎の中のガラス

動画入りPDF

注意事項


ガラス細工を行う方へ

 化学実験を行ううえでガラス器具は不可欠である。それは、ガラスが化学的に安定でフッ酸以外のものにはほとんど侵されず、また容器内での化学反応を観察することができる等の利点をもっているためである。
 現在では多くの種類のガラス器具が市販されており、それらを組み合わせることによってほとんどの化学実験を行うことができる。しかし、ガラス製真空装置を使ってのNMRやESRの試料の調製、酸素と反応しやすい物質を取り扱う場合などの実験では研究者自身がガラス細工を行わなければならない。また、ガラス器具の簡単な修理や改良などを研究者自身が行える方が便利であるし、とくにガラス技術者のいない研究機関ではそれが不可欠となる。そこで、研究室でのガラス細工について、初歩的な技術を簡単に述べてみたい。ここでは、おもにホウケイ酸ガラス(Pyrex,Duran-50等)の加工をとりあげる。ホウケイ酸ガラスはソーダ石灰ガラスと比べて急激な温度変化に耐え、アルカリ溶出度が少ないなどの理由から、最近の実験用器具はほとんどその素材を使うようになっている。また、熱加工時のひずみによる破壊が少ないために、加工は比較的容易である。

接合の注意点

 接合を行ううえで重要なことは二つの管の径を同じにすることと、接合部をよく溶かし合わせることである。管径が異なるものをそのまま接合すれば、穴が開いたり肉が溜まりすぎたりする。溶け合い方が不十分なものは細工後に破壊が起こりやすい継ぎ目が見えなくなるまで十分に溶かす必要がある。接合する管が太くて回しながら加熱(回し焼き)し整形するのが困難な場合、接合部をいくつかの部分に分けて加熱(部分焼き)し整形を繰り返す方法もある。

ガラスのひずみ

 ガラスの熱加工後放置しておくと、1~2日たってからひびが入ることがある。これはひずみによるものである。ガラスの一部をガス炎等で熱加工するときには、加工部が高温の流体となるがその周囲は室温の固体のままである。熱加工後冷却されるとき、加工部が軟化温度以下の固体になり、熱収縮しようとしても周囲に固体の部分があるために収縮できず、ひずみが生じる。ひずみは偏光を利用したひずみ検査器で観察することができる。ガラス細工を行ったときにできるひずみを下図に示す。ひずみがかかっている所は色が濃くなっている。図からわかるように、ひずみは熱加工を行った周辺で一番強い。また、ガラス全体を高温にした場合でも、冷却時に表面が先に冷やされて内部との温度差ができるためにひずみが生じる。ひずみを取り除くためには、軟化温度よりは十分低いが粘性流動を起こす温度(除歪温度)まで加熱し、部分的な温度差を生じないようにゆっくりと冷やす(除冷)必要がある。真空配管などのように炉に入れて除冷できないものは、大きな予熱に使う炎で加工部周辺を広く加熱し、強く集中しているひずみを分散させる。このとき強く加熱しすぎると新たなひずみが生じ、弱すぎるとひずみが残るので加熱のしかたに注意が必要である。

終わりに

 ガラス細工はガスバーナーの火炎でガラスを高温にするために、バーナーの火で髪や衣服を焼いたり、完全に冷めていないガラスをつかんでやけどをしたりの事故がある。火の取り扱いには特に気を付けてほしい。やけどをしたら流水で十分に冷やすこと。ガラス管にコルク栓を差し込もうとしてガラス管が折れ、手に突き刺したという事故がある。薄くて弱い足場も壊れやすい。事故を起こさないように十分気を付けてガラス細工およびガラス器具の取り扱いを行ってほしい。

参考図書(ガラス細工の初歩)
ガラス細工について
  •  高木貞恵,硝子細工法,三共出版,1966
  •  飯田武夫,ガラス細工法,廣川書店,1973
  •  R.Barbour,Glassblowing for laboratory technicians,Pergamon Press,1978
ガラスについて
  •  成瀬省,ガラス工学,共立出版,1958
  •  クリュチニコフ,ガラスの科学,東京図書,1967
  •  土橋正二,ガラスの化学,講談社,1972
  •  D.G.Holloway,ガラスの物理,共立出版,1977
その他
  •  森谷太郎ほか編,ガラス工学ハンドブック,朝倉書店,1963
  •  作花済夫ほか編,ガラスハンドブック,朝倉書店,1975



問い合わせ
工藤友美 kudo@tagen.tohoku.ac.jp
東北大学 多元物質科学研究所 ガラス工場