6 ひずみ

 ガラスの熱加工後放置しておくと、1〜2日たってからひびが入ることがある。これはひずみによるものである。ガラスの一部をガス炎等で熱加工するときには、加工部が高温の流体となるがその周囲は室温の固体のままである。熱加工後冷却されるとき、加工部が軟化温度以下の固体になり、熱収縮しようとしても周囲に固体の部分があるために収縮できず、ひずみが生じる。ひずみは偏光を利用したひずみ検査器で観察することができる。ガラス細工を行ったときにできるひずみを(図5)に示す。ひずみがかかっている所は色が濃くなっている。図からわかるように、ひずみは熱加工を行った周辺で一番強い。また、ガラス全体を高温にした場合でも、冷却時に表面が先に冷やされて内部との温度差ができるためにひずみが生じる。ひずみを取り除くためには、軟化温度よりは十分低いが粘性流動を起こす温度(除歪温度)まで加熱し、部分的な温度差を生じないようにゆっくりと冷やす(除冷)必要がある。真空配管などのように炉に入れて除冷できないものは、大きな予熱に使う炎で加工部周辺を広く加熱し、強く集中しているひずみを分散させる。このとき強く加熱しすぎると新たなひずみが生じ、弱すぎるとひずみが残るので加熱のしかたに注意が必要である。

図6-1 プリンス・ラパートの滴

 ひずみを利用したものに強化ガラスがある。強化ガラスは急冷あるいは化学処理することによりガラス表面に均一なひずみを作ったものである。17世紀頃から知られている強化ガラスにプリンス・ラパートの滴(Prince Rupertユs drops・オランダの涙)がある。これは、ソーダ石灰ガラスの棒の先端を強熱し、溶けて自重で垂れ下がったガラス滴を水中に落として急冷して作る。できた滴は頭をハンマーでたたいても壊れないが、尾を折ると粉々になってしまう。