多元物質科学研究所 所長挨拶
Frontiers in Multidisciplinary Research for Advanced Materials

研究所長 村松淳司
本、多元物質科学研究所(以下、多元研)が創立16年目となり、前身の研究所の一つである、選鉱製錬研究所が設置されて75年です。従来の区別にとらわれない、物質、材料を含む、あらゆる"もの"を多元的に研究する、特徴ある研究所として2001年4月に誕生し、おかげさまで、一般社会にも次第に認知されつつあります。その礎は、前述の選鉱製錬研究所(素材工学研究所)、科学計測研究所、非水溶液化学研究所(反応化学研究所)のスピリットであり、輝かしい伝統の力を、ひしひしと感じます。先人たちが切り開いてきた多くの研究分野と、輝かしい研究成果が、漏れることなく、多元研に引き継がれており、過去から未来への時間軸の中で、研究所のあちらこちらで、時空を超えて融合していく姿を見ることができます。
たとえば希少金属高効率抽出技術の研究、グリーントライボ・イノベーション・ネットワーク、量子ビーム位相イメージングプロジェクトが代表的で、非常に多くの共同研究、プロジェクトが進行中です。伝統のある長い歴史を内に含んでいながら、若い研究所であるがゆえに、軽快で柔軟な研究体制の構築が可能であったことが幸いしています。
こうして多元研では、資源から最先端材料までの垂直方向、そして無機、有機、バイオなどあらゆる物質材料を含む水平方向の両機軸を、ハイブリッドにカバーした、独創的で斬新な研究が、数多く行われています。そうした研究の一端を、「多元研概要」で紹介しています。パラパラとページをめくりながら、多元研では、“もの”も、“人”もハイブリッドとなって、物質材料研究に従事していることを想像してみてください。きっと、多元研の世界に没頭することができることでしょう。
2010年から始まった、先駆的なネットワーク型共同研究拠点である「物質・デバイス領域共同研究拠点」(多元研の他、北海道大学電子科学研究所、東京工業大学化学生命科学研究所、大阪大学産業科学研究所、九州大学先導物質化学研究所)では、本当にたくさんの研究成果を出しており、お互いに顔の見える共同研究を進めていく中で、『附置研究所間アライアンスによるナノとマクロをつなぐ物質・デバイス・システム創製戦略プロジェクト』が、非常に効率的に、かつ、先端的に推進されており、いよいよ本年度から多元研が共同研究拠点本部で、中心的な役割を演じています。
東北大学の学内での部局間交流も非常に活発であり、昨年は、若手アンサンブルプロジェクトにも積極的に関わりました。さらに、産学連携先端材料研究開発センターをはじめ、理学研究科、工学研究科、生命科学研究科、環境科学研究科などすべての学内部局との密接な連携から、新たな物質材料研究が日々誕生してきています。
東日本大震災から5年が経過し、新たな復興段階となっています。多元研は引き続き物質材料における東北復興への貢献と、未来を背負う新進気鋭の優秀な研究者の輩出を積極的に担っていきます。今後とも、変わらぬご支援を賜りますよう宜しくお願いいたします。
平成28年4月 研究所長 村松淳司
・関連リンク:多元物質科学研究所 刊行物(「多元研概要」等の刊行物をご覧いただけます)