研究概要

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当研究分野では、高機能合金におけるナノスケールの組成や構造の不均一性制御、原子レベル構造を制御した各種酸化物の創製、金属・合金のナノ粒子の合成等のための基礎的・応用的研究等を行っています。
これらの物質・材料の評価には、フォトン、電子、イオン等を用いた各種の解析法を適用し、それらの解析結果を基に、各物質・材料の諸特性を向上させる ことを目指しています。また、資源の循環や有効利用などのために環境関連物質の状態制御に関する重要課題にも取り組んでおり、自然と人間の調和に向けた研 究も推進しています。 

 

研究課題

◆機能性鉄基合金における不均一変形機構の解析と制御

優れた力学特性を示す鉄基合金の研究や開発が盛んに行われています。本研究室では特異な変形挙動を示す機能性鉄基合金に応力負荷したときの構造変化、 例えば、図に示したような応力負荷によるfcc構造からhcp構造へのマルテンサイト変態を伴う変形などを解析し、多くの結晶粒からなる合金における不均 一変形などを明らかにする研究を行っています。実用材料の微視的変形が不均一に起こるため、本研究により機能性鉄基合金の実用化のための重要な知見が得ら れることが期待されています。力学特性と比較しながら複雑な変形挙動を明らかにするには、バルク合金の表面近傍だけでなく内部までを詳細に調査することが 重要となります。そこで、高エネルギーのX線によるバルク合金の構造情報や電子回折による表面近傍の情報を得る実験を行い、それらの情報に基づき特性を制 御する研究に取り組んでいます。
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hcp構造へのマルテンサイト変態に伴うfcc構造(01-1)面における原子配置の変化

 

◆液相中で生成する鉄酸化物の複雑構造と形態の制御

我々の身の回りで最も多く使われている鉄系合金の腐食生成物(一般的には、さびと言われている)は、様々な形態を有した水酸化鉄、オキシ水酸化鉄およ び酸化鉄などの非常に複雑な結晶構造の鉄酸化物で形成されています。本研究室では、図で示したように液相中での酸化によりα-FeOOHやγ-FeOOH などの鉄酸化物に変化するGreen Rustに着目して、複雑な結晶構造および形態におよぼす酸化過程の温度、酸素分圧および添加元素などの影響をX線回折、X線吸収分光および電子顕微鏡を 用いて評価することにより、鉄酸化物の制御についての検討を進めています。Green Rustが安定なポテンシャルは、鉄と鉄酸化物の中間にあるため、本研究により鉄の水溶液中での腐食生成物の形成に関わる基礎的知見が得られることが期待 されています。
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Green Rust、α-FeOOHおよびγ-FeOOHの結晶構造

 

◆エネルギー変換用イオン伝導体の表面近傍の電子状態評価

現在、高性能な電池は日々の生活に必要不可欠となっており、クリーンで高効率なエネルギーの供給を目指して、燃料電池の開発が盛んに行われています。 本研究室では、燃料電池の正極となる図のようなペロブスカイト型構造の酸化物イオン伝導体において、電池の性能と密接に関わる酸素イオンの伝導経路、すな わち電極の最表面から固体電解質の界面への深さ方向の電子状態の評価に取り組んでいます。X線の試料への入射角度を変化させ、様々な侵入深さから励起され た光電子のエネルギー解析や、X線照射により発生する蛍光X線を試料表面に対して小さい出角で検出を行うなどの工夫をして測定したX線吸収微細構造の解析 を行うなどして深さ方向の電子状態の解析を進めています。さらに、電池動作中における正極内部での反応に関する知見を得るために、様々な酸素分圧雰囲気で の熱処理の影響などの調査も行っています。
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ペロブスカイト型構造の燃料電池正極物質の結晶構造

 

◆金属および合金超微粒子の結晶構造と磁気的性質

表面では一つの原子を取り囲む 他の原子の個数は少なくなるため、表面の原子が受ける影響は内部の原子とは異なってきます。金属および合金のサイズが小さくなると、内部の原子とは明らか に状況の異なる表面の原子の比率が高くなります。その結果、超微粒子ではバルクとは異なる物理的および化学的性質が表れます。
多価アルコール(ポリオール)は比較的沸点の高いアルコールで、金属イオンを溶解して加熱するとそれ自体が還元剤として働き、金属微粒子を析出させま す。ポリオールの種類によって沸点や還元力が異なり、反応温度、反応性および反応速度を制御して、熱平衡状態図には無い結晶構造を有する純金属あるいは遥 かに高温領域において平衡状態となる不規則構造の合金などの超微粒子を比較的低温で作製することが出来ます。本研究室では、それらの結晶構造および磁気的 性質を調査し、超微粒子の特色と基礎的知見を明らかにする研究を行っています。例えば、元素固有のX線の吸収端近傍における吸収スペクトルの微細構造や原 子散乱因子の特異な変化などを利用して、特定元素の局所結晶構造や原子配列の規則度などを評価する実験を行うことで、超微粒子における相変態および酸化挙 動の解析に取り組んでいます。
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ポリオール法で作製した合金超微粒子

 

◆持続可能な社会に向けた物質の構造および形態の制御

本研究室では、構造および形態制御による資源の有効利用に伴う問題の改善に関する研究を行っています。具体的には、金属製錬や土地開発に伴って発生す る元素が溶解した水溶液から図のような鉄酸化物の生成による特定の元素の固定化および鉄酸化物表面への吸着による特定の元素の回収や、製鋼スラグからの成 分溶出の有効利用などの観点から研究を進めています。鉄酸化物およびスラグの複雑な結晶構造や形態をX線回折、X線吸収分光および電子顕微鏡により評価 し、結晶構造と特定の元素の安定性や溶出および吸着挙動との関連、さらには固定化や回収に適した形態への制御などについて検討を行っています。
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特定の元素を固定化するための鉄酸化物の結晶構造

 

主な研究手法

◆構造解析法

X線回折法、X線吸収分光法(広域X線吸収微細構造)、X線異常散乱法

 

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FeおよびCrの原子散乱因子の異常分散項の実部f’と虚部f”のエネルギー依存性。元素固有のX線の吸収端近傍の異なる2種類の入射X線エネル ギー E1およびE2を用いてX線回折測定を行い、散乱強度を差し引いて異常散乱項のみに依存した情報を解析することで、FeとCrのように原子番号が近接して いても各元素に着目した環境構造情報が得られる。

 

◆形態観察法

透過電子顕微鏡法、走査電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法

 

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鉄酸化物の透過電子顕微鏡像。ナノオーダーの微細な形態を観察することが出来る。

 

◆分光学的手法

X線光電子分光法、オージエ電子分光法、X線吸収分光法(X線吸収端近傍微細構造)、

 

フーリエ変換赤外分光法、メスバウア分光法

 

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単準結晶中のボイドの電子顕微鏡像、およびバルク内とボイドからのオージエ電子スペクトル。

 

◆各種分析手法

電子プローブマイクロアナリシス、高周波誘導結合プラズマ発光分析法、蛍光X線分析法、

 

二次イオン質量分析法

 

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Fe-Si合金における内部酸化によるAuの異常な拡散浸透を示すSIMSデプスプロファイル。