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[Publication] 一次元反強磁性体KCuMoO4(OH)における異方的な磁場誘起ギャップ

Ssoliton = 1/2の一次元反強磁性体は非常に単純でありながら非自明な基底状態や磁気励起を示す典型的なモデルである。 特に、スタッガード(/交替的な)gテンソルやジャロシンスキ・ー守谷(DM)相互鎖作用が付加的に加わると、 ソリトン、アンチソリトン、ブリーザーモードと呼ばれる磁気励起が発生することが知られている。 ソリトンやアンチソリトンはスピンの位相を時計回りもしくは反時計回りにねじったモードであり、 ブリーザーモードとは両者が結合して正味のねじれが0となったモードである。 我々は単結晶試料を用いた精密な磁化、比熱測定を第一原理計算と組み合わせることによってKCuMoO4(OH)においてこれらの磁気励起が生じていることを立証した。 結晶の対称性を利用した解析によってgテンソルのスタッガード成分及びDM相互作用の大きさを一意的に決定した。 興味深いことに、この化合物ではgテンソルのスタッガード成分とDM相互作用が組み合わさってソリトン励起の大きさが磁場方向に大きく依存する。 したがって、KCuMoO4(OH)はスピンの「ねじれ」モードを制御するのに適したモデル物質になるかもしれない。

磁化と比熱(と第一原理計算)だけでもここまで議論できる、という論文です。マニアックな興味として低温の磁気構造がどうなっているのか、磁場によってその磁気構造が抑えられた量子臨界点近傍でどのような物性を示すのかという点が気になっています。大きな単結晶があればいろいろできるんですが(文責:那波)。

Kazuhiro Nawa, Oleg Janson, Zenji Hiroi
Anisotropic Field-Induced Gap in Quasi-One-Dimensional Antiferromagnet KCuMoO4(OH)
Physical Review B,96(10),104429(10))(2017.9)
DOI:10.1103/PhysRevB.96.104429

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