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[論文]現実のスピンアイス物質の謎を解明?

正四面体上のスピンに強磁性相互作用が働き、かつ、正四面体頂点と中心を結ぶ軸が容易軸である場合、基底状態は二つのスピンが内向きに、残りの二つのスピンが外向きに配列します。内向きの(外向きの)スピン2つを選ぶ場合の数は6通りあるので、基底状態は6重に縮退しています。(この状況は氷にそっくりなので、スピンアイスと呼ばれます。)さて、パイロクロアでは正四面体が頂点を共有して配列していますので、マクロに縮退した極めて興味深い基底状態が予想されます。そのため、長い間精力的に研究されてきました。典型的なスピンアイス物質の一つである Tb2Ti2O7 では、しかし、スピン液体状態や秩序状態などの異なる基底状態が報告されてきておき、大きな謎となっていました。本研究ではこれらの異なる基底状態が Tb, Ti, O のほんの僅かな組成の違いによるものである事を明らかにしました。これは、この系の基底状態が極めて弱い摂動に対して非常に大きな変化を示すという事であり、マクロに縮退した基底状態の性質として極めて興味深いと考えられます。

T. Taniguchi, H. Kadowaki, H. Takatsu, B. Fak, J. Ollivier, T. Yamazaki, T. J. Sato, H. Yoshizawa, Y. Shimura, T. Sakakibara, T. Hong, K. Goto, L. R. Yaraskavitch, and J. B. Kycia,Long-range order and spin-liquid states of polycrystalline Tb2+xTi2-xO7+y, Phys. Rev. B 87, 060408 (2013)

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