Tohoku University, IMRAM, Muramatsu Lab. 本文へジャンプ
研究活動報告



研究報告
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[2012/3/31付記事]
本研究分野ではナノハイブリッド素材の創製について研究活動を行っている.2011年の研究活動としては,以下のように概括される.

1.希少金属資源代替プロジェクト  〜ITOナノインク合成〜 (図1)
スズドープ酸化インジウム (ITO) 薄膜は高い透明性と導電性を示す.しかしながらインジウムは希少金属であることから,その使用量低減技術開発が急務である.使用量低減のためには,ITO ナノインクパターニングや静電塗布等,新たな薄膜調製法の開発が望ましいと考えられる.本研究では,その基材となる ITO ナノ粒子を液相法により精密にサイズ・形態制御しつつ合成する手法の開発を実施した.その結果,エチレングリコールを溶媒とし,最適塩基を選択することにより,高結晶・低抵抗 ITO ナノ粒子が合成できることを見出した.
2.有機無機ハイブリッド液晶:ナノ粒子液晶化による機能性マテリアル創製  (図2)
有機無機ハイブリッド化によるナノ組織構造形成は,その構造に由来した新規機能の発現に繋がる.本研究では,ナノ組織構造の配列・配向状態を外場により自在に制御することを目的とし,有機無機ハイブリッド化によりナノ粒子に液晶性を付与する研究を行っている.具体的には,単分散球状金ナノ粒子と有機デンドロンとをハイブリッド化することにより,液晶性超格子の自発的形成が可能であり,さらにはその構造が温度により変化することを見出した.
3.遷移金属ドープ半導体ナノ粒子の作成とその光学・磁気特性制御 (図3)
半導体相へ遷移金属イオンをドープすることで,半導体の性質を持ちつつ磁性を有し,光による磁性制御または磁場による光学特性制御が可能となり,その特性はナノサイズ化による量子サイズ効果より変化するものと考えられる.そこで本研究では,粒径制御可能な遷移金属ドープ半導体ナノ粒子の作成と,異なる粒径がもたらす光学・磁気特性の制御を目的とし,まず Mn ドープ CdS ナノ粒子の合成とその光学特性の検討を行った.
4.アクティブメンブレンの創製に向けた外場応答性リン脂質の開発 (図4)
脂質二分子膜は,膜タンパクの保持・イオン輸送など,機能材料設計の立場から観て実に魅力的な機能の宝庫である.しかしながら,二分子膜自身は,機能性を発現するというより,むしろ単に機能性分子固定用の土台としての役割を担うのみである.そこで本研究では,脂質二分子膜の構成単位であるリン脂質に着目し,サーモトロピック液晶性分子にリン脂質部位を導入することで,外場によりダイナミックな応答性を示す人工リン脂質,すなわち,人工脂質二分子膜を創製することを目的とし,実際に電場による配向制御が可能であることを見出した.
5.モバイル燃料電池用小型メタノール改質器の開発 (図5)
二次電池に代わる携帯型燃料電池へ水素を供給する方法として,水素生成効率が高く作動温度が低いメタノール水蒸気改質反応を利用した水素供給器の開発が期待されている.そこで本研究では,上記反応に対して高活性を示すアルミナ担持銅-酸化亜鉛触媒ナノ粒子を,表面積の大きいマイクロリアクター内の微細流路に液相還元法によって担持することで,小型高効率水素製造器の開発を目的とした.その結果,銅と亜鉛の出発物質に対してそれらの錯体形成剤(錯化剤)を添加し,還元反応速度を制御することでCu-ZnO/Al2O3ナノ粒子を調製・担持することに成功し,その方法を利用することでマイクロリアクター中に触媒ナノ粒子を直接調製・担持させることに成功した.
6.非鉛圧電アクチエーター用微粒子の合成 (図6)
近年,比較的良好な圧電性を示す無鉛系セラミック材料として,ニオブ酸アルカリ系の圧電セラミックスが注目されており,通常固相法で合成されるが,それではナノレベルで原料粉体を均一に混合すること,結晶子サイズや粒界を厳密に制御することはきわめて困難であった.特に粒界は圧電特性や強度などに大きな影響を及ぼすことから,粒界を制御することは圧電セラミックスの特性向上に不可欠であり,粒界の制御が充分でない材料を使用した場合には製品の欠陥や特性の低下等に繋がるおそれがあった.本研究では,アルカリ金属であるナトリウムとカリウムを特定の比率で組み合わせることにより、均一なサイズと特殊な形状を有する二次粒子からなるニオブ酸ナトリウム・カリウム塩粒子を再現性良く合成できることを見出した.また、その圧電特性はデバイス(インクジェットヘッドなどで)可能な動特性結果を得ており,具体的な圧電セラミックス材料への応用段階に入っている.


 その他,本研究分野においては,多元物質科学研究所内の各研究分野や,金属材料研究所,工学部,他大学,あるいは企業の研究所などと積極的に共同研究の展開をはかっており,プロセスシステム研究部門に課せられた社会的要請に応えるべく,研究を進めている.