5/21 第6回 コロイド化学


  1. 講義で使用したスライド, pdf形式 677KB

1. 分散と凝集について、霧と雨、泥水、牛乳などを例にとって、単に物理現象であって、化学反応ではないことを示せ。
霧は分散しているが凝集して雨となる。変化の前後で水という性質は同じ。泥水もまた、泥が水に分散しているに過ぎない。何らかの化学反応がある証拠はない。

分散と凝集は、それぞれ、粒子同士が反発する力=静電的反発力と、分子間力=London-var der Waals力に支配されると考える。後者はいわば万有引力ともいえ、通常想定される力だが、前者はその力の源を実際にイメージしつつ考えねばならない。

一方、溶液に電場をかけると、粒子が動く、電気泳動現象が観察される。これは、金属、半導体、絶縁体を問わず、どんな組成・構造の粒子でも観察されることから、粒子表面の電荷によるものと理解されている。気泡が液中に存在する場合にもこの電荷が存在することがわかっている。

通常、気泡に電荷があるとは思えないが、この表面電荷は、気泡に優先的に吸着した水酸化物イオンによるものであろうと考えられ、また金属酸化物微粒子が液中で電荷を帯びるのは、表面の -O-Hの、O-H間の解離によるものと考えられている。
つまり、違うもの同士が接している、界面ならではの現象と見られる。
結局、表面電荷は、界面における、界面エネルギーが実際に目に見える形であらわれたものと考えて良い。
逆に言えば、表面電荷がないということは、界面エネルギーがゼロに等しいということになろう。

表面電位は、表面電荷を電位差で考えることのできるもので、電位差で界面のエネルギーを考えると考えやすいからである。

一方、同じ電荷を帯びた粒子同士は、電気的な反発を起こすことは用意に予想できる。従って、静電的反発力はこの表面電荷の重なりを嫌う粒子同士の、電気的な反発であるということがわかる。

もし、この反発力に分子間力による引力が勝つと、凝集し、負けると分散する、と考えると、考えやすい。
これが、分散・凝集の考え方である。

この考えは以前にも述べたように、平衡系でのみ成り立つ。速度論はとりあえず考えていない。

雨が降った後、道ばたには泥水ができている。泥水の中の大きな粒子はやがて沈降するが、小さな粒子はいつまで浮遊していて、濁っている。濾過することなく、透明な水を得るにはどうしたら、いいか。
上記のことから、凝集させればいいことがわかる。
透明な水を得るには、電解質(食塩とか硝酸ナトリウムとか)を入れて凝集させて、上澄みをとればいいことがわかる。

2. 分散と凝集を支配する力をそれぞれ想定し、2つの力の合力、あるいは、2つのエネルギーのトータルなエネルギーであると考えることの合理性について論ぜよ
まず、1対問題である、という前提が必要である。つまり、1:1で考える、ということ。一つの粒子が一つの粒子と分散しあうのか、凝集するのか、ということ。
次に、凝集は、引力あるいは引き合うエネルギーであり、分散は、反発力あるいは反発し合うエネルギーである、と考える。
すると、1対の粒子は常に両者の合力あるいは、2つのエネルギーのトータルなエネルギーであると仮定すると、取り扱いが楽になる。
これは丁度、化学結合において、金属結合以外は、共有結合とイオン結合の間にあって、共有結合性(あるいはイオン結合性)という尺度が用いられることと似ている。

3. 界面における表面電位を数式で与えるための基礎式を考えたい。まず、どう考えたらよいだろうか。
分散媒(水など)中の粒子に電場が与えられると、粒子は動く。これを電気泳動と呼ぶ。この場合粒子には電場による駆動力と、動くために粘性力という反発力がかかる。これが等分にかかったとき、粒子は等速運動する。これにより、粒子表面の電位を測定することができる。この電位をζ電位(ゼータ電位)と呼ぶが、これは種々の実験から、いわゆる表面電位とは異なることがわかっている。
さて、たとえ粒子が絶縁体でも泡でも電場をかけると動くから、粒子内部に依存するものではない。つまり、分散媒と粒子が接するところにある、界面エネルギーが現実に我々の見える形ででてきたものととらえると考えやすい。つまり、表面の電位に依存していることは間違いない。ところが、その表面電位とζ電位が違うことは、水銀の実験などから確かめられている。
では、どう考えるべきか。


電場がかかると粒子は上の図のように動く。すると、動く粒子と、静止している水の間にスリップ面が生じる。拡大してみると、こんな感じ。


つまり、粒子表面に近い水は粒子と一緒に動くが、離れていくと動かなくなる、というイメージである。これだと、表面よりも遠いところの電位を測定していることとなるが、それがζ電位である。
実際、水銀の実験から、表面電位よりもζ電位はかなり小さいことがわかっている。
が、我々が粒子の電位を測定することができるのは、この電気泳動に限られていて、表面電位の真の値を求めることはできないので、ζ電位を通して、表面の電位を推定するしか手はないのである。

上で、ζ電位は表面から少し離れた地点の、表面電位よりも小さな電位である、と述べた。このことから、次のような電位勾配を考えると考えやすい。


つまり、表面から離れて行くに従い、電位が下がるというものである。
電位が下がる理由は、表面には、表面電荷の対イオンが集まっているが、表面から離れていくとその数が少なくなるから、であろうと推定されている。
そこで、ここにボルツマン分布を考えると、任意の電位ψでの、イオン数濃度を規定できる。これが基礎式の1つ目である。



もうひとつは、電荷に関する、ポアソンの式である。



詳しくは講義資料を参考にすること。