平成13年6月19日
界面・電気化学第9回小テスト(基本調査)
専攻 学籍番号 氏名
これまでのまとめをしてみよう。
まず、粒子がなぜ、分散したり凝集したりするのか。これは、分散には静電的反発力が、凝集にはvan der Waals力が働いている、と考えると考えやすい。
反発力の源とはなにか。
下図のような粒子表面を考える。
こんな感じのことが粒子分散系でおこっているに違いない。
すると、粒子表面の近傍での各イオンの振る舞いは、陽イオンと陰イオンに分けて考えると下の図のようになるに違いない。
これこそ、ボルツマン分布ではないか。なお、この分布を電気二重層とよぶ。
では、同じ粒子が2つ、近づいたらどうなるのか。
これが、分散、凝集の基本的な思考方法であろう。まず、1:1の問題として考えるのだ。
同じ符号を持った表面が近づくので、当然反発する。
さあ、これをどう数式化するか。
これが、物理化学である。
さあ、前回の問題を見ていこう。
1. 界面における任意の距離の電位を数式で与えるための基礎式(Poisson-Boltzmannの式)を導き、のとき微分方程式を解いて得られる基本式を書け。
拡散層中のイオンの濃度はボルツマン分布に従う
(1)
n: 拡散層中のイオンの個数濃度
n0: バルク溶液中のイオンの個数濃度
z: イオンの価数
k: ボルツマン定数
T: 温度
y: 問題にしている点における電位
+,-: 陽イオン、陰イオンを表す
表面の電位:y0は電位決定イオンのバルク活量cによって、
(2)
R: 気体定数
c0: c at y0 = 0
拡散層内における電位は、Poissonの式
(3)
を基礎にして求められる。
er: 溶液の比誘電率
e0: 真空の誘電率
r: 電荷密度
は、対称型電解質()に対して、
(4)
従って、平板電気二重層に対する、Poisson-Boltzmann式は、(3),(4)式からx方向だけを考えて
(5)
(5)式を積分して、
(6)
なら、(5)式は、
(7)
ただし、 (8)
25℃水溶液では特に
(9)
このκは、Debye-Huckelパラメータと呼ばれる。
(7)式を解くと、
2. 上式で登場するκは、Debye-Hückelパラメータと呼ばれるものである。それが、イオン濃度、イオンの価数、温度によってどういう影響を受けるか考察せよ。
で、
イオン濃度 nが増加すると、κは増加する
イオンの価数 zが増加すると、κは増加する
温度Tが増加すると、κは減少する
3. 静電的反発エネルギーの式として最終的に得られる式(近似を使って得られる式でもよい。つまりを使って得られる式)はどんな形で、κによってどう影響を受けるか。したがって、表面から一定距離を考えた場合、そこでの静電的反発エネルギーは、イオン濃度、イオンの価数、温度によってどういう影響を受けるか考察せよ。
イオン濃度 nが増加すると、同じ距離で比較した場合の反発エネルギーは減少する
イオンの価数 zが増加すると、同じ距離で比較した場合の反発エネルギーは減少する
図の赤い矢印方向に拡散二重層は圧縮する。つまり、スリップ面の電位=ζ電位も減少する。ということは、実際にはある距離の電位が低くなることから、粒子は接近しやすくなることを意味している。
さて、相互作用エネルギーは、van der Waals力成分
(29)
(30)
AはHamaker定数
を考えて、全相互作用力、ポテンシャルとして、
(31)
(32)
となる。
あるいは、
(33)
であり、通常は、これらの式を使用する。
van der Waals力は、イオン濃度、イオンの価数、温度によらないため、これら溶液の環境によって影響を受けるのは、専ら静電的反発力の方である。
実際にこれを図示してみよう。
上記のように、専ら、静電的反発力こそが、2つの粒子の合一、つまりは凝集を防いだり、起こしたりする要因となってしまう。
凝析、塩析などが、この理論で説明できるのである。