平成11年7月6日

基本調査

裏面を使用してよい。

番号[               ] 氏名[                  ]

1. 吸着と触媒は密接に関係しているが、吸着したからと言って、触媒反応が始まるわけではない。前者には、冷蔵庫の消臭剤などがあり、後者には、自動車触媒などがある。ところが、後者は、NOx等の触媒表面への吸着から始まる。つまり、触媒は吸着を包含するが、吸着されるもの全てが触媒というわけではない。このような例を3つほど例示せよ。

消臭剤や除湿剤は吸着作用のみ。前者は主に物理吸着、後者は主に化学吸着である。

触媒は、吸着を手がかりに、表面反応が進行する。たとえば、自動車触媒や化学工業触媒である。

たとえば、合成ガス CO+H2からのメタノール合成において、Cu-ZnO/アルミナ触媒が工業的には使用される。メタノールはホルムアルデヒド(合成繊維の原料)などを製造するための重要な化学製品である。

この場合、まず、COが非解離吸着する。

同時に、水素が解離吸着して、触媒表面上に、活性なヒドリドを生成する。

このヒドリドによって、上記の吸着CO種が、水素化される

これが次々に、水素化を受けて、

となって、最終的に、CH3OHとなって、脱離する。

合成ガスが混同しただけでは、反応は進まないが、触媒の存在で、反応経路が確立し、活性化エネルギーを下げて、反応が進むわけである。

2. 身の回りにある、コロイドと触媒現象をうまく利用した食品などを例示し、どのような関わっているかを説明せよ。

(略)

3. 吸着について、物理吸着と化学吸着に分けて知るところを述べよ。

吸着はその吸着力から物理吸着と化学吸着に分類できる。前者はvan der Waals力で、後者は化学結合力で支配される。触媒反応では後者の化学吸着がきっかけとなる。化学吸着は触媒表面との化学結合を前提とするので、その吸着熱は化学反応熱と同じ程度である。物理吸着が可逆吸着であるのとは対照的に気体分子が吸着後すみやかに化学変化を起こすことが多く、不可逆な場合がある。また、化学吸着は一種の化学反応であり、活性化エネルギーを必要とすることが多く、平衡吸着までの時間は物理吸着に比較してきわめて長い。

平衡論は、いわば、桃源郷ユートピアの世界の話である。この世界と今とのエネルギー差が、まさしく、ギブスの自由エネルギー変化なのである。平衡論は、エネルギー的に最も安定なところは、どこか、「ある条件下」で、規定しようとする学問である。

触媒は、速度論の学問である。いかなる触媒を使っても、平衡論の範疇にある。逆に言えば、平衡的に生成しないものは、どんな触媒でも得られないのである。たとえば、水と炭酸ガスから、石油を作ろうと言っても、平衡が著しく、水と炭酸ガスに寄っているから、どんな触媒を用いてもできないわけである。