平成
10年6月2日小テスト&基本調査
裏面を使用してよい。
番号[ ] 氏名[ ]
1. 球形粒子間に働く静電的反発力あるいは反発エネルギーを求めるための、基礎式を示した上で、式の意味について簡単に述べよ。なお、必ずしも、式を解く必要はない。
2. 粒子間の相互作用のうち、引力の源とは何か、のべよ。
3. 難溶性塩の溶解度は、溶解度積から求めることができる。以下、すべて理想溶液とする。
Ni(OH)2 « Ni2+ + 2OH- の、25℃での溶解度積 Ksp = [Ni2+] [OH-]2 = 2.0 x 10-15 mol3/l3 である。(計算が面倒なら、これを 1.0 x 10-15と近似してよい)
(1) 25℃でpH = 0 ([H+] = 1 mol/l), pH = 7, pH = 10 それぞれのとき、溶けているニッケルイオンNi2+のモル濃度(mol/l)はいくらか計算せよ。なお、25℃での水のイオン積は [H+] [OH-]=10-14
(2) 上の計算結果、pH=0のとき、溶けているニッケルイオン濃度について、理想溶液と実在溶液の観点から、計算結果の妥当性を考察せよ。
<裏面を使用せよ>
平成10年6月2日
小テスト&基本調査
裏面を使用してよい。
番号[ ] 氏名[ ]
1. 球形粒子間に働く静電的反発力あるいは反発エネルギーを求めるための、基礎式を示した上で、式の意味について簡単に述べよ。なお、必ずしも、式を解く必要はない。
<静電的反発力を求める基礎式>
基礎式 No. 1 = 拡散層中のイオンの濃度はボルツマン分布に従う
(1)
n: 拡散層中のイオンの個数濃度
n0: バルク溶液中のイオンの個数濃度
z: イオンの価数
k: ボルツマン定数
T: 温度
y : 問題にしている点における電位
+,-: 陽イオン、陰イオンを表す
基礎式 No. 2 = 拡散層内における電位は、Poissonの式
(3)
を基礎にして求められる。
ε
r: 溶液の比誘電率ε
0: 真空の誘電率ρ
: 電荷密度
は、対称型電解質()に対して、
基礎式
No. 3 =(4)
溶液中の2枚の平行平板(板間距離
: h)に作用する力Pは(15)
静電気成分 + 浸透圧成分
(電気力線により内側に引かれる力)+(対イオンの浸透圧により外側へ押される力)
(16)
POは常にPEよりも大きく、板は反発力を受ける つまり、浸透圧成分の方がメイン!!
従って、基礎式 No. 4 =
板の接近過程で表面の電位y 0が変化しなければ、PEの寄与を無視することができる。
2. 粒子間の相互作用のうち、引力の源とは何か、のべよ。
London ? van der Waals力
ただし、この力は非常に小さく、点−点では、距離の6乗に逆比例する程度のごく微小な力である。ところが、面−面になると、積分されて、距離の2乗の逆数で効くことになる。つまり、比較的遠距離では、静電的反発力が主であるが、近くなると、このvan der Waals力に基づく力が、より強くなり、その距離まで近づくと、凝集する。
3. 難溶性塩の溶解度は、溶解度積から求めることができる。以下、すべて理想溶液とする。
Ni(OH)2 « Ni2+ + 2OH- の、25℃での溶解度積 Ksp = [Ni2+] [OH-]2 = 2.0 x 10-15 mol3/l3 である。(計算が面倒なら、これを 1.0 x 10-15と近似してよい)
(1) 25℃でpH = 0 ([H+] = 1 mol/l), pH = 7, pH = 10 それぞれのとき、溶けているニッケルイオンNi2+のモル濃度(mol/l)はいくらか計算せよ。なお、25℃での水のイオン積は [H+] [OH-]=10-14
(2) 上の計算結果、pH=0のとき、溶けているニッケルイオン濃度について、理想溶液と実在溶液の観点から、計算結果の妥当性を考察せよ。
(1)
[Ni2+] [OH-]2 = Kwし、[H+] [OH-]=KH2Oとすると、
[Ni2+] = Kw /[OH-]2 = Kw /(KH2O /[H+]) 2 = Kw /KH2O2 x [H+] 2 = 2.0 x 1013 x [H+] 2
理想溶液であるので、
pH = 0のときは、[H+] = 1 mol/l 従って、[Ni2+] = 2.0 x 1013 mol/l
pH = 7のときは、[H+] = 10-7 mol/l 従って、[Ni2+] = 2.0 x 10-1 mol/l
pH = 10のときは、[H+] = 10-10 mol/l 従って、[Ni2+] = 2.0 x 10-7 mol/l
(2) 理想溶液なら、活量係数が1なので、水素イオンの活量aH+ = [H+]となる。
pH = - log aH+であるので、[H+] = aH+ = 10-pH
ところが、
pH = 0は、[H+] = aH+ = 1 となり、イオン強度が 1 mol/lもあり、明らかに、理想溶液から離れているので、理想溶液としたことが間違いであった。実際、[Ni2+] = 2.0 x 1013から、計算される、溶けているニッケルイオンのグラム濃度は、1.19 x 1015 g/l = 1190 Mt / lとなり、1リットルに1190 メガトンのニッケルが溶けるという、非常におかしなことになってしまう。通常、活量係数を1とおけるのは、
1 x 10-3 mol/l以下のイオン強度のときである。
<講義内容について>
コロイド粒子間に働く力は、結局、全ポテンシャル
Vtotal = Vel (電気二重層の相互作用、斥力) + VA (van der Waalsの相互作用、引力)
で得られる。このうち、前者は、距離
hの関数であるが、変数として、z: 電解質の価数, c: 電解質濃度を含んでいるのに対し、後者は、距離だけの関数である。従って、電解質の種類や濃度が変わると、全ポテンシャルが変わって、下図のようになる。なお、この理論を作った人の名をとって、DLVOの相互作用エネルギーと呼ぶ。
図のように、全エネルギーがどの距離でも引力になると、急速凝集する。