平成
10年5月26日小テスト&基本調査
裏面を使用してよい。
番号[ ] 氏名[ ]
1.
酸性の硫化水素泉が臭い理由を物理化学的に説明せよ。
2.
温泉には、硫黄泉や硫酸塩泉などがある。硫黄の酸化との関係から説明せよ。
3.
粒子間に働く、反発力の源とは何か、説明せよ(再掲)。
4.
表面電位について、導体と絶縁体それぞれの場合を比較しながら、説明せよ。(裏面使用のこと)講義で渡した、プリントは
ここ講義で紹介した式の導出の詳細は
ここ
平成10年5月26日
小テスト&基本調査
裏面を使用してよい。
番号[ ] 氏名[ ]
1. 酸性の硫化水素泉が臭い理由を物理化学的に説明せよ。
関係する、平衡式を書いてみると次のようになる。
(1) H2S (gas状) ⇔ H2S (溶解した、以下このH2Sを指す) 溶解平衡
(2) H2S ⇔ HS- + H+
(3) HS- ⇔ S2- + H+
酸性になると、水素イオンが多くなるので、(3)式,(2)式の平衡は、左へずれる。そうすると、(1)式の右辺が多くなるので、やはり左にずれる。結果的に匂いのある硫化水素ガスが発生する、というわけである。ちなみに、HS-やS2-には、臭いはない。ガス状になるので、臭ってくるのである。
2. 温泉には、硫黄泉や硫酸塩泉などがある。硫黄の酸化との関係から説明せよ。
硫黄イオンの酸化について考える。熱水が鉱石に触れて温泉水になった直後は、M(金属)Sの形の金属硫化物が溶けている。このうち、硫黄イオンS2-は空気に触れると酸化する。これを酸化数を使って表記すると、
S-2→ S0→ S+2→ S+4→ S+6
のように、右に行くほど酸化数が増えていく。実際のイオンに当てはめると次のようになる。
S2-→ S0→ SO22-→ SO32-→ SO42-
となり、左から、硫黄イオン、単体硫黄、次亜硫酸イオン、亜硫酸イオン、硫酸イオン、の順である。火山性の温泉の近くで単体硫黄が多く採取されるのは、水中に混ざっていた硫黄イオンが急速に冷える段階で、酸化を受けるためであろう。一方、温泉成分で、硫酸イオンなどが含まれている温泉は、時間が経過している温泉で、肌には優しいと言えよう。酸化状態から言えば、硫黄が酸化された方が、刺激が和らぐという感じであろうか。
3. 粒子間に働く、反発力の源とは何か、説明せよ(再掲)。
粒子表面の表面電位である。この電位ψ0は、溶液では、表面から離れると共に、徐々に小さくなるが、いきなり0になることはない。徐々に低下していき、溶液バルクでは、0となる。これを拡散電気二重層モデルと呼ぶ。電位は、まず、Stern面まで直線的に下がり、そこの電位をStern電位ψdといい、それから先は、ψ=ψd exp (-κx) という式に従って下がる、という。これをGouy-Chapman理論という。これが反発力の源である。なお、κは、共存する電解質の価数と濃度に依存し、価数と濃度が大きくなると、κは大きくなるという関係にある。すなわち、価数と濃度が大きくなると、ψは、粒子表面から離れるに従い、急速に減少する。つまり、反発力は、粒子表面からちょっとでも離れると小さくなることを意味する。
4. 表面電位について、導体と絶縁体それぞれの場合を比較しながら、説明せよ。(裏面使用のこと)
導体の場合
絶縁体の場合、
<静電的反発力を求める基礎式>
基礎式 No. 1 = 拡散層中のイオンの濃度はボルツマン分布に従う
(1)
n: 拡散層中のイオンの個数濃度
n0: バルク溶液中のイオンの個数濃度
z: イオンの価数
k: ボルツマン定数
T: 温度
y : 問題にしている点における電位
+,-: 陽イオン、陰イオンを表す
ちなみに、表面の電位:y 0は電位決定イオンのバルク活量cによって、
(2)
R: 気体定数
c0: c at y 0 = 0
なお、(2)は基礎式ではない。
基礎式 No. 2 = 拡散層内における電位は、Poissonの式
(3)
を基礎にして求められる。
εr: 溶液の比誘電率
ε0: 真空の誘電率
ρ: 電荷密度
は、対称型電解質()に対して、
基礎式 No. 3 =
(4)
(この下、講義と違います。5/26講義が間違いで、下記が正しい すいません。)
溶液中の2枚の平行平板(板間距離: h)に作用する力Pは
(15)
静電気成分 + 浸透圧成分
(電気力線により内側に引かれる力)+(対イオンの浸透圧により外側へ押される力)
(16)
POは常にPEよりも大きく、板は反発力を受ける つまり、浸透圧成分の方がメイン!!
従って、基礎式 No. 4 =
板の接近過程で表面の電位y 0が変化しなければ、PEの寄与を無視することができる。
従って、POの式から、板の受ける反発力PR(h)は単位面積あたり
(このときの考え方は、2つの平板の丁度中間の面と無限遠の面を考え、中間の面上では、対称性から電場は零、無限遠の平面でも電場は零であるから、浸透圧成分のみを考えればよい、ということになる)
ここから後は、Derjaguin近似: 半径a1とa2の球形粒子の最近接距離Hのとき
(H<<a1,a2)
(22)
を使って、導き出せる。