平成10年5月12日

小テスト&基本調査

裏面を使用してよい。

番号[               ] 氏名[                  ]

1. 粒子間に働く、反発力の源とは何か。図で示して説明せよ。

 

2. 雨が降った後、道ばたには泥水ができている。泥水の中の大きな粒子はやがて沈降するが、小さな粒子はいつまで浮遊していて、濁っている。濾過することなく、透明な水を得るにはどうしたら、いいか。また、それはどういう理由によるのか、説明せよ。

 

3. 書道で使う墨汁は、炭の分散液、コロイド溶液である。なぜ、水と仲の悪い炭が分散しているのだろうか。洗濯において、汚れ(油分)が、界面活性剤により水中に分散することを思い浮かべればよい。物理化学的に説明せよ。

 

4. あ、極楽極楽。温泉のあとは、ビールを飲んで、と。いや、清酒でもいいや。

というわけで、これらに共通する、物理化学的現象はいかに? 思いつくままに書きましょう!

 


温泉の話はここ


 

<解答例>

 

平成10年5月12日

小テスト&基本調査

裏面を使用してよい。

番号[               ] 氏名[                  ]

1. 粒子間に働く、反発力の源とは何か。図で示して説明せよ。

 

粒子表面の表面電位である。この電位ψ0は、溶液では、表面から離れると共に、徐々に小さくなるが、いきなり0になることはない。徐々に低下していき、溶液バルクでは、0となる。これを拡散電気二重層モデルと呼ぶ。電位は、まず、Stern面まで直線的に下がり、そこの電位をStern電位ψdといい、それから先は、ψ=ψd exp (-κx) という式に従って下がる、という。これをGouy-Chapman理論という。これが反発力の源である。なお、κは、共存する電解質の価数と濃度に依存し、価数と濃度が大きくなると、κは大きくなるという関係にある。すなわち、価数と濃度が大きくなると、ψは、粒子表面から離れるに従い、急速に減少する。つまり、反発力は、粒子表面からちょっとでも離れると小さくなることを意味する。

 

2. 雨が降った後、道ばたには泥水ができている。泥水の中の大きな粒子はやがて沈降するが、小さな粒子はいつまで浮遊していて、濁っている。濾過することなく、透明な水を得るにはどうしたら、いいか。また、それはどういう理由によるのか、説明せよ。

 

凝析を用いる。つまり、沈殿しない泥粒子を強制的に、凝集させるわけである。これには上記のように、反発力を小さくさせる仕組みを使う。粒子が凝集するための力は、London-var der Waals力であり、この力は、電解質の価数や濃度に依存せず、一定なので、価数の大きな電解質をたくさん泥溶液に入れると、反発力が小さくなり、比較的に凝集力が大きくなって、凝集するわけである。

こうして沈殿してしまえば、透明部分ができる。

 

3. 書道で使う墨汁は、炭の分散液、コロイド溶液である。なぜ、水と仲の悪い炭が分散しているのだろうか。洗濯において、汚れ(油分)が、界面活性剤により水中に分散することを思い浮かべればよい。物理化学的に説明せよ。

 

炭はCであり、水には分散しにくい、墨には、膠(にかわ)が入っていて、これが、炭粒子の表面に吸着すると、吸着した方はアルキル基であるが、水溶液には、カルボン基とかが向かっているので、疎水性の炭は、親水性になるわけである。すなわち、脂汚れが、石鹸等の界面活性剤で水中に分散することと同様である、

 

4. あ、極楽極楽。温泉のあとは、ビールを飲んで、と。いや、清酒でもいいや。

 というわけで、これらに共通する、物理化学的現象はいかに? 思いつくままに書きましょう!

 

温泉とビールに共通するのは、コロイドである。

温泉には、硫黄や難溶性塩のコロイドが含まれていることが多く、それが湯ノ花となって、沈殿する。一方、ビールも漉したとはいえ、かなりのコロイドを含み、それらが炭酸ガス発生の中心になっていることもある。

酸性硫黄泉が臭いわけを考察する。

(1) H2S (gas) H2S (溶解した、以下このH2Sを指す) 溶解平衡

(2) H2S HS- + H+

(3) HS- S2- + H+

酸性になると、水素イオンが多くなるので、(3),(2)式の平衡は、左へずれる。そうすると、(1)式の右辺が多くなるので、やはり左にずれる。結果的に匂いのある硫化水素ガスが発生する、というわけである。

さて、硫黄イオンの酸化について考える。熱水が鉱石に触れて温泉水になった直後は、M(金属)Sの形の金属硫化物が溶けている。このうち、硫黄イオンS2-は空気に触れると酸化する。これを酸化数を使って表記すると、

S-2 S0 S+2 S+4 S+6

のように、右に行くほど酸化数が増えていく。実際のイオンに当てはめると次のようになる。

S2- S0 SO22- SO32- SO42-

となり、左から、硫黄イオン、単体硫黄、次亜硫酸イオン、亜硫酸イオン、硫酸イオン、の順である。火山性の温泉の近くで単体硫黄が多く採取されるのは、水中に混ざっていた硫黄イオンが急速に冷える段階で、酸化を受けるためであろう。一方、温泉成分で、硫酸イオンなどが含まれている温泉は、時間が経過している温泉で、肌には優しいと言えよう。