平成12年7月4日

小テスト&基本調査

裏面を使用してよい。

番号[               ] 氏名[                  ]

1. 吸着と触媒は密接に関係しているが、吸着したからと言って、触媒反応が始まるわけではない。前者には、冷蔵庫の消臭剤などがあり、後者には、自動車触媒などがある。ところが、後者は、NOx等の触媒表面への吸着から始まる。つまり、触媒は吸着を包含するが、吸着されるもの全てが触媒というわけではない。このような例を3つほど例示せよ。

 

消臭剤や除湿剤は吸着作用のみ。前者は主に物理吸着、後者は主に化学吸着である。

触媒は、吸着を手がかりに、表面反応が進行する。たとえば、自動車触媒や化学工業触媒である。

たとえば、合成ガス CO+H2からのメタノール合成において、Cu-ZnO/アルミナ触媒が工業的には使用される。メタノールはホルムアルデヒド(合成繊維の原料)などを製造するための重要な化学製品である。

この場合、まず、COが非解離吸着する。

同時に、水素が解離吸着して、触媒表面上に、活性なヒドリドを生成する。

このヒドリドによって、上記の吸着CO種が、水素化される

これが次々に、水素化を受けて、

となって、最終的に、CH3OHとなって、脱離する。

合成ガスが混同しただけでは、反応は進まないが、触媒の存在で、反応経路が確立し、活性化エネルギーを下げて、反応が進むわけである。

ちなみにこの反応のキーポイントは、

1)最終生成物のメタノールのC-Oが切れていないことから、CO結合を残す触媒能が必要。つまり、COは解離しないで化学吸着する、非解離吸着が必要。

2)水素の方は、H-H結合が切れないと、COを水素化しないので、H-H結合を切る触媒能が必要。つまり、H2は解離して化学吸着する、解離吸着。

Cu上へは、COは非解離吸着する一方、水素はZnO上へ解離吸着する。解離したヒドリドは、触媒表面を動いていき(スピルオーバー)、Cu上でCOは水素化される。

一方、NiはCOを解離吸着させて、CO結合が残らないので、メタノールは生成せず、メタンが生成する。

 

2. 工業触媒として有名な触媒に、金属Ni触媒と、酸化バナジウム触媒がある。それぞれ、どういう反応に用いられているのだろうか。想像して書いてみてくれ。

 

Ni触媒は、水素化能が高いということがあげられる。

COの水素化反応では、上述のようにメタンが生成する。また、不飽和炭化水素(オレフィン、アルケン:1-オクテンとか)の水素化活性は高い。これは、水素の解離吸着速度が速く、かつ、Ni上を自由にヒドリドが動き回ることができるからだ。触媒は正反応の活性化エネルギーを下げるとどうじに、逆反応の活性化エネルギーも下げる。従って、メタンとCO2からの、合成ガス(CO + H2)生成の反応もNi触媒上で非常に高活性で進行する。

2)一方、酸化バナジウムは酸化触媒として有名である。硫黄酸化による硫酸製造では、この触媒が最も広く使われている。酸化バナジウムは、五酸化バナジウムと三酸化バナジウムのredox機構で酸化反応を触媒している。酸化は、五酸化バナジウムの結晶中の酸素を使い、あとで、空気中から酸素を結晶内に補充するようなルートをとっている。