平成12年6月27日

基本調査

裏面を使用してよい。

番号[               ] 氏名[                  ]

1. 吸着と触媒は密接に関係しているが、吸着したからと言って、触媒反応が始まるわけではない。前者には、冷蔵庫の消臭剤などがあり、後者には、自動車触媒などがある。ところが、後者は、NOx等の触媒表面への吸着から始まる。つまり、触媒は吸着を包含するが、吸着されるもの全てが触媒というわけではない。

たとえば、乾燥剤を考えてみよう。たとえば、シリカゲル。吸湿性が強いが、これは空気中の水分がシリカゲル表面に吸着しているものと考えられる。コーヒーかすを乾かして冷蔵庫に入れておくといいという。これも吸着剤である。では、触媒はどうか。優れた吸着作用を示しつつ、かつ、触媒として働いているような例は、身の回りにはないだろうか。例を3つほど示し、吸着と触媒の両作用について述べよ。

 

吸着剤の例としては

1.冷蔵庫の汚臭を吸着する、活性炭

2.押入の湿気をとる、シリカゲル

などがある。吸着はそれ自体は触媒反応ではなく、化学吸着によるものであるから、熱処理を行うと、吸着したものがそのまま脱離する。

一方、触媒は吸着後、触媒表面上で別の物質に変化し、それが脱離する。

吸着と触媒反応の違いは、前者は吸着・脱離だけ、後者は物質の変換過程が入ることである。

優れた吸着作用を示しつつ、かつ触媒として働くものとしては、

1.醸造における酵母: エタノール合成触媒

2.電子レンジに塗布されたNi等の金属触媒: 炭化水素を空気中の酸素で酸化する、触媒燃焼を進行させる

3.ガードレール等に塗布されたチタニア触媒: NOxや炭化水素を光エネルギーを得ることによって、無毒化する、光触媒

など

あるいは、下記の触媒でもOK

1.自動車触媒: ゼオライトやアルミナのような酸化物担体の上に、Pt白金が担持されている。自動車排気ガス中のNOx等を除去する。

2.ガソリンや経由など: 石油やナフサから蒸留された留分の付加価値を高めるために、接触改質している。この触媒は、別名fcc触媒と呼ばれており、石油化学の重要な触媒である。

3.メタノール合成: Cu-ZnO/アルミナ触媒であり、天然ガスから接触改質によって得た、合成ガスCO+H2からメタノールを合成する。得られたメタノールは酸化され、ホルムアルデヒドになり、これは、高分子化合物を合成する際の、もう一つの原料(共重合)である。

4.酢酸合成: 工業用酢酸は、いわゆる人絹の原料である。この酢酸は、上記の合成ガスとメタノールから、液相均一系で合成される。つまり、触媒も液体の、Rhロジウム系触媒を用いる。

5.オキシドール: 消毒用の過酸化水素の希薄溶液である。これを肌につけると盛んに酸素の泡を出すが、この酸素によって、消毒される。この酸素発生は、二酸化マンガンによる、過酸化水素水の分解反応と同様であり、肌によって分解を受けたわけであり、肌が触媒といえる。

6.生体触媒: 酒の生成の際の、麹菌の出す酵素や、酵母がある。さらには、唾液中の酵素など、ありとあらゆる酵素が小さな触媒である。

 

2. 吸着とは何か。物理吸着と化学吸着に分けて説明せよ。

吸着はその吸着力から物理吸着と化学吸着に分類できる。前者はvan der Waals力で、後者は化学結合力で支配される。触媒反応では後者の化学吸着がきっかけとなる。化学吸着は触媒表面との化学結合を前提とするので、その吸着熱は化学反応熱と同じ程度である。物理吸着が可逆吸着であるのとは対照的に気体分子が吸着後すみやかに化学変化を起こすことが多く、不可逆な場合がある。また、化学吸着は一種の化学反応であり、活性化エネルギーを必要とすることが多く、平衡吸着までの時間は物理吸着に比較してきわめて長い。

私は、物理吸着を、はえ的吸着、化学吸着を、蚊的吸着と呼んだ。