平成12年6月13日

小テスト&基本調査

裏面を使用してよい。

番号[               ] 氏名[                  ]

注意:本講義の初回に説明したように、全項目に記入すること。未記入の項目があれば、欠席扱い

1.粒子間に働く、引力と反発力による相互エネルギーを考察せよ。

つぎの順にまとめて、延べよ。

1)考え方、2)引力と反発力の源はなにか、3)基礎式、4)最終的な式の形、5)条件によってどう変化するか(温度、電解質濃度、電解質イオンの価数など)

1)考え方

粒子間に働く相互作用エネルギーを考えるのは、平衡論をベースとしなければならない。比重が重く沈殿するものなどは考えないことにする。

引力と反発力の源はそれぞれ一種類ずつと仮定し、相互作用力はその合力であると考える。

粒子は互いにくっつきあうのが自然の流れであり、それが分子間力、つまりvan der Waals力なのである。それが分散状態にあるのは何らかの力が働いているに違いないと考えた科学者がおり、かれらが、静電的反発力だと直感したのは、電気泳動であった。つまり、分散媒に浮遊するコロイドの表面には電荷があったのだ。これはコンデンサのような静電素子である。界面エネルギーはこうした異種界面に存在し、それを具現化したものが表面電位と考えればエネルギー的には納得がいく。つまり、

分散の駆動力=静電的反発力

凝集の駆動力=van der Waals力(分子間力を粒子の間の力に拡張)

なのである。

2)引力の源は、van der Waals引力とし、反発力の源は、粒子表面の電荷による静電的反発力とする。

後者は、粒子表面の表面電位が関係していると考えると考えやすい。この電位ψ0は、溶液では、表面から離れると共に、徐々に小さくなるが、いきなり0になることはない。徐々に低下していき、溶液バルクでは、0となる。これを拡散電気二重層モデルと呼ぶ。電位は、まず、Stern面まで直線的に下がり、そこの電位をStern電位ψdといい、それから先は、ψ=ψd exp (-κx) という式に従って下がる、という。これをGouy-Chapman理論という。これが反発力の源である。なお、κは、共存する電解質の価数と濃度に依存し、価数と濃度が大きくなると、κは大きくなるという関係にある。すなわち、価数と濃度が大きくなると、ψは、粒子表面から離れるに従い、急速に減少する。つまり、反発力は、粒子表面からちょっとでも離れると小さくなることを意味する。

3)

<静電的反発力を求める基礎式>

基礎式 No. 1 = 拡散層中のイオンの濃度はボルツマン分布に従う

(1)

n: 拡散層中のイオンの個数濃度

n0: バルク溶液中のイオンの個数濃度

z: イオンの価数

k: ボルツマン定数

T: 温度

ψ : 問題にしている点における電位

+,-: 陽イオン、陰イオンを表す

ちなみに、表面の電位:ψ 0は電位決定イオンのバルク活量cによって、

(2)

R: 気体定数

c0: c at ψ 0 = 0

なお、(2)は基礎式ではない。

基礎式 No. 2 = 拡散層内における電位は、Poissonの式

(3)

を基礎にして求められる。

εr: 溶液の比誘電率

ε0: 真空の誘電率

ρ: 電荷密度

は、対称型電解質()に対して、

基礎式 No. 3 =

(4)

溶液中の2枚の平行平板(板間距離: h)に作用する力P

(5)

静電気成分 + 浸透圧成分

(電気力線により内側に引かれる力)+(対イオンの浸透圧により外側へ押される力)

(6)

POは常にPEよりも大きく、板は反発力を受ける つまり、浸透圧成分の方がメイン!!

従って、基礎式 No. 4 =

板の接近過程で表面の電位ψ 0が変化しなければ、PEの寄与を無視することができる。

従って、POの式から、板の受ける反発力PR(h)は単位面積あたり

(このときの考え方は、2つの平板の丁度中間の面と無限遠の面を考え、中間の面上では、対称性から電場は零、無限遠の平面でも電場は零であるから、浸透圧成分のみを考えればよい、ということになる)

ここから後は、Derjaguin近似: 半径a1a2の球形粒子の最近接距離Hのとき

H<<a1,a2

(7)

を使って、導き出せる。

a1=a2=aのとき、

(8)

従って、半径aの球形粒子の相互作用エネルギーは

(9)

いま、のとき、(8),(9)式は

zeψ 0=4kTは、1:1電解質で25℃で、ψ 0=103 mVのとき成立、

ψ 0=20 mV以上では、zeψ 0/4kTとtanh{ zeψ 0/4kT}に、1%以上のずれが生じる

ので、20mV以下でこの近似は成り立つ)

(10)

(11)

全相互作用力、ポテンシャル

これらと、van der Waals力の近似式

(12)

(13)

AはHamaker定数

をそれぞれ足しあわせると、全相互作用力となる。

London - van der Waals力は非常に小さく、点−点では、距離の6乗に逆比例する程度のごく微小な力である。ところが、面−面になると、積分されて、距離の2乗の逆数で効くことになる。つまり、比較的遠距離では、静電的反発力が主であるが、近くなると、このvan der Waals力に基づく力が、より強くなり、その距離まで近づくと、凝集する。

5)9)式を見ればわかるように、電解質濃度や、イオンの価数が大きくなると、反発エネルギーが小さくなり、凝集しやすくなる。一方、温度が上がると分散傾向にある。