平成12年5月30日

小テスト&基本調査

裏面を使用してよい。

番号[               ] 氏名[                  ]

1. 球形粒子間に働く静電的反発力あるいは反発エネルギーを求めるための、基礎式を示した上で、式の意味について簡単に述べよ。なお、必ずしも、式を解く必要はない。

<静電的反発力を求める基礎式>

基礎式 No. 1 = 拡散層中のイオンの濃度はボルツマン分布に従う

(1)

n: 拡散層中のイオンの個数濃度

n0: バルク溶液中のイオンの個数濃度

z: イオンの価数

k: ボルツマン定数

T: 温度

ψ : 問題にしている点における電位

+,-: 陽イオン、陰イオンを表す

基礎式 No. 2 = 拡散層内における電位は、Poissonの式

(3)

を基礎にして求められる。

εr: 溶液の比誘電率

ε0: 真空の誘電率

ρ: 電荷密度

は、対称型電解質()に対して、

基礎式 No. 3 =

(4)

溶液中の2枚の平行平板(板間距離: h)に作用する力P

(15)

静電気成分 + 浸透圧成分

(電気力線により内側に引かれる力)+(対イオンの浸透圧により外側へ押される力)

(16)

POは常にPEよりも大きく、板は反発力を受ける つまり、浸透圧成分の方がメイン!!

従って、基礎式 No. 4 =

板の接近過程で表面の電位ψ 0が変化しなければ、PEの寄与を無視することができる。

 

2. 粒子間の相互作用のうち、引力の源とは何か、のべよ。

London ψ van der Waals力

ただし、この力は非常に小さく、点−点では、距離の6乗に逆比例する程度のごく微小な力である。ところが、面−面になると、積分されて、距離の2乗の逆数で効くことになる。つまり、比較的遠距離では、静電的反発力が主であるが、近くなると、このvan der Waals力に基づく力が、より強くなり、その距離まで近づくと、凝集する。

3. 難溶性塩の溶解度は、溶解度積から求めることができる。以下、すべて理想溶液とする。

 Ni(OH)2 = Ni2+ + 2OH- の、25℃での溶解度積 Ksp = [Ni2+] [OH-]2 = 2.0 x 10-15 mol3/l3 である。(計算が面倒なら、これを 1.0 x 10-15と近似してよい)

(1) 25℃でpH = 0 ([H+] = 1 mol/l), pH = 7, pH = 10 それぞれのとき、溶けているニッケルイオンNi2+のモル濃度(mol/l)はいくらか計算せよ。なお、25℃での水のイオン積は [H+] [OH-]=10-14

(2) 上の計算結果、pH=0のとき、溶けているニッケルイオン濃度について、理想溶液と実在溶液の観点から、計算結果の妥当性を考察せよ。

(1)

[Ni2+] [OH-]2 = Kwし、[H+] [OH-]=KH2Oとすると、

[Ni2+] = Kw /[OH-]2 = Kw /(KH2O /[H+]) 2 = Kw /KH2O2 x [H+] 2 = 2.0 x 1013 x [H+] 2

理想溶液であるので、

pH = 0のときは、[H+] = 1 mol/l 従って、[Ni2+] = 2.0 x 1013 mol/l

pH = 7のときは、[H+] = 10-7 mol/l 従って、[Ni2+] = 2.0 x 10-1 mol/l

pH = 10のときは、[H+] = 10-10 mol/l 従って、[Ni2+] = 2.0 x 10-7 mol/l

(2) 理想溶液なら、活量係数が1なので、水素イオンの活量aH+ = [H+]となる。

pH = - log aH+であるので、[H+] = aH+ = 10-pH

ところが、pH = 0は、[H+] = aH+ = 1 となり、イオン強度が 1 mol/lもあり、明らかに、理想溶液から離れているので、理想溶液としたことが間違いであった。実際、[Ni2+] = 2.0 x 1013から、計算される、溶けているニッケルイオンのグラム濃度は、1.19 x 1015 g/l = 1190 Mt / lとなり、1リットルに1190 メガトンのニッケルが溶けるという、非常におかしなことになってしまう。

通常、活量係数を1とおけるのは、1 x 10-3 mol/l以下のイオン強度のときである。