平成12年5月12日
小テスト&基本調査
裏面を使用してよい。
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1. 粒子間に働く、凝集と分散の源(力)とは何か。
粒子は互いにくっつきあうのが自然の流れであり、それが分子間力、つまりvan der Waals力なのである。それが分散状態にあるのは何らかの力が働いているに違いないと考えた科学者がおり、かれらが、静電的反発力だと直感したのは、電気泳動であった。つまり、分散媒に浮遊するコロイドの表面には電荷があったのだ。これはコンデンサのような静電素子である。界面エネルギーはこうした異種界面に存在し、それを具現化したものが表面電位と考えればエネルギー的には納得がいく。つまり、
分散の駆動力=静電的反発力
凝集の駆動力=van der Waals力(分子間力を粒子の間の力に拡張)
なのである。
2. 分散のための必須条件を平衡論と速度論両面から説明せよ。速度論に関するものでは、式も説明せよ (webには掲載していない)。
分散の平衡論的な解釈は、静電的反発力であるが、水の中を漂い、空気の中に分散する、コロイド粒子の動き、つまり速度論的解釈は、ブラウン運動 Brownian motion である。
粒子がブラウン運動を起こして(不規則な運動)いるとすると、ブラウン運動は粒子の熱運動であるので、粒子1個について、kTのエネルギーを持っている。これが運動エネルギーに変換されているとすると
kT = 1/2 mv2
となる。Einsteinの統計的計算によると、粒子1個がブラウン運動によって、t時間にx方向へ移動する平均距離xは、
Dは、粒子の拡散定数。Einsteinは、さらに、拡散定数に関する式
を提出した。ここで、fは摩擦係数と呼ばれるもので、粒子が媒質の分子に比べて非常に大きいとき、Stoksの法則がなりたつ。
ここで、ηは物質の粘度、aは粒子半径である。
結局、
となる。Rは気体定数、NAはアボガドロ数。
たとえば、20℃、蒸留水中において、粒子の1秒後の変位xを計算すると、つぎのようになる。
粒子半径 | 1秒後の変位(μm) |
1 nm | 20.7 |
10 nm | 6.56 |
100 nm | 2.07 |
μm | 0.656 |
3. 雨が降った後、道ばたには泥水ができている。泥水の中の大きな粒子はやがて沈降するが、小さな粒子はいつまで浮遊していて、濁っている。濾過することなく、透明な水を得るにはどうしたら、いいか。また、それはどういう理由によるのか、説明せよ。
凝析を用いる。つまり、沈殿しない泥粒子を強制的に、凝集させるわけである。これには上記のように、反発力を小さくさせる仕組みを使う。粒子が凝集するための力は、London-var der Waals力であり、この力は、電解質の価数や濃度に依存せず、一定なので、価数の大きな電解質をたくさん泥溶液に入れると、反発力が小さくなり、比較的に凝集力が大きくなって、凝集するわけである。
こうして沈殿してしまえば、透明部分ができる。
4. コーヒー飲料や乳飲料には、安定剤が入っている。これは何の働きをしているか、説明せよ。
いわゆる分散剤である。
静電的反発力だけでは不十分な場合、分子間力を弱める目的で粒子表面に吸着しやすいものを添加して、粒子同士の合一を防ぐのだ。
表面の電位には、内部電位φ(ファイ)、χ(カイ)電位、それに、表面電位ψ(プサイ)がある。それぞれの関係は、図に示すとおり。
導体
半導体
酸化物表面になぜ、電位(負電荷)が形成されるか、は、酸化物表面に、
M-O-H
という部位があり、これが水中で、-O- + H+ と解離しているためであると考えられ、実証されている。また、泡の表面も負電荷を帯びているが、これは水中の負イオンが吸着し、表面をマイナスにしているためと言われている。表面電位は最大で、数百mv程度である。