平成12年4月25日

小テスト&基本調査

裏面を使用してよい。

番号[               ] 氏名[                  ]

1.緑茶と牛乳で酷似した物理化学現象はなにか。その現象を化学的に説明せよ。

(略)

2. 化学結合の立場からコロイド系の違いなどを明確に述べよ。

(略)

3. 雨が降った後、道ばたには泥水ができている。泥水の中の大きな粒子はやがて沈降するが、小さな粒子はいつまで浮遊していて、濁っている。濾過することなく、透明な水を得るにはどうしたら、いいか。また、それはどういう理由によるのか、説明せよ。

 急速凝集(塩析)を使う。粒子の周りには、表面電荷があって、酸化物粒子だと、大抵、負電荷を帯びている。粒子が分散している理由は、この電荷による、反発力であり、この電荷を小さくしてしまえば、van der Waals引力により、凝集するものと考えられる。

この表面電位は、水溶液中で、粒子が離れると小さくなり、やがて、無限遠では、0電位となる。この表面電荷の厚みを、電気二重層の厚さと呼んでいるが、それは、溶液の電解質の種類や、濃度に依存する。すなわち、電解質の種類で、1価のイオンよりも、2価、3価と多価イオンになるほど、また、濃度が濃くなるほど、厚さは小さくなる。このため、粒子は互いの反発力を越えて、くっつくほどの距離に近づくことが可能となって、凝集、沈殿を起こす。

なお、van der Waals力は、距離の6乗の逆数に比例するほど、近距離で大きくなる力である。ただし、粒子のような剛体の場合は、分子−分子を剛体−剛体に積分することが必要であり、粒子−粒子間に働く、van der Waals力は、距離の2乗の逆数に比例するということになる。

あと、塩析、凝析ということばは、曖昧な概念なので、今はほとんど使わない。これらのことばは現象を表したに過ぎなく、これを使わなくとも、凝集で十分に事足りるからである。

4. 書道で使う墨汁は、炭の分散液、コロイド溶液である。なぜ、水と仲の悪い炭が分散しているのだろうか。物理化学的に説明せよ。

 炭が水に分散しにくいのは、バーベキューのとき、水たまりに炭を入れてみるとわかると思う。墨汁や硯石に墨をするときの墨には、あらかじめ、にかわ というものが入っている。これは、炭の廻りに吸着して、炭を疎水性から親水性に変えるものである。これは、洗濯などにおいて、よごれ(油分)が界面活性剤により、水中に分散するのと同じである。

つまり、我々は、上記、電気的反発力と違う種類の力の存在である、疎水性相互作用を実感する。

(補足)

粒子は互いにくっつきあうのが自然の流れであり、それが分子間力、つまりvan der Waals力なのである。それが分散状態にあるのは何らかの力が働いているに違いないと考えた科学者がおり、かれらが、静電的反発力だと直感したのは、電気泳動であった。つまり、分散媒に浮遊するコロイドの表面には電荷があったのだ。これはコンデンサのような静電素子である。界面エネルギーはこうした異種界面に存在し、それを具現化したものが表面電位と考えればエネルギー的には納得がいく。つまり、

分散の駆動力=静電的反発力

凝集の駆動力=van der Waals力

なのである。

図は、(昨年の講義で用いた)コーヒー牛乳(のようなもの)で、1 mol/L KCl溶液とした、左側は含まれる乳脂肪が凝集を起こして、浮かんでいる。同様に、カルピスも3日ほどで、こちらは沈殿した。