平成12年4月18日

小テスト&基本調査

裏面を使用してよい。

専攻[               ] 番号[               ] 氏名[                  ]

1.物理化学とは何か、延べよ。

(略)

2.コップに液体を入れるとメニスカスができる。液体によってはできない場合もある。この理由を考察せよ。

メニスカスは、水をコップに入れると、水面のコップ壁からやや離れた距離に水の盛り上がり(右の図の左側)や逆にに水面が盛り上がったような格好になるもの(右の図の右側)で、この原因は、水とコップの壁に働く表面張力である。表面張力は、水滴をガラス表面などに落として、水玉ができたときに測定することができる。表面張力の駆動力は、この水玉の内部と外部の圧力差である。

メニスカスはこのように、溶媒と固相の間で必ずみられる現象であるが、溶媒の種類ととけ込んでいる物質に依存する。たとえば、界面活性剤(石鹸とか)を添加するとメニスカスの様子は著しく変わる。

5.緑茶と牛乳で酷似した物理化学現象はなにか。できれば、その現象を化学的に説明せよ。

どちらも、コロイド溶液である。

微粒子が安定分散している。

○ ペーパ−クロマト的効果がある

○ チンダル現象が見られる

○ 塩か何かを入れると沈殿する

分散と凝集

コロイドが分散するためには、粒子間に反発力が、凝集するためには、引力が働いていなければならない。反発力=静電的相互作用 引力=van der Waals引力

この2つの力あるいはエネルギーの和によって、2つの粒子間に働く、力あるいはエネルギーが決まる。

緑茶や牛乳は、粒子間の反発力が強く、安定分散しているものと考えられる。

化学結合との相違

化学結合は、共有結合とイオン結合に代表されるが、それとは異なる、分子間力や水素結合などによって支配されているのが、コロイドである。バターなどがコロイドの一種といってもなかなか理解できないが、分散媒(コロイド粒子以外の部分、たとえば、たばこの煙は、分散媒が空気であり、コロイドは煙自身)中に分子間力などの力で支配されてコロイドが分散している、と考えれば理解できるだろう。

一方、化学結合は

グルコースなどのように水に溶かしても分子状で解けているものが代表例となろうが、グルコースにしても完全に分子状というわけでもない、一部分は解離(プロトン=水素イオンが解けでている)している。

たとえば、NaCl(食塩)に代表されるように、一分子を得ることはできないような、イオンの固まりをイオン結合と呼んでいる。水に溶かすと、ナトリウムイオンと塩素イオンに解離するが、これは解離平衡に依存している。つまり、食塩といえども、イオン結合だけというわけではなく、一部分は解離しないで分子状になっているものもある。

このように、共有結合、イオン結合といっても完全なものはなく、多くの物質はこれらの中間的な結合である。

共有結合性が強い分子は、グルコースのようにC6H12O6と分子式でかけるのに対し、イオン結合性の物質は、分子式で書くことはできず、NaClにように組成を代表して表すしかない(組成式)。

ただ、Fe,Coはどうするんだろう。ってことで、金属結合がある。これは共有結合の近いが、自由電子が飛び回るという特殊な性質を有しており、この場合は、一分子を記述することはできない。

では、コロイドは何だろう。

これは、多くの分子の集合体とか固体が浮遊しているもので、コロイドが凝集したり分散するときにはこれら、共有結合、イオン結合、金属結合は関係なく、ほとんど分子間力などの弱い力によって左右される。今後、この作用について理解を深めよう。

(参考)

古来のコロイドというと、水に分散している泥のようなものを指していた。が、科学の進歩により、実際に見るということが原子のレベルまで可能になった現在、コロイドと分子を分ける最終線は何か、が問題となっている。コーヒーなどは目でみたところは溶液なのだ。でも、実際にもっと拡大してみると、コーヒーの味や色を構成する多くのコロイド粒子で構成されている。

たとえば、上記のグルコースはコロイドではない。しかし、牛乳の蛋白はコロイドといわれる。突き詰めれば、差異があるのは、大きさだけになってしまう。それではどの大きさからコロイドというかという問題が残る。そこで、最近のコロイド化学では、そのコロイド粒子の分散凝集挙動が、いわゆるコロイド化学の理論で適用できるものを指すことが多くなった。言い換えれば、分散媒の存在下、分子間力などの力に支配されている系をコロイドということになってきたのである。ただし、コロイドの理論は分子やイオンにも通じるものがあり、分子分散系とコロイド分散系はその境界線が一層不明確になっているのも確かである。