本文へジャンプ
ひとりごと その13


2010年10月28日(木)考察
さらなる考察と解説 「中山平湯豆腐の完成は近い!」 続々編 疑惑
いよいよ本家、嬉野温泉との成分を比較する。
 
ここで問題にぶち当たる。
種々調べても、嬉野温泉のpHで9になるようなところはない。温泉本やweb解説等でも取り上げられている、pH 8.6を有する温泉も探すことができなかったのだ。
これはどういうわけか。
嬉野温泉を代表する、大正屋については、ネット上の1978年の成分表が確認できる程度であった。これにはpHは無記載であった。
そこで、下記のデータでは誠に不本意ながら、和多屋別荘と、大正屋・椎葉山荘(嬉野温泉中心から南方山沿い)のものを追加掲載した。
 
なお、表中の各イオン濃度値は、浴室に掲げてあるような mg/kg単位ではなく、物理化学的考察が可能な、mmol/L単位になっているので、注意が必要である。
 
表の中のイオン当量(モルイオン当量)とは、イオンの価数を加味した濃度単位で、陽イオンのイオン当量と陰イオンのイオン当量は必ず一致しなければならず、分析の精度を表す指標となる。
ただし、各イオンの分析法が多種にわたっているので、一致することはほとんど望めない。10%程度の差はなんとか許せる範囲であろう。
それにしても合わないなあ・・・


(上記のpdfファイルが必要な場合はこちら

嬉野温泉のpHに合点がいかない?
上記の比較できになるのは、やはり、嬉野温泉のpHである。
いくらなんでも、8.0と7.3はいただけない。
これでは嬉野温泉水を使っても、豆腐が溶けたとしても、わずかだ。
 
ネットサーフィンしていると、気になるwebにぶちあたった。
大正屋のお風呂の飲泉所から汲んできたお湯を使って、嬉野湯豆腐を作っておられるのであるが、「いつもの市販のよりはph値がたぶん低いからあまりとけませんが」と書いてある。
その写真を見ると、豆腐が溶けている感じがあまりしない。
 
そういえば、大正屋の市販品のページには
左写真のように豆腐の表面や角が少し溶け、スープが牛乳のように白く濁ってきたら食べ頃です(弱火または中火で15~20分を目安に)。
とあり、さらに
火を止める前に、仕上げとして同梱の「濃厚豆乳」を鍋に注いでください。
とある。
おいおい、豆乳を入れるのか。
 
鳴子温泉の案内人、屋代さんが試した、 「グルメ雑誌鍋部門グランプリ 美味しんぼ98巻にも登場☆ 佐嘉平川屋 嬉野温泉湯豆腐」も、佐嘉平川屋のホームページ中の、説明のwebを見ると、
嬉野温泉と同質の温泉調理水が開発されてから(ちなみに温泉水は販売が禁止されています)。
とあり、確かに元の販売ページには、「【温泉とうふ用調理水】PH調整剤」と表記されている。
pH調整剤」とは食品添加物の一種で、特に成分を書かずに、一括表示して「pH調整剤」と書いていいことが、法律で決まっている。炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなども、食品添加物で認められているので、これらを調合して水に入れて溶かし、それを「温泉とうふ用調理水」としていることは間違いなさそうだ。
なんてこったい。嬉野温泉のお湯だと思っていたが、人工調味水だったのかあ・・
騙された感じを持つのは私だけか?
 
それにしても、温泉水の販売は飲料許可などクリアすれば可能なので(実際に、玉鳴号は売られています)、禁止されることもないはずなのだが・・・
 
嬉野温泉は大丈夫か?
ここまで見てくると、なんだか良くない思いが頭をよぎってきた。
今の嬉野温泉のお湯では、豆腐はちゃんと溶けないのではないか?
どういうことだ。
 
気になる記事を発見した。
それは、
「佐賀・嬉野温泉が17本の源泉を集中管理へ-市長に答申」
というものである。
温泉を集中管理すると、ちと問題が起こるのだが・・・
きちんとお湯の種類別の管理してくれるとありがたいのですが、混合されるとお湯本来の良さがなくなる可能性もあって、気になるところ。
その後、また気になる記事も。
嬉野温泉 源泉集中管理 足踏み」だそうで・・・
ただ、今年度になって進んだようだが。
 
嬉野温泉の源泉温度低下?
pHの他、気になるところはやはり源泉の温度だ。
温度がだんだん低くなっていくとすると、炭酸系イオンの多い温泉の場合は、pHが下がる傾向にあるのだ。
これは空気中の炭酸ガスの溶け込みによって、もともとアルカリ性温泉はほっておくとpHがだんだん下がっていくのだが、温度が下がり、炭酸ガスが溶け込みやすくなって、地表にでるときに、さらにpHが下がることもありうる。
そうすると、もはやpH 9は保てなくなって、pH 7代に落ちてしまうのだ。
実は、炭酸ナトリウムや、炭酸水素ナトリウム(重曹)を溶かして、pH 9にもっていくのは至難の業なのである。それらは、もともと強塩基と弱酸の塩なので、それほどpHを上げる力はないのだ。
つまり、温泉の温度が低くなることは、硫酸イオンが少ない重層泉にとってはpHが低下する方向になるわけだ。豆腐の溶解にとっては、致命的なのだ。
 
鳴子温泉郷ではどうか
そういう目で、高友旅館のラムネ泉や、馬場温泉を見ていただきたい。
どちらかもpHが低い。
もともと地下深くでは重曹泉だっと思われると、温度低下とともにpHが低くなったのではないかと思われる。
 
それに対して、玉鳴号は源泉温度がそれほど高くないのに検討している。
それ故に、豆腐を溶かす力があったともいえる。
実は、玉鳴号の製造法が、pHを下げずにボトリングできるのに適していたのだろう。
 
なお、三之亟の炭酸水素イオン濃度が高いが、遊離炭酸ガスがないのは、pHが高いからである。酸を加えて、pHを下げると、炭酸ガスが遊離してくる。