本文へジャンプ
ひとりごと その12


2010年10月28日(木)考察
さらなる考察と解説 「中山平湯豆腐の完成は近い!」続編
なぜ、玉鳴号では嬉野温泉のようにはいかないのか。
引き続き、考察を含めた解説をする。
 
下の表は、玉鳴号、ラドン温泉源泉と、重曹泉として知られる、同じ中山平の三之亟の成分比較である。
参考までに、鳴子温泉のつるつるの触感で有名なウナギ湯「ゆさや」、東鳴子で炭酸がいっぱい出ることで知られる高友旅館のラムネ湯、それにやはり重曹泉で有名な、馬場温泉とも、比較している。
なお、表中の各イオン濃度値は、浴室に掲げてあるような mg/kg単位ではなく、物理化学的考察が可能な、mmol/L単位になっているので、注意が必要である。
 
この温泉成分の比較には、屋代氏のweb「湯けむりの町」のデータを使わせていただいた。
ここに深く感謝申し上げる。
 

(上記のpdfファイルが必要な場合はこちら

鳴子ラドン温泉源泉
らどん温泉源泉がいいのではないか、と気づいたのは、実は実験当日だった。
三之亟さんの方が成分的にいいのではないか、と漠然と考えていたが、思ったほどには豆腐は溶けなかった。というか、十分に溶けたのだが、完全に溶かしたかったのだ。
やはりpHの方が重要だと思い直したのだ。
というのも、玉鳴号自身にはそれほど多くの炭酸系イオンは含まれていない。それにもかかわらず、豆腐の一部は確かに溶けたのだ。
ということは、pHの方がもっと重要ではないか、と思った。
そこで、らどん温泉の源泉をわざわざ汲んでいただいて、実験を行った。
すると、右の写真にあるように、ほとんど豆腐は溶けたのである!
これは驚きだった・・・
(詳しくは「さらなる実験 その4 「嬉野温泉の泉質を追及」 ~いよいよ鳴子ラドン温泉源泉~」を見てほしい。)
詳細は実験結果の考察は避けるが、これにより、豆腐が溶けるかどうかのポイントは
  1. pHが9程度あること
  2. 2価のイオン、特に硫酸イオンが少ないこと
  3. 炭酸系イオン(炭酸イオン、炭酸水素イオン)が多いこと
となる。

ただし、らどん温泉源泉の問題点としては、飲料許可がおりていないことや、0.4mg程度のごく少量のHAsO2が遊離成分として含まれていることだ。
ヒ素を含有する温泉水(1日につき)については、飲用の総量 0.1/A×1000ml(Aは当該温泉の1kg中に含まれる成分の重量(mg単位)の数値)と成分の総摂取量 0.1mgの規定がある。
ゆえに、らどん温泉源泉を使う場合は、1/4に下げなければならないこととなる。
 
4者の比較
右の写真はそれぞれ豆腐溶解実験をやったあと得られた温泉豆腐である。
右から
  • らどん温泉源泉
  • 三之亟
  • 玉鳴号
  • 玉鳴号+重曹
である。明らかに、右端の、らどん温泉源泉が最も豆腐を溶かしていることがわかる。玉鳴号は、三之亟と良い勝負をしていたようだ。pHの効果が効いている。

源泉と玉鳴号のブレンドがいいのではないか
さあ、中山平温泉湯豆腐完成にあたって、障害は何か。玉鳴号では力不足、らどん温泉源泉は最高だが、ヒ素の問題があった。
 
では、らどん温泉源泉1と玉鳴号3の比で混ぜてはどうか。
源泉に含まれるヒ素は1/4の0.1mgレベルまで落ちるが、pHは同じ。炭酸系イオンもたくさん残っている。
というわけで、これも試してみた。
 
右の図は、豆腐を2丁(半丁ずつ4キレ入っている)入れ、らどん温泉源泉1と玉鳴号3の比で合わせて、煮ているところである。
いい感じで豆腐が溶けてきた・・・
最終結果は右の写真の通り。
 
溶けて本当にやわらかくなった豆腐たち。
嬉野温泉豆腐に勝るとも劣らない出来となったのである。
実際に、この「中山平温泉豆腐」が世に出るのは、まだたくさんの超えないといけないハードルが多々あるだろうが、まずは最初のハードルを飛び越えた感じがする。
そう思うのは、私だけだろうか。


(『ひとりごと その13 さらなる考察と解説 「中山平湯豆腐の完成は近い!」続々編』に続く)