銅マット融体の熱物性測定に関する研究

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銅の乾式製錬における熔錬工程において,銅鉱石はCu2Sを主成分とする銅マットとFeO-SiO2系スラグに沈降分離される.マットの沈降分離工程において,粒径の小さいマット液滴がスラグ中に浮遊,懸垂し,スラグ中に残留する.このマット液滴のスラグ中への残留によるマットの収率の低下がいわゆる銅ロスとして長年の課題となっている.マット融体の沈降速度は,Stokesの式で表され,マットの密度,スラグの密度,およびスラグの粘度に支配される[1].また,マット液滴がスラグ中の気泡と接触した場合のマットの気泡への付着挙動は,スラグの表面張力,マットの表面張力,およびスラグ/マット間の界面張力に支配される[2].このように,マット及びスラグ融体の熱物性がマット液滴の沈降現象を支配するため,マットの沈降現象を理解,シミュレートするにはマット及びスラグ融体の熱物性値が不可欠である.過去の研究において,マノメータ法,静滴法,最大方圧法等により,マット融体およびスラグ融体の熱物性値が測定されているが,それらの報告値の間にはばらつきがあり,確からしい熱物性値は得られていない.そこで,当研究室では,浮遊法を用いた非接触環境下でのマット及びスラグ融体の熱物性値の測定を行っている.

融体の熱物性値は,液滴振動法により測定する.外力の無い場合の液滴の基本表面振動による浮遊液滴の形状変化は,以下の図に表される.

 

l2m0 l2m1 l2m2
l=2, m=0 振動モード l=2, m=±1 振動モード l=2, m=±2 振動モード

 

この液滴の表面振動の周波数から表面張力を,表面振動の減衰から粘性を求める.また液滴の大きさから密度を求めることもできる.現在,電磁浮遊法及びガスジェット浮遊法を用いてマット及びスラグ融体の熱物性値を測定している.

 

NiAl

ガスジェット浮遊装置は学習院大学理学部渡邉研究室保有の装置である.

 

[1] W. G. Davenort et al., Extractive Metallurgy of Copper, 4th ed., Oxford Pergamon, 2002.

[2] R. Minto et al., Trans. Int. Min. Metal., 81 (1972) C36.